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賃貸事例 0802-R-0026掲載日:2008年2月
賃借人の保証人が死亡した場合の法定更新後の保証
賃貸借契約の更新の際に、借主の保証人が死亡していることがわかった。借主は、「保証人が死亡し、すでに法定更新された以上、新たな保証人を立てる義務はない。」と主張しているが、この主張は正しいか。
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当社は、賃貸専門の媒介業者であるが、このたび当社で管理している賃貸マンションの更新にあたり、借主の保証人がすでに死亡していることがわかり、更新ができない状態になった。
そこで、当社としては、約定により、借主に対し新たに保証人を立ててもらうようお願いをしたが、借主からは、「保証人が死亡した以上、新たな保証人を立てる義務はない。今回の更新が合意更新されない限り、法定更新されるので、要求には応じられない。」と言われた。
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1. |
当社の賃貸借契約書には、保証人が死亡したり、破産したりした場合には、借主が新たな保証人を立てなければならない旨が定めてあるが、今回のこの借主の言い分は、正しいのか。 |
2. |
借主が新たな保証人を立てることができなかったときは、どうなるのか。 |
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1.結 論 |
(1) |
質問1.について — 借主の言い分は、正しくない。 |
(2) |
質問2.について — 借主が保証人の代わりに他の担保を提供するか(民法第451条)、保証人の相続人が相続を放棄していない限り、その相続人に保証人の地位が移ることになる(民法第920条、第925条、後記2. 理由(2)中の判例参照)。 |
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2.理由 (1)について |
借主が主張している「保証人が死亡した以上、新たな保証人を立てる義務はない。」という言い分については、民法や本件賃貸借契約書に、保証人の死亡により保証債務が消滅するという規定もないし、貸主の要求している新たな保証人を立てるという行為が、借主に特別に不利なことを求めているというわけでもなく、まして公序良俗や信義則に反する行為を要求しているわけでもないので、全く法的根拠をもたない主張といえる。 また、「合意更新されない限り、法定更新されるので、要求には応じられない。」という主張についても、合意更新されなければ法定更新されるというのはそのとおりであるが、法定更新されたからといって、「新たな保証人を立てなければならない」という約定に基づく借主の義務がなくなるわけではなく、法定更新の意味と契約上の義務との関係がよくわかっていないための主張と言わざるを得ない。 |
(2)について |
借主が新たな保証人を立てることができないときは、他の担保を提供することにより、これに代えることができる(民法第451条)。
しかし、借主が新たな保証人を立てることもできず、他の担保も提供できないときは、死亡した保証人の相続人がその保証人の保証債務を相続することになり、したがって、すでに借主に未払賃料等があれば、その未払賃料等を保証人の相続人が支払わなければならず(大判昭和9年1月30日)、その後(更新後)の未払賃料等についても、その相続人が保証していかなければならない(最判平成9年11月13日)。
つまり、賃貸借の保証人は、保証人の死亡によっても保証債務は消滅せず、相続人が保証債務を承継するのである。 |
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参照条文 |
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○ |
民法第451条(他の担保の供与) |
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債務者は、前条第1項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。 |
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○ |
民法第920条(単純承認の効力) |
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相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。 |
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当初の賃貸借契約の保証人あるいは連帯保証人が、更新後も保証責任を負うのかについては、かつては見解が分かれていたが、最高裁は平成9年11月13日、期限の定めのある建物賃貸借について、特約がない限り、更新後もその責任を負うとの判断を示した。
また、賃貸借契約の借主の保証人、連帯保証人の債務の相続性についても、最高裁は、その保証債務は相続人に承継されると解し、これが通説でもある。
この2つの結論から、本事案の借主の言い分は正しくない。ただ、賃貸借の保証人が死亡した場合、その相続人と借主が密接な人的関係にあればともかく、そうでない場合は、貸主を説得して、借主と近い別の保証人を立てるのが現実的であろう。 |