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賃貸事例 0906-R-0064掲載日:2009年6月
ペット禁止の賃貸マンションのオーナーチェンジとオーナー自身のペットの飼育
ペット禁止の賃貸マンションのオーナーチェンジがあったが、新しいオーナーがそのマンションの1室に住み、みずからペット(小犬)を飼っている。このような行為は、貸主(新オーナー)の契約違反になるのではないか。
事実関係 | |
当社は賃貸の媒介兼管理業者であるが、このたび当社の管理物件の中で、契約書の中にペットの飼育禁止条項を定めている賃貸マンションのオーナーチェンジがあった。 ところが、新しいオーナーは、その賃貸マンションの1室にみずから居住し、その中でペット(小犬)を飼っている。 |
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質問 | |
1. | このオーナーは、オーナーチェンジで貸主になったのだから、貸主自身が契約違反をしていることにならないか。 | |
2. | 借主の中には、オーナーがペットを飼っていることに腹を立て、このマンションを出ていくので、引越代を出せと言ってきた者がいる。 オーナー(貸主)としては、借主からの契約解除を認め、引越代を出さなければならないか。 |
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3. | このようなマンションについての今後の対応としては、どのように管理をすべきか。 | |
回答 | |
1. 結論 | ||
(1) | 質問1.について— 貸主が契約違反をしているということにはならないが、貸主・オーナーとしての建物の保存義務違反あるいは信義則上の(ペット禁止という)遵守義務違反等の一種の不法行為が成立する余地はある。 | |
(2) | 質問2.について— オーナーがペット飼育をやめるというのであれば、引越代まで出す必要はないが、やめないということになると、ある程度の金銭的な負担もやむを得ないということになろう。 | |
(2) | 質問3.について— オーナーに速やかにペット飼育をやめてもらい、文字どおりのペット禁止マンションのオーナーとなるよう説得すべきであろう。 | |
2. 理由 (1)について 新オーナーは、確かにこのマンションを取得した段階で貸主たる地位を承継し、その承継する賃貸借契約の内容についても、従前のものと同一のものとされている(最判昭和39年8月29日民集18巻7号1354ページ、最判昭和46年2月19日民集25巻1号135ページ)。したがって、本件のケースにおいても、このペット禁止特約の効力がそのまま新オーナー(貸主)に承継される。 しかし、承継されるのは個々の借主との間の個々の部屋についての賃貸借契約であって、オーナーが自宅として使っている部屋については契約関係がない。したがって、オーナーが自分の部屋で行うペット飼育という行為は、賃貸借契約上の義務違反(契約違反)ではなく、建物の貸主・オーナーとしての建物の保存義務違反あるいは信義則上の(ペット禁止という)特約遵守義務違反という一種の不法行為になるものと考えられる。 |
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(2)について 新オーナーの行為は、前記(1)のとおり、貸主・オーナーとしての建物の保存義務違反あるいは不法行為を構成する余地があるので、オーナーがペット飼育をやめない限り、ある程度の金銭的負担はやむを得ないと考えられる。しかし、借主からの契約解除が当然に認められるかどうかについては、以上の事実関係からは判断できない。 |
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(3)について 新オーナーがペット禁止のマンションだということを知らないで物件を取得したのであれば、物件を取得したときの仲介業者に重要事項説明義務違反等の問題が生じるが、だからと言って、そのことを借主に主張することはできないので、新オーナーとしては、自分が貸主である以上、速やかにペットの飼育をやめるべきであろうし、管理業者としてもその方向でオーナーを説得すべきであろう。 |
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参照条文 | |||
○ 民法第1条(基本原則) |
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(1) | (略) | ||
(2) | 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。 | ||
(3) | 権利の濫用は、これを許さない。 | ||
○ 民法第709条(不法行為による損害賠償) |
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故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責務を負う。 | |||
監修者のコメント | |
本ケースにおける「ペットの飼育禁止」が、どのようなもので決められているかによって、法律構成が異なってくるものと思われる。管理規約で決まっている場合、あるいは明文の規約がなくても、マンション居住者全体でそのような認識でいるといえる場合は、黙示的な規約の成立が認められ、新オーナーは規約違反である。そうではなく、賃貸借契約上の賃借人の義務として決められている場合、貸主は形式的には賃貸借契約の債務不履行とは言えないが、回答のとおり、信義則(民法第1条2項)を根拠として賃貸人に一定の義務が生ずるであろう。 なお、賃借人からの解除については、諸般の事情を総合して、その可否を判断しなければならないが、少なくとも小犬を飼っている一事をもって解除原因と考えるのはやや難しいと思われる。 |
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