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売買事例 1608-B-0219
媒介業者には、ゴミ置場に関する調査・説明義務はあるか

 一戸建ての売買契約をする際、売買対象物件地域のゴミ置場に関して調査し、買主に重要事項として説明する義務はあるか。

事実関係

 当社は、不動産の媒介業者である。さほど規模が大きくはない旧開発分譲地内の一戸建ての売買契約をしたが、買主は購入物件に引越してから、物件の南に面した公道の隣地との境界付近にゴミ置場が設置されていることを知った。媒介の際、その場所にゴミ置場であることを示す看板が付いていなかったので、当社では気が付かず、また、あえてゴミ置場についての事前調査もしていなかった。
 買主は、売買契約時までに当社から隣地との境界付近にゴミ置場が設置されていることについて重要事項として説明を受けておらず、当社に調査・説明義務違反の責任があると、強行に抗議してきている。

質 問

1.  ゴミ置場がどこにあるかを特に調査もせず、買主に重要事項として告知しなかった媒介業者は、宅建業法上の調査・説明義務違反を問われるか。
2.  ゴミ置場の場所は誰が決めるのか。移設することはないのか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 媒介時にゴミ置場の存在を知らず、買主に説明もしなかった宅建業者の責任を問うた裁判で、宅建業者の責任を認めなかった裁判例があるが、ゴミ置場の位置・規模・状況、買主の購入動機等により、責任が問われる場合があると解される。
 質問2.について ― 一般的な住宅地においては、自治体・自治会・町内会で輪番制にてゴミ置場を設置すると、取決めているところもあるが、地勢や道路条件等により、固定化する場合もある。
2.  理 由
について
 自宅として購入した土地建物の前面道路上のゴミ置場は、隠れたる瑕疵にあたるとして買主が売主に対し損害賠償を求め、媒介した業者に告知義務違反による不法行為責任があるとし、損害賠償を求めた裁判で、瑕疵にはあたらず、業者の告知義務違反もないとした(【参照判例①】参照)裁判例がある。
 一般廃棄物(いわゆる家庭ゴミ)を処理するために住宅地に設置されるゴミ置場(ゴミ集積場、ゴミステーション等とも言う)は、社会生活を営むうえで必要・不可欠である。
 しかし、設置場所や利用する世帯数、住民のゴミの出し方によっては、ゴミの散乱・悪臭や景観が損なわれる等、人により我慢の限度を超える状態となることも起こりうる。そして、場合によって嫌悪施設とみなされる可能性もある。購入物件を探す買主の中には、ゴミ置場を敬遠し、近くにゴミ置場がない物件を探す買主もいる。
 媒介業者は、ゴミ置場の存在や設置場所のルールを、自治体・自治会・町内会・近隣住民から容易に聞き取ることが可能であり、買主が生活するうえで大きな影響がある場合は、業法上の調査・告知義務違反(宅地建物取引業法第47条第1号ニ)の不法行為により、損害賠償(民法第198条、同法第709条)を問われる場合があると考える。
について
 一般廃棄物の収集・処理については、適正に処理する必要がある(後記、○廃棄物の処理及び清掃に関する法律参照)。
 ゴミ置場の設置方法については、自治体・自治会・町内会などによって基準が異なるが、設置場所は一定の世帯数ごとに設けること、その場所については、輪番制としている自治体もある(後記、○横浜市ごみ集積場所設置基準参照)。
 しかし、大規模な開発分譲地等では、固定的な専用ゴミ置場を設けているところがある。また、道路状況や交通面、勾配等の地勢、障害物等、ゴミ収集車の作業環境によって固定化される場合もある。
 輪番制については、「本件集積場を順次移動し、集積場を利用する者全員によって被害を分け合うことが容易に可能であり、(中略)特定の者にのみ被害を受け続けさせることは、当該被害者にとって受忍限度を超えることとなるものと解すべきである。」として、輪番に協力しない利用者のゴミだしを禁止(事実上、輪番を促した)した(【参照判例③④】参照)ものと、「所有する土地の隣接する公道上のごみ集積場は、本件土地に隣接する道路上は十分予見され、土地所有者の受忍限度を超えているとは言えない。」として、移設を認めない判断(【参照判例②】参照)があるが、被害者の受忍限度を超えているか否かが判断の基準となっているようである。

参照条文

 同法第709条(不法行為による損害賠償)
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 宅地建物取引業法第47条(業務に関する禁止事項)
 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
 宅地若しくは建物の売買、交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
~ハ (略)
 イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの
・三 (略)
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第1条(目的)
 この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
 同法第2条(定義)
 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう
 この法律において「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう。
~⑥ (略)
 同法第4条(国及び地方公共団体の責務)
 町村は、その区域内における一般廃棄物の減量に関し住民の自主的な活動の促進を図り、及び一般廃棄物の適正な処理に必要な措置を講ずるよう努めるとともに、一般廃棄物の処理に関する事業の実施に当たつては、職員の資質の向上、施設の整備及び作業方法の改善を図る等その能率的な運営に努めなければならない。
~④ (略)
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第3条(一般廃棄物の収集、運搬、処分等の基準)
 法第6条の2第2項の規定による一般廃棄物(特別管理一般廃棄物を除く。以下この条及び次条において同じ。)の収集、運搬及び処分(再生を含む。)の基準は、次のとおりとする。
 一般廃棄物の収集又は運搬に当たつては、次によること。
 収集又は運搬は、次のように行うこと。
 一般廃棄物が飛散し、及び流出しないようにすること。
 収集又は運搬に伴う悪臭、騒音又は振動によつて生活環境の保全上支障が生じないように必要な措置を講ずること。
 一般廃棄物の収集又は運搬のための施設を設置する場合には、生活環境の保全上支障を生ずるおそれのないように必要な措置を講ずること。
~ル (略)
~四 (略)
 横浜市 ごみ集積場所設置基準
 この設置基準は、市民がごみと資源物を家庭から排出する際の利便性を確保するとともに、収集作業の効率性及び安全性を確保するため、ごみ集積場所(以下「集積場所」という。)の設置に関し、必要事項を定めることにより、市民の良好な生活環境の保全に寄与することを目的とする。
 設置場所について
1  共通事項
 場所については、近隣住民と調整の上、集積場所の利用者の話し合いにより、居住している範囲内に決定すること。なお、住宅の建築に伴う場合など、居住者が決定していない場合は、近隣住民と調整した上で、決定すること。
 また、必要に応じて町内会の役員や、本市から委嘱を受けている環境事業推進委員に対しても説明を行うこと。
 ガードレールや著しい段差等がなく、収集作業が容易に行える場所であること。
 原則、勾配がない場所とする。やむを得ず勾配に面した場所に集積場所を設ける場合は、所管の資源循環局収集事務所と協議すること。
 見通しの悪い場所を避けた位置であること。
 転回広場のない袋路状道路でないこと。
 おおむね10~30世帯につき1か所とすること。(共同住宅を除く)
 道路交通法に従い、交差点から5メートル以上離れて、収集車両がごみを収集することができる位置であること等、周辺の交通安全上支障がない場所であること。
 集積場所敷地内及び、その前面付近には、障害物(電信柱、掲示板類)がないこと。
 本市が収集に支障がないと判断した場所であること。
2 ・3 (略)
 手続・管理体制について
1  共通事項
 場所の選定
 集積場所の新設、移動、分散にあたっては、集積場所の利用者の話し合いにより、居住している範囲内に場所を選定すること。ただし、一戸建て住宅の建築の場合及び共同住宅等の場合を除く。
 近隣住民との調整
 ごみの排出については、近隣住民とのトラブルがないよう十分に協議、調整すること。なお、必要に応じて、協議、調整した内容の報告を書面にて収集事務所へ提出すること。
 事前協議
 集積場所の新設、移動、分散、廃止等にあたっては、収集事務所と事前協議を行うこと。
 収集依頼
 集積場所の新設、移動、分散、廃止等については、収集開始または、廃止を希望する日の1か月前までに「ごみ集積場所(新設・変更等)申請書」(別紙2)を収集事務所に提出すること。
 私有地通行
 集積場所までの進入路が私道である場合は、地権者の同意を得ること。
 輪番制
 集積場所を定期的に移動する場合には、原則として、1年間以上の期間とすること。
 管理体制
 利用者等が、必要に応じて、カラス等の小動物によるごみの飛散を防止するため、ネット等の対策を講じること。
 ごみボックス等を設置する場合は形状等について事前に収集事務所と協議すること。
 清掃やネット、ごみボックス等及び構造物の維持管理については、集積場所の利用者で行うこと。
2 ・3 (略)

参照判例①

 神戸地裁尼崎支部平成13年5月29日(要旨)
 ゴミステーション自体は快適な市民生活を営むために必要である。恒久的な施設ではなく、囲いや区画がされているものでもなく、永続的に本件土地建物の前の場所がゴミステーションと決められているという性質のものではない。
 本件ゴミステーションの性質及び内容、形状からすれば、本件土地建物が住宅として通常有すべき品質を欠き瑕疵があるというのは相当ではない。
 仲介業者は売買契約当時、本件土地建物の前がゴミステーションになっていることを知らなかったのだから、宅地建物取引業法の告知義務違反はない。

参照判例②

 大分地裁平成20年12月12日判タ1300号199頁(要旨)
 所有する土地の隣接する公道上のごみ集積場は、本件土地に隣接する道路上は十分予見され、土地所有者の受忍限度を超えているとは言えない。

参照判例③

 東京高裁平成8年2月28日判時1575号54頁(要旨)
 輪番制等をとって、本件集積場を順次移動し、集積場を利用する者全員によって被害を分け合うことが容易に可能であり、(中略)特定の者にのみ被害を受け続けさせることは、当該被害者にとって受忍限度を超えることとなるものと解すべきである。

参照判例④

 横浜地裁平成8年9月27日判時1584号128頁(要旨)
 上記同様の判例。

監修者のコメント

ゴミ置場の問題は、裁判にならないまでも各所で紛争が生じているが、仲介業者の調査義務との関係では、少なくとも仲介物件の前にあるかどうかは調査すべきである。回答のとおり、裁判例では結論は分かれているが、現実の裁判では、他に適切な場所があるか否か、どれくらいの世帯のゴミが集積されるか、集積が整然と行われているかどうかなども考慮要素とされ、また何よりも「受忍限度」の範囲については裁判官の生活感によって正反対の結論になることもあり、さらには裁判における争い方にも影響されるので、一定の基準を見出だすことは困難である。ただ、建築基準法や都市計画法等の法令上の制限と異なり、購入予定者が調べようと思えば、容易にわかることであるので、相対的には仲介業者の義務は軽くなるということは言える。
 いずれにせよ、ゴミ置場が近いか遠いかなどは調査告知義務はないが、仲介物件の前にあることを見落とした場合は責任が生ずると考えるべきである。
 なお、物件の前にあることを知りながら、これを知らない購入予定者にあえて言わなかったというのは論外で、宅建業法47条1号違反になることは明白である。

より詳しく学ぶための関連リンク

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