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賃貸事例 0807-R-0039
建物賃貸借における中途解約の場合のペナルティ条項の有効性

 建物(店舗)の賃貸借契約において、借主からの中途解約に対し、一定のペナルティを課す特約は有効か。借主が一般の個人であった場合はどうか。貸主からの解約についても、ペナルティを課す必要があるか。

事実関係
 当社は宅地建物取引業者であるが、このたび当社が取得したビルの1階を店舗として賃貸する。期間は3年で、更新は可とする。ただし、借主が最初の3年間の間に中途解約をした場合には、1年以内の解約の場合は敷金(賃料の10か月分)の50%相当額を、2年以内の解約の場合は30%相当額を、3年以内の解約の場合は20%相当額をそれぞれ償却する旨の特約を定め、更に、更新後の3年間の間においても、その1年以内の解約の場合は敷金の30%相当額を、2年以内の解約の場合は20%相当額を、3年以内の解約の場合は10%相当額をそれぞれ償却する旨を定め、以後の更新の場合にも同様とする旨の契約を締結したい。
 
質問
1. 上記のような内容の賃貸借契約を締結した場合、敷金の償却特約が借主に不利な特約として、無効になるようなことはないか。
2. 借主が、初めて営業を開始する一般の個人であっても、問題ないか。
3. 借主からの解約の申入れには3か月前の予告を必要とする旨を定めるが、貸主からの解約の申入れについても、6か月前の予告で解約できる旨を定める予定である。この場合、貸主からの解約の申入れにあたっては、上記の敷金の償却額の倍額程度を借主に支払うなどの解約条項を定める必要があるか。
 
回答
1.結論
(1) 質問1.について — 無効になるようなことはないと考えられる。
(2) 質問2.について — 問題ないと考えられる。
(3) 質問3.について — その必要はなく、そもそも貸主からの解約申入れは、「正当の事由」を具備していない限り、無効と解されているので(借地借家法第28条、第30条。ただし、2.理由(2)(注2)参照)、本件の場合も、本来の趣旨からは、そのような解約条項は誤解を招くもととなり、借主に不測の損害を与えることにもなりかねないので、定めるべきではないと考えられる。
2.理由
(1)  本来、期間の定めがある賃貸借の場合は、その期間中は互いに解約をしないという約束のもとに契約をしたものと考えられている。したがって、貸主はもとより、借主であっても、契約期間中は中途解約はできないものとして法が定められている。しかし、そうは言っても、長期間にわたる契約期間の間には、当初は予想もしなかった事態が発生したり、思惑とは違った事業展開になるということも考えられ、必ずしも当初の契約どおりにはいかないことも十分に考えられる。
(2)  そこで、法は、民法第618条において、当事者(借主)が特別に解約権を留保した場合の取扱いを定めているのであるが、貸主からの中途解約については、その特別法としての借地借家法において、特に厳しい制限が課されている。つまり、期間を定めた賃貸借においては、借主からの解約申入れは、民法第618条の規定により、3か月前(注1)の予告でできるのであるが、貸主からの解約申入れには、借地借家法第27条および第28条の規定により、6か月前の予告と「正当の事由」(注2))が必要とされている。
(注1) 
 この期間については、民法第618条の規定が任意規定であることから、これを短縮することができる。
  (注2) 
 判例は、「正当事由」の存在は解約申入れの要件であるから、解約申入れ時に「正当事由」が存在していれば足り、その後存在しなくなったとしても、解約申入れの正当性は失われないとしており(最判昭和28年4月9日民集7巻4号295頁)、また、一方、解約申入れ時には「正当事由」が存在しなくとも、明渡訴訟を提起した時に存在していた場合や、訴訟継続中に「正当事由」が備わり口頭弁論終結時まで6か月が経過した場合などにも、その効力を認めている(最判昭和29年3月9日民集8巻3号657頁、最判昭和41年11月10日民集20巻9号1712頁)。
(3) このように、本来は期間を定めた賃貸借の場合には、借主であっても中途解約はできない(残りの期間の賃料を支払わなければならない)のが原則なので、その借主が中途解約する場合のペナルティとして、敷金の最大50%相当額(賃料の5か月分)の償却を定めたとしても、必ずしも、その特約が無効となるような借主に不利な特約とはいえず、更新後の最大30%相当額(賃料の3か月分)の償却についても同様に解することができる。
(4)  また、このペナルティ特約については、借主がこれから事業を開始する一般の個人であったとしても、その借主は事業を開始する以上は「事業者」であるから(消費者契約法第2条)、消費者契約法の適用はなく、一般の民法、借地借家法の法律が適用されることになるので、特に問題となるようなことはないと考えられる。
 
参照条文
  ○ 民法第618条(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定(期間の定めがない場合の賃貸借の解約申入れの規定)を準用する。
○ 借地借家法第27条(解約による建物賃貸借の終了)
(1) 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。
(2)  (略)
○ 同法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
 建物の賃貸人による第26条第1項の通知(更新拒絶の通知)又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(中略)が建物の使用を必要とする事情のほか、(中略)並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
○ 同法第30条(強行規定)
 
この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
○ 消費者契約法第2条(定義)
(1) この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
(2) この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
(3) この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。
 
監修者のコメント
 【回答】のとおりで、特に付け加えるべきことはない。本ケースのように個人が借主の場合、世上しばしば聴く誤解は、消費者契約法の制定(施行・平成13年4月1日)により、借主に不利な特約は、同法によって無効とされることになったというものである。同法で、「事業者」というものには「事業として又は事業のために契約の当事者となる個人」も含まれるので、店舗を借りる個人の契約は「消費者契約」に該当しないので、そもそも同法の対象にならない。賃貸借契約で同法の対象となるのは、「個人」が「居住用建物」を借りる場合である。

より詳しく学ぶための関連リンク

・“スコア”テキスト丸ごと公開! 「敷金」

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