不動産相談

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 1006-R-0078
建物賃貸借における敷金清算のための債権債務の証明者

 建物賃貸借における建物の明渡しに際し、貸主は3年前に借主が賃料の1か月を滞納したと主張し、借主は滞納していないと主張している。そのため、借主が敷金を全額返せと主張しているのに対し、貸主は滞納分は返せないと主張している。このような場合、この問題に決着を付けるためには、貸主が滞納していることを証明するのか、それとも借主が滞納していないことを証明するのか。

事実関係
   当社は賃貸の媒介と管理をしている宅建業者であるが、建物の明渡しを完了した借主から、原状回復費用控除後の敷金を全額返して欲しいと言われている。しかし、貸主からは、この借主は3年前に家賃の1か月を滞納し、そのまま1か月遅れで家賃が振り込まれているから、その1か月分の滞納分は返せないと言われている。

 なお、この借主の家賃の支払方法は貸主への直接振込み支払いのため、当社は前回の更新時も、今回の更新時にもその滞納のことに気が付かず、そのために借主は、「自分には滞納はない。滞納がないからこそ2回も契約が更新されているのだ」と主張している。
 
質問
1.  借主のこのような主張は正しいか。
2.  当社としては、どのように対応したらよいか。
3.  そもそも、今回の問題に決着を付けるためには、貸主が滞納のあることを証明する必要があるのか、それとも借主が滞納がないことを証明する必要があるのか。
 
回答
  1.結論
(1)  質問1.について — 貸主からの主張に対し、借主が「自分は支払っている」と主張するのであれば、その弁済の事実を借主が証明する必要がある。
(2)  質問2.について — 貸主に賃料の振込み状況を明らかにしてもらい、その振込記録等から、確かに3年前に1か月分の賃料が未納になっていることがわかるのであれば、残りの敷金からその未納分を差し引いた残りの金額を借主に返還するようアドバイスすればよい。しかし、その未納分が明らかにならなかったり、借主がその未納分を持参払いしたというような主張をするようであれば、あとは当事者間で話し合ってもらうか、法的手続によって決着を付けるしかない。
(3)  質問3.について — 貸主が、借主に滞納があることを証明する必要がある。
 
  2.理由
(1)(2)について
(略)
 
(3)について
 賃貸借契約においては、借主は貸主に対し賃料を支払う義務がある(民法601条)。したがって、借主が貸主からの賃料督促に対し、「自分には滞納はない」と主張するためには、賃料を支払ったという振込書の控なり、貸主が交付した領収書を貸主に提示して、自分はその義務を果たしているということを立証しなければならない。そのために、民法はその第486条に「受取証書の交付請求」という規定を設け、借主からの貸主に対する受取証書(領収書)の発行請求を認めているのである(後記【参照条文】参照)。

 ところが、本件の敷金問題は、貸主が「借主に滞納があるので、その滞納分を敷金から差し引く(注)」という主張をしているわけであるから、貸主が借主に滞納があることを立証しなければならないことになる。
(注) 実際に借主に滞納があることが立証されれば、敷金は当然に未払賃料債務に充当されるので、「差し引く」という相殺の意思表示は必要ない(最判平成14年3月28日民集689頁)。
 このように、当事者間に法律上の争いが生じたときに、自分の主張を裁判所に認めてもらうためには、自分が、自分に有利な判例や条文が定めている要件に当たる事実を証明できなければ、その判例や条文を裁判所に適用してもらえないのである。このことを「証明責任」というのであるが、民事訴訟においては、各当事者は、自分に有利な判例や条文の定める要件事実についての証明責任を負うことになっている。したがって、本件の敷金返還問題が訴訟になった場合は、借主が敷金の「預り証」を保有しているだけに、貸主が借主の賃料滞納の事実を証明できなければ、貸主敗訴、つまり貸主は借主に原状回復費用控除後の敷金を全額返還しなければならないということになる。
 
参照条文
  ○ 民法第486条(受取証書の交付請求)
弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。
 
監修者のコメント
 本ケースの双方の主張は、民事訴訟上の証明責任(立証責任)の問題に関連する。民事訴訟における「証明責任」とは、訴訟において、ある事実について裁判所がいずれとも判断(確定)できない場合に、どちらかの当事者が負うリスク又は不利益である。そして、訴訟の実際では、各当事者が自己に不利に判断される事実(証明責任を負う事実)については、各自がこれを証明しなければならないことになる。したがって、一定の事実について一般的・抽象的にどちらが証明しなければならないかを決めることはできず、本問のような場合、貸主が滞納を理由に借主に賃料を請求するときは、貸主が借主の滞納の事実を証明する必要があり、借主が滞納していないことを証明する必要はない。しかし、貸主の請求に対して、それを否定する事実、たとえば弁済したと主張するのであれば、その弁済の事実は借主が証明しなければならない。

より詳しく学ぶための関連リンク

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