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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 1602-R-0156
賃貸中の大規模修繕工事とその間の賃料請求権の有無等

 分譲マンションの一室を賃貸媒介する場合、そのマンションの大規模修繕計画に関する借主への事前説明義務は、貸主・媒介業者どちらにあるのか。
 工事中に、借主入居者の一部に実際に生活できないような事態が生じた場合にも、貸主には賃料請求権があるのか。

事実関係

 当社が約半年前に賃貸借の媒介をした旧分譲マンションが、大規模修繕工事により窓が開けられない状態となり、更にその発生する騒音やほこりによって借主の生活に支障が生じる事態が発生した。そのため、生後3か月の乳児を育てていた借主の妻がその子供と一緒に実家に帰ってしまった。
 そのような騒音やほこりの発生は約3日間続いたが、借主は、そのために妻が子供と一緒に実家に帰らざるを得なくなったのだから、少なくともその交通費の実費と、その3日間の賃料の半額程度は返還するのが筋だ、と当社に言ってきた。そこで、その当社に言ってきた理由を確認したところ、自分(借主)は貸主には会っていないし、そもそも媒介業者が媒介時に、「半年後に大規模修繕工事が始まり、騒音等が生じる」旨の説明をしなかったために、心の準備ができず、あわてて実家に帰ったからだというのである。
 なお、本件の大規模修繕工事の日程については、当社が媒介したときには、工事の実施は決まっており、貸主はそのことを知っていたが、まだ具体的なスケジュールまでは決まっていなかったことが、その後の調査で判った。

質 問

1.  確かに、当社は媒介時には「半年後に大規模修繕工事が始まる」という説明はしていないが、その時点で具体的なスケジュールが決まっていない以上、その説明は本来そのマンションの区分所有者である貸主が行うべきであって、当社には借主が言うような説明義務はないと思うが、どうか。
2.  当社は、貸主から事前に修繕計画についての情報提供を受けていない以上、当社には、工事について貸主本人や管理組合等から積極的に情報収集をする義務はないと思うが、どうか。
3.  本件は、貸主の説明義務違反であるから、その借主の損害は貸主が賠償すべきであると思うが、どうか。
4.  そもそも本件のように、借主入居者の一部が実際に生活できないような事態が生じた場合にも、貸主には賃料請求権があるのか。

回 答

 質問1.について ― 本件のようなケースにおいては、媒介業者はその具体的な工事日程を知り得ないので、借主に対し、その工事の内容や工事の影響等(騒音やほこりが発生する等)についての説明はできないと考えられる。したがって、本件の場合には、媒介業者には借主が主張するような内容の説明義務はないと解される。
 質問2.について ― 媒介業者が通常の注意を払えば、そのマンションに大規模修繕計画があることがおおよそ判るような状況にあればともかく、そうでなければ、賃貸借の媒介においては、貸主からの情報提供がない以上、媒介業者には工事について積極的に情報収集をする義務まではないと解される。
 質問3.について ― 本件の事実関係においては、貸主は大規模修繕工事が近々行われることについて知り得る立場にあるので、貸主が借主に妊婦がいることを知っていた場合には、少なくとも信義則上の説明義務はあると解され、応分の負担はすべきものと考えられる。
 質問4.について ― 本件のような大規模修繕計画の実施によって、乳幼児のいる家族の一部が実家に帰らざるを得なくなるということはよく聞く話である。このような場合の賃料請求権の問題については、その工事によって、かなりの数の入居者に生活上の支障が生じるということであれば、受忍限度を超えたものとして、それに見合う賃料の減額請求は可能と解される。

参照条文

 民法第1条(基本原則)
 (略)
   権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
   (略)

監修者のコメント

 本ケースは仮に裁判になったとしても、一審と二審の判断が分かれてもおかしくないほど判断が難しい事案である。
  賃貸借契約当時に大規模修繕計画の日程の情報を、貸主、媒介業者が入手していたのか、又は入手可能性があったのか
  騒音、ほこりの程度がどれくらいであったか。また、1日のうち何時から何時までだったか
  3日間続いたとのことであるが、老人などで1日中マンションで生活している者はその間どうしたのか
  大規模修繕工事実施の予告期間はどれくらいであったのか
ということを中心に検討し、その工事が「受忍限度」内のものか否かを判断し、そのマンションの殆んどの居住者が我慢して生活したという事実が認められれば受忍限度内のものであり、ひいては媒介業者あるいは貸主の責任も生じないと解される。そして、裁判において、ある事象が受忍限度内かどうかは、全く同一の事実においても判断が分かれる難しい問題である。
 なお、仮に受忍限度を超え、そこに一定期間居住できないということであれば、貸主の責任の有無に拘わらず、居住できなかった期間に応じて、借主は賃料の減額請求をすることができる。

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