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賃貸事例 0809-R-0047掲載日:2008年9月
所有権を有しないビルの貸主が倒産した場合の借主の立場
所有権をもっていないビルの貸主が倒産した場合、テナントの立場はどうなるか。また、一般的なオーナー貸主が倒産した場合は、どうなるか。
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ある建設会社が倒産したが、その建設会社が現在テナントに貸しているビルは、20年前にその建設会社の自社ビル兼貸ビルとして竣工させたものである。 しかし、その所有権については、4年前に子会社に譲渡し、所有名義もその時点で子会社に移っている。そして、現在、その倒産後の処理について、破産管財人が選任され、破産手続が進められている。 |
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(1) |
このような状況の中で、テナントとの賃貸借契約や敷金はどうなるのか。 |
(2) |
一般的なケースとして、ビルのオーナー貸主が倒産した場合のテナントの立場はどうなるのか。 |
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1.結論 |
(1) |
質問1.について — 本件のビルの所有権が真実子会社にあるとすれば、子会社がその所有権を取得した時点で、子会社は特約がない限り、貸主たる地位を取得するので、その敷金も当然子会社に承継される(後記【参照判例】参照)。 |
(2) |
質問2.について — オーナー貸主が倒産した場合の一般的なケースにおけるテナントの立場は、破産法上は、テナントが第三者対抗力(賃借権の登記または建物の引渡し=借地借家法第31条)を有し、かつ、賃料を正常に支払っている限り、破産管財人は賃貸借契約を解除することはできないので(破産法第56条第1項)、賃借人は、引き続き賃料を破産管財人に支払っていくことにより、賃借人の地位を維持することができる。そして、この破産法第56条の規定は、会社更生の場合や民事再生の場合にも準用されているので(会社更生法第63条、民事再生法第51条)、倒産手続の中では、賃借人の立場はかなり保護されているのではあるが、他方、その間に、賃借人に対抗できる抵当権者などからの担保権の実行(別除権の行使=破産法第65条)などがあれば、オーナー(貸主)の変更により、建物の明渡しを余儀なくされるということもありうる。 |
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参照判例 |
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○ 賃貸不動産の所有者に変更があった場合、特約がない限り、賃借人・新所有者間に、従来の賃貸借関係がそのまま移転・存続する(通説・判例。大判昭和6年5月29日新聞329号18頁等)。 |
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参照条文 |
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○ 破産法第56条(賃貸借契約等) |
(1) |
第53条第1項及び第2項の規定(双務契約における破産管財人からの契約の解除または履行の請求等に関する規定)は、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定する契約について破産者の相手方が当該権利につき、登記、登録その他の第三者に遅行することができる要件を備えている場合には、適用しない。 |
(2) |
(略) |
○ 破産法第65条(別除権) |
(1) |
別除権は、破産手続によらないで、行使することができる。 |
(2) |
担保権(特別の先取特権、質権又は抵当権。以下この項において同じ。)の目的である財産が破産管財人による任意売却その他の事由により財産財団に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。 |
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破産法は、平成17年1月1日から大幅な改正というより新破産法ともいうべき法律が施行され、賃借人が破産した場合の賃貸人からの解約申入権を否定し、また賃貸人が破産した場合の賃借人の保護の強化などを図っている。 ビルのオーナー貸主が破産した場合、改正前は破産管財人がテナントに対し、破産管財人に認められた解除権を行使して賃貸借を解除することができるとされていたが、新法では【回答】のとおり、テナントが賃借権を第三者に対抗できるときには、破産管財人に上記の破産法による特別の解除権は認めないこととされた。 |
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