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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 0910-R-0067
未登記建物の賃貸媒介の是非

 表示登記のなされていない中古の建物賃貸借の媒介依頼があるが、媒介しても問題ないか。この建物の敷地の方には抵当権の登記がなされているが、この土地の抵当権が実行されたときには、建物のために法定地上権が発生するか。

事実関係
 
当社は賃貸の媒介業者であるが、このたび地元の有力者から、その所有する中古の一戸建住宅を賃貸に出したいとの依頼を受けた。
 そこで、いろいろと話を聞いたところ、土地については、20年前に土地を買った際のローンの抵当権が付いているが、その後建てた建物については、現在表示登記を含め、未登記のままになっている。しかし、貸主としては、その建物を未登記のまま貸したいという。
 
質問
1.  このような未登記の建物の賃貸を媒介しても問題ないか。
2.  この物件を媒介する場合、「登記記録に記載された事項」については、重要事項説明書にどのように記載したらよいか。
3.  貸主は、本件のような場合には、土地の競売の際に、建物のために法定地上権が発生するので、土地を明渡す必要もないし、賃借人も、建物の引渡しを受けているので、競落人に対抗できると言っているが、本当か。
 
回答
1.結論
  (1) 質問1.について—問題ないとはいえない。
(2) 質問2.について—記載例としては、次のようなものが考えられる。
 「本件建物についての登記記録はありません。その建物が所在する土地には、現在○○銀行の抵当権の登記がなされていますので(別添「登記記録(写)」を参照)、将来、この土地の抵当権が実行された場合には、原則として、本件土地を競落人に明渡すことになります。その場合、本件建物の賃借人も、本件建物を明渡さなければならないことになります。」
(3) 質問3.について—本当ではない。
 
2. 理由
  (1)について
 本件の賃貸借の目的となる建物は、表示登記をしていないので、媒介業者にとって、物件の特定、すなわち物件の表示が正しくできるのかどうかという問題がある。その上、保存登記もしていないので、仮に、貸主が固定資産税評価証明書を入手したとしても、それだけで貸主に所有権や賃貸権限があるという証明にはならないし、まして、その建物が第三者の所有物であった場合には、そもそもの媒介活動ができないという問題が生じるからである。
(2)(3)について
 本件土地には、20年前の銀行ローンによる抵当権が設定登記されているが、その後に建てられた建物には、抵当権の登記がなされていない。これは、本来であれば、建物が建てられたときに、ローンの債務者である建物の所有者が、その20年前のローンの追加担保として、建物についても抵当権を設定し、登記をしなければならないものを、債権者である金融機関に対し、建物を建てたことを告知せず、追加担保の提供義務の履行を怠ったものであると考えられる。

 しかし、本件の土地に対する担保権の設定が、その設定時から20年が経過しているということは、ローンの残債もかなり少なくなってきているであろうから、この際、その残債を完済することによって、抵当権の実行を回避するということも考えられるので、それができれば、問題なく賃貸の媒介をすることができる。しかし、それができないとか、残債がまだ相当あるということになると、【回答】の(2)で例示したような重要事項説明をしたうえで、媒介活動をしていくことになろう。

 なお、貸主が言っている、競売の際には、「建物のために法定地上権が発生する」とか、建物の賃借人には、「建物の引渡しによる対抗力がある」という主張は、本件の場合には、全く当てはまらない。なぜならば、建物のために法定地上権が発生するのは、土地に抵当権を設定する時に、すでに建物がその土地上に建っていることが前提であり(民法第388条、後記【参照判例】参照)、また、建物の引渡しに対抗力が認められるのは、あくまでも、土地の競落人に対抗できる建物の賃貸人との間に、賃貸借契約が締結されていることが前提だからである(本件の場合は、建物は取り壊さなければならない)。
 
参照条文
 
民法第388条(法定地上権)
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
 
○ 借地借家法第31条(建物賃貸借の対抗力等)
(1)建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物件を取得した者に対し、その効力を生ずる。
(2)(3)(略)
 
参照判例
  ○ 大判大正4年7月1日民録21輯1313頁(要旨)
「いわゆる更地に抵当権を設定した後に築造された建物には、法定地上権は成立しない。」
 
○ 最判昭和47年11月2日集民107号107頁、判時690号42頁(要旨)
「土地の先順位抵当権設定当時にその土地上に建物がない場合は、後順位抵当権設定当時に建物が建築されており、その後順位抵当権設定者から土地の競売の申立がなされても、法定地上権は成立しない。」
 
監修者のコメント

 本ケースにおける法定地上権の成否、建物賃借権の対抗力の問題については、回答のとおり、貸主が言っていることは誤りである。このような主張をし、かつ建物を他人に貸したいが登記はしたくないと固執する貸主を考慮すると、紛争に巻き込まれることを回避する意味では、媒介を避けたほうが適切かも知れない。
 しかし、宅建業法の観点だけからみれば、本件建物賃借人に生ずる法律的リスクをすべて説明し、その賃借人がそれを納得のうえで借りるのであれば、媒介しても問題はない。もっとも、その法的リスクのことは重要事項説明に係る書面に明確に記載して、説明した事実を証拠として残しておくことが必要である。

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