不動産相談

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

== 更に詳しい相談を希望される方は、当センター認定の全国の資格保有者へ ==

不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 0903-R-0060
賃料滞納常習者のいる賃貸物件の1棟売りの方法

 賃料の滞納常習者のいる賃貸物件の1棟売りを媒介するが、どのような方法で媒介すべきか。

事実関係
 当社は媒介業者であるが、賃料の滞納常習者がいる賃貸物件の1棟売りの媒介を行う。
 
質問
1. このような物件の場合、買主に賃料の滞納常習者がいることを説明しないで媒介したら、重要事項説明義務違反になるか。
2. 賃料の滞納常習者の未払債務は、買主である新しい貸主の債権として引き継がれるのか。
3. このような物件を媒介する場合、通常は、滞納者を賃貸物件から立退かせてから媒介するものか、それともその立退きのための費用相当額を売買代金から差し引いて媒介するのか。
4. 滞納者を立退かせるための費用は、どの位を見込んだらよいか。
 
回答
1.結論
  (1)質問1.について ― 媒介業者が滞納常習者がいることを知っている以上、告知義務違反(業法第47条第1号)になると考えるべきである。
(2)質問2.について ― 従前の貸主が、新たな貸主に債権譲渡をしない限り、引き継がれない。ただし、敷金の返還債務については、当該敷金が現実に引き継がれたかどうかを問わず、新しい貸主に当然に引き継がれ(注1)、かつ、従前の借主に賃料の未払があった場合には、当然にその未払分を控除した残額が新しい貸主に引き継がれることになっているので(注2)、その未払分が敷金の範囲内であれば、その敷金で清算され、その補充について、新しい貸主から滞納常習者に請求することができ、その未払分が敷金の範囲を超えるようであれば、その補充のほかに、その超える分について、別途従前の貸主から債権譲渡を受けることにより、滞納常習者に請求することができるという関係になる。

(注1)大判昭和2年12月22日民集6巻716頁

(注2)最判昭和44年7月17日判時569号39頁
(3)質問3.について ― ケースバイケースであり、どちらともいえない。
(4)質問4.について ― ケースバイケースであるが、たとえば、未払賃料の支払いを免除するという程度では話し合いがつかないようであれば、さらに賃料の数か月分程度の費用(引越代等)は見込んでおく必要があると考えるべきであろう。
 
2.理由
(1)について

 賃貸物件を居抜きのまま売却する場合、当事者間に特段の事情がない限り、売主すなわち貸主の賃貸借契約における地位がそのまま新貸主(つまり買主)に移転することになるので(注)、買主にとっては、賃料の滞納常習者がいることは、大きな痛手となる。
 したがって、本件のような事実があるのであれば、媒介業者としては、その事実を重要な事項として買主に説明すべきである。これを知りながら、あえて言わなければ、告知義務違反(業法第47条第1号)となり、損害賠償責任を負うこととなる。
(注)最判昭和39年8月28日民集18巻7号1354頁
(2)(3)について
(略)
(4) について
 入居者を立退かせるには、その前提として、賃貸借契約を解除するなり、当事者の話し合いにより契約を合意解除しなくてはならない。
 ところが、賃貸借契約を解除するには、単に賃料が何か月滞納になっているという事実だけでは足りず、当事者間にその信頼関係が破壊されたというだけの状況が必要であるというのが裁判所の考え方であるため(最判昭和39年7月28日民集18巻6号1220頁、判時382号23頁)、裁判で契約解除の有効性を争っても、なかなか勝訴判決が出ないというのが実状である。
 したがって、入居者にスムーズな立退きを行ってもらうためには、どうしても立退料の支払いという金銭的な解決を伴う合意解除の方法が必要となる。
 となると、通常の裁判や明渡しの強制執行等の手続を考えた場合、その対費用効果上、どうしても【回答】の結論で述べたような、それなりの費用がかかってしまうということになる。
 
参照条文
  ○宅地建物取引業法第47条(業務に関する禁止事項)
 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
(1)  宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
イ 第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項
ロ 第35条の2各号に掲げる事項
ハ 第37条第1項各号又は第2項各号(第1号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの
(2) 不当に高額の報酬を要求する行為
(3) 手付けについて貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為
 
監修者のコメント
 賃貸の仲介業者は、一般論として賃借人の賃料の支払いについて賃貸人に責任を負うものではない。しかし、収益物件の仲介に当たり、滞納常習者がいることを知っている場合は、買主となろうとする者にこれを告知すべき義務がある。告知義務を規定する宅建業法47条1号にいう顧客の「判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」に該当すると解される。その場合は、業法違反として罰則、監督処分の対象となるほか、媒介契約における受任者としての債務不履行(説明告知義務違反)に基づく損害賠償責任を負うことになる。
 
 なお、質問4.について、立退かせることを引き受けること自体は問題がないが、そのための報酬を宅建業者がもらうことは、弁護士法72条(非弁行為)に該当し、重い罰則の対象となるので注意されたい。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「敷金」

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

更に詳しい相談を希望される方は、
当センター認定の全国の資格保有者へ

不動産のプロフェッショナル

過去の事例(年別)

  • 賃貸
  • 売買

ページトップへ

single