当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。
専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)
相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)
<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。
ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。
ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。
賃貸事例 0808-R-0042掲載日:2008年8月
部屋の引き戸が自然に倒れ、中のガラスが割れた場合の責任の所在
築後20年の賃貸マンションにおいて、その室内の引き戸が自然に倒れ、中にはめ込まれていたガラスが割れた。この場合、責任は誰にあるか。
事実関係 | |
(1) | 当社は、賃貸の媒介と管理をしている業者であるが、4年前に当社が媒介したマンション(築後20年)の部屋の中の引き戸(アルミ製枠全面ガラス入り)が自然に倒れ、戸の中にはめ込まれていたガラスが割れてしまった。 入居者(借主)は、引き戸は自然に倒れたものであり、自分には責任はないと言い、貸主は、入居者の管理の問題であるから、自分には責任はないと、互いに言い張っている。 |
|
(2) | そこで、当社から専門家に引き戸が割れた原因を調べてもらったところ、戸をすべらす敷居の溝にはめ込まれている戸枠の部分が、その戸枠に組み込まれているビスを回すことにより上下に調節できるようになっており、その上下する戸枠の部分が今までの戸の重みで下がり、そのために、上部の戸枠の部分が鴨居の溝からはずれたものであることがわかった。 なお、今回の引き戸の倒壊について、当事者双方からヒアリングしたところによれば、貸主・借主ともに、今までに戸がはずれたという事実はなく、ビスで戸の上下を調節するということも知らなかった(それぞれ分譲主、媒介業者から説明を受けていなかった)と言うし、媒介業者である当社としても室内のアルミ戸は初めての経験で、ましてビスで戸枠を上下させるということは全く知らなかった。 |
|
質問 | |
1., | このような場合、貸主・借主どちらにガラスを修復する責任があるのか。 | |
2. | 媒介業者としての責任はどうか。 | |
3. | 媒介業者としては、どのような対応をとるべきか。 | |
回答 | |
|
||||||||||||||||||||||
参照条文 | ||
○ 民法第536条(債務者の危険負担等) | ||
(1) | 前2条に規定する場合(債権者の危険負担に関する規定を適用する場合)を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。 | |
(2) | (略) | |
○ 民法第606条(賃貸物の修繕等) | ||
(1) | 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。 | |
(2) | (略) | |
○ 民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任) | ||
(1) | 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。 | |
(2)(3)(略) | ||
監修者のコメント | |
賃貸人は、賃貸借の目的物を賃借人の使用・収益に適する状態におく積極的義務を負い、【回答】の指摘する修繕義務(民法第606条)もその一つの表れである。この義務は、賃貸借における賃貸人としての基本的義務であって、賃貸人に故意又は過失があるか否かと無関係であって、賃貸人に過失すなわち注意義務違反があるときに修繕義務があるという性格のものではない。 一方、賃借人は賃借目的物を善良な管理者としての注意義務をもって使用・収益しなければならず、これに違反したときは損害賠償義務を負わなければならない。 本ケースについてみると、その事実関係だけでは、【回答】のいうようにたしかに判断が難しい面はあるが、賃借人の善管注意義務違反をうかがわせる要素は見当らない。したがって、貸主が「入居者の管理の問題であるから、自分に責任はない」と主張できるか疑問である。「今まで戸がはずれた事実がなかったこと」「ビスで戸の上下を調節することを貸主も知らなかった」という事実は、少なくとも貸主の修繕義務を免れさせる理由にはなり得ない。 |