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賃貸事例 0808-R-0042
部屋の引き戸が自然に倒れ、中のガラスが割れた場合の責任の所在

 築後20年の賃貸マンションにおいて、その室内の引き戸が自然に倒れ、中にはめ込まれていたガラスが割れた。この場合、責任は誰にあるか。

事実関係
(1)  当社は、賃貸の媒介と管理をしている業者であるが、4年前に当社が媒介したマンション(築後20年)の部屋の中の引き戸(アルミ製枠全面ガラス入り)が自然に倒れ、戸の中にはめ込まれていたガラスが割れてしまった。
 入居者(借主)は、引き戸は自然に倒れたものであり、自分には責任はないと言い、貸主は、入居者の管理の問題であるから、自分には責任はないと、互いに言い張っている。
(2)  そこで、当社から専門家に引き戸が割れた原因を調べてもらったところ、戸をすべらす敷居の溝にはめ込まれている戸枠の部分が、その戸枠に組み込まれているビスを回すことにより上下に調節できるようになっており、その上下する戸枠の部分が今までの戸の重みで下がり、そのために、上部の戸枠の部分が鴨居の溝からはずれたものであることがわかった。
 なお、今回の引き戸の倒壊について、当事者双方からヒアリングしたところによれば、貸主・借主ともに、今までに戸がはずれたという事実はなく、ビスで戸の上下を調節するということも知らなかった(それぞれ分譲主、媒介業者から説明を受けていなかった)と言うし、媒介業者である当社としても室内のアルミ戸は初めての経験で、ましてビスで戸枠を上下させるということは全く知らなかった。
 
質問
1., このような場合、貸主・借主どちらにガラスを修復する責任があるのか。
2. 媒介業者としての責任はどうか。
3. 媒介業者としては、どのような対応をとるべきか。
 
回答
1.結論
  (1) 質問1.について — (【事実関係】に記載された範囲内だけでは)どちらに責任があるとは断定できないが、借主に善管注意義務違反などの責任があるといえなければ、最終的には、民法第606除の規定により、貸主が修繕義務を負担するという方向で解決すべきであろう。
(2) 質問2.について —
アルミ製の引き戸が一般的なものであり、その上下の調節も、ビスで行うことが一般的なものであるとすれば、媒介業者の責任ということも出てくる可能性はあるが、一般的なものではないとすれば、媒介業者が説明をしなかったからといって、媒介業者に責任があるということにはならないと考えられる。
(3) 質問3.について — 基本的には、借主に責任があるといえないものについては、貸主が負担するという考え方で貸主を説得するという対応の仕方が適切であると考えられる。
 
2.理由
(1) 貸主、借主、あるいはその媒介をした媒介業者が、本件のガラス戸の倒壊の責任を負担するには、原則として、それぞれに過失なり注意義務違反といった責任を負担する根拠が必要となる。しかし、本件の場合は、【事実関係】に記載された内容を見る限り、そのいずれかの責任であると断定できるだけの根拠を見出すことはできない。
(2) そこで、このような場合(誰の責任にも帰すことができないような場合)の対応についてのひとつの考え方として、民法第536条(債務者の危険負担等)の規定あるいは同法第717条第1項ただし書きの規定(土地の工作物等の所有者の責任の規定)を類推適用するという方法も考えられるが、本件のようなケースの場合には、最も原則的な方法として、同法第606条(賃貸物の修繕等)の規定を適用することにより、貸主にその最終的な無過失責任としての修繕義務があるという方向で貸主を説得することが適当であると考えられる。
 
参照条文
  ○ 民法第536条(債務者の危険負担等)
(1)  前2条に規定する場合(債権者の危険負担に関する規定を適用する場合)を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
(2) (略)
○ 民法第606条(賃貸物の修繕等)
(1)  賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
(2) (略)
○ 民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
(1)  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
(2)(3)(略)
 
監修者のコメント
 賃貸人は、賃貸借の目的物を賃借人の使用・収益に適する状態におく積極的義務を負い、【回答】の指摘する修繕義務(民法第606条)もその一つの表れである。この義務は、賃貸借における賃貸人としての基本的義務であって、賃貸人に故意又は過失があるか否かと無関係であって、賃貸人に過失すなわち注意義務違反があるときに修繕義務があるという性格のものではない。
 一方、賃借人は賃借目的物を善良な管理者としての注意義務をもって使用・収益しなければならず、これに違反したときは損害賠償義務を負わなければならない。
 本ケースについてみると、その事実関係だけでは、【回答】のいうようにたしかに判断が難しい面はあるが、賃借人の善管注意義務違反をうかがわせる要素は見当らない。したがって、貸主が「入居者の管理の問題であるから、自分に責任はない」と主張できるか疑問である。「今まで戸がはずれた事実がなかったこと」「ビスで戸の上下を調節することを貸主も知らなかった」という事実は、少なくとも貸主の修繕義務を免れさせる理由にはなり得ない。

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