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賃貸事例 0912-R-0071
建物賃貸借の期間および中途解約に関する民法と借地借家法の関係

 民法604条の期間20年の規定や中途解約権を留保(特約)した場合の民法618条の規定は、建物賃貸借についても適用されるのか。

事実関係
 当社は建物賃貸借の媒介業者であるが、通常の建物賃貸借の期間は2年ないし3年といったところであるが、中には4年〜5年というケースも稀ではない。しかし、このような長期の契約をした場合に、何か他の法律に抵触するのではないかと心配である。
 
質問
1.  民法第604条には、賃貸借の期間は、20年を超えることができないと定められているが、建物の賃貸借については、何か特別の規定があるのではないか。
2.  民法の第618条には、期間を定めた賃貸借で、当事者の一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、第617条の規定を準用し、「3か月前」の予告をもって契約を終了させることができると定められているが、この規定は、建物賃貸借における貸主からの解約申入れにも適用があるのか。借主からの解約申入れの場合はどうか。
 
回答
  (1)  質問1.について — 建物の賃貸借については、原則として借地借家法が適用されるが、その借地借家法の規定によれば、「民法第604条の規定は、建物賃貸借については適用しない。」と定められている(同法第29条第2項)。したがって、期間は何年にしてもよいのであるから、建物の賃貸借についての他の法律による期間の制限はないと考えてよい。
(2)  
質問2.について — 前記(1)のとおり、建物の賃貸借については、原則として借地借家法が適用されるので、この民法第617条および第618条の解約申入れに関する規定は、一時使用目的の建物賃貸借以外はいずれも適用がなく、まして、貸主からの解約の申入れについては、仮に、当事者が解約権を留保していたとしても、その予告期間は借地借家法第27条第1項に定める「6か月前」を下回ることはできず、さらに、「正当の事由」を具備した解約の申入れでなければならない(借地借家法第28条)。
 なお、借主からの解約の申入れについては、民法第617条および第618条の規定にかかわらず、「1か月前」の予告であっても、解約権を留保している限り、有効に申入れることができる(借地借家法第30条)。
 
参照条文
  ○ 民法第604条(賃借権の存続期間)
(1)  賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、20年とする。
(2) (略)
 
○ 民法第617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
(1) 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 1年

二 建物の賃貸借 3箇月

三 動産及び貸席の賃貸借 1日
(2) (略)
 
○ 民法第618条(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)

当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
 
○ 借地借家法第27条(解約による建物賃貸借の終了)
(1) 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。
 
(2) (略)
 
○ 同法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
 
○ 同法第29条(建物賃貸借の期間)
(1) 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
(2) 民法第604条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。
 
○ 同法第30条(強行規定)
 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
 

○ 同法第40条(一時使用目的の建物の賃貸借)
 この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。

 
監修者のコメント
 「特別法は一般法に優先する」という法諺がある。建物賃貸借について民法の賃貸借の規定は「一般法」であり、借地借家法の建物賃貸借に関する規定は「特別法」であって、競合する問題については借地借家法が優先的に適用されることになる。具体的結論は、「回答」のとおりである。

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