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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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賃貸事例 0811-R-0051
プロパティマネジメント会社の取引主任者の重説書への記名押印

 プロパティマネジメント会社の取引主任者は、運用資産の賃貸に係る重要事項説明書に記名押印する必要があるか。

事実関係
 当社はプロパティマネジメントを行う会社(宅建業者)であるが、このたび資産の運用(賃貸)を委託(注)された物件について、ある宅建業者(リーシング会社)にその客付けを依頼した。
 ところが、その宅建業者(リーシング会社)は当社に対し、「重要事項説明書に記名押印してもらう貴社の取引主任者と事前に打合せたいので、会わせて欲しい」と言ってきた。
(注) 本件の委託については、アセットマネジメント会社の関与はない。
 
質問
(1)  当社は、本件の取引については媒介行為は行わないし、媒介手数料ももらわないので、当社が重要事項説明をする必要はないし、重要事項説明書に当社の取引主任者が記名押印する必要もないと思うが、どうか。
(2)  当社は、当該宅建業者が媒介業務を行うのに必要な基礎資料の交付など、媒介に必要な橋渡しはするが、取引には直接関与しないので、取引に関する責任は当社には発生しないと思うが、どうか。
 
回答
1.結論
  (1)  質問1.について ― 貴社が媒介行為を行わない限り、貴社には重要事項説明をする義務はないし、貴社の取引主任者が重要事項説明書に記名押印する義務もない(宅地建物取引業法第35条第1項、第5項)。
(2)  質問2.について ― 貴社が実際に媒介活動(たとえば、借主に対する貴社からの資料の交付、説明など)をしていないのであれば、原則として、貴社には取引に関する責任が及ぶことはない。
しかし、貴社が媒介業者に渡した基礎資料自体に問題があったような場合には、媒介上の責任とは別の責任(たとえば、貸主、借主、媒介業者に対する債務不履行、不法行為責任など)が発生する可能性はある。
 
2.理由
 
(1)について
 宅地建物取引業法は、その第35条第1項本文中において、「(中略)宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して」重要事項説明を行うように定めている。したがって、当然のことながら、媒介を行わない業者の場合には、重要事項説明をする義務はない。
 ただ、本件のマネジメント会社が本当に媒介行為を行っていないのかどうかという点については、媒介業者が、貸主とのコンタクトをマネジメント会社を通じて行っていることからも、多少の疑問を禁じえないが、本件の【質問】内容からは、マネジメント会社が他の一方の借主との接触は一切していないと考えられるので、少なくとも取引についての媒介事実はないと判断するのが妥当であろう。
(2)について
 本件の取引における貸主とマネジメント会社との関係および貸主と媒介業者との関係は、いずれも法的には準委任契約の関係にあると解される(民法第656条)。

 したがって、貸主から委託を受けたマネジメント会社およびマネジメント会社を通じて貸主から委託を受けた媒介業者は、いずれもその相手方に対し、民法第644条に定められている善管注意義務を負っていることになるので、もし、マネジメント会社が媒介業者に渡した基礎資料に欠陥があり、その結果、重要事項説明書等の内容に欠陥が生じ、取引の関係者(貸主、借主、媒介業者)に不測の損害を与えたとすれば、その責任は最終的にはマネジメント会社が負うことになる(民法第709条)。その意味において、マネジメント会社と媒介業者は、少なくとも貸主に対しては、共同媒介と同じ共同責任を負うという関係になると考えられる(不真正連帯債務の関係)注)

 
(注)  通常の連帯債務の場合には連帯債務者間に主観的関連があるのに対し、本件の共同不法行為のような偶然に発生した債務の場合には、債務者間に主観的関連がない。このような債務のことを「不真正連帯債務」といい、債務者間に負担部分もなく、求償権も当然には生じない。
 
参照条文
  ○ 宅地建物取引業法第35条(重要事項の説明等)
(1)  宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、(中略)取引主任者をして、(中略)説明させなければならない。
一〜十四(略)
(2)〜(4)(略)
(5)第1項から第3項までの書面の交付に当たっては、取引主任者は、当該書面に記名押印しなければならない。
 
○ 民法第656条(準委任)
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
 
○ 同法第644条(受任者の注意義務)
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
 
○ 同法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
 
○ 同法第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 
監修者のコメント
  回答のとおり、受託物件について代理人になるのでもなく、また媒介行為を行わないのであれば、重要事項説明義務を負わず、したがって取引主任者の記名押印も問題とはならない。
 ただ、たとえ媒介手数料をもらわなくても、取引に関与する以上、回答のような一定の場合に、そこに注意義務違反(過失)が認められれば責任が生ずることはあり得る。

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