不動産相談

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

== 更に詳しい相談を希望される方は、当センター認定の全国の資格保有者へ ==

不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 0712-R-0022
青田貸しの「仮契約」段階における解約手付の効力

青田貸しの「仮契約」段階で、解約手付・違約手付を授受することはできるか。始期付賃貸借の仮契約の場合に、始期が到来したら、手付金の効力はどうなるか。

事実関係
 当社は賃貸の媒介業者であるが、このたび当社が媒介するビルは、来年3月末に竣工する予定で工事が進められている。したがって、当社は、入室希望のテナントには来年4月に正式契約を締結することを前提に、仮契約をしてもらうよう営業活動を行っている。
 ところが、今回のテナントは、家賃の3か月分相当額の手付金(約500万円)を支払うので、その手付金について、違約手付か解約手付としての性格をもつように仮契約書に定めて欲しいと言ってきた。その理由は、これから4月に向けて営業開始の準備をするので、貸主にキャンセルされたら困るからだという。
 なお、正式契約の締結は、竣工後2週間以内の良き日(別途、貸主が指定する日)に行うこととし、そのことは仮契約書に定められている。
 
質問
1.  仮契約書にこのような手付金についての条項を定めた場合、この仮契約は、正式な賃貸借契約としての効力をもつ契約になってしまうのではないか。
2.  仮契約書に賃貸借の開始予定日(始期:4月1日以降の日付で、竣工が遅れない限り、その日が賃料の支払発生日となる特約付)を記入するようになっているが、今回のテナントに対し、仮契約の段階で予定日を記入した場合、その予定日が予定どおり竣工後に到来したら、手付金はどうなるのか。契約の当事者は、以後手付放棄・倍返しによる契約解除というものができるのか。
 
回答
1. 結論
(1) 質問1.について

 本件の場合には、(ビルの竣工まであと3〜4か月という時期に鑑みて、)その可能性が高いが、仮契約段階において、当事者がどのような意思で合意をしたかによって結論が異なる。
 ただし、本件の仮契約が質問2.にあるような停止条件付ないし始期付のものである場合には、契約の効力は、その条件の成就ないし始期が到来した時に生じることになるので、その場合には、当該停止条件付ないし始期付賃貸借契約の従たる契約としての手付契約の部分(手付解除等)についてのみ効力が生じるものと解される。

(2) 質問2.について

 契約の始期が到来した場合には、手付金は、通常保証金なり敷金、あるいは賃料の一部に組み込まれるものと考えられる。
したがって、その場合には、始期の到来により契約の効力が正式に生じるので、互いに義務の履行がなされ、手付解除ができないことはもとより(民法第557条第1項)、手付そのものが存在しないということになる(後記【参照判例】参照)。

 
2. 理由
(1) について

 賃貸借契約においては、少なくとも目的物の明示と賃料が定められていれば、(期間の定めはなくても)契約は有効に成立する(民法第601条)。
 したがって、本件の場合には、貸主が借主に対し、目的物の位置・広さ・設備等を建築図面等により明示しているのであれば、貸主には、当該建物を完成さえたうえで、借主に引渡す(使用・収益させる)義務があると考えられる。
 以上のことから、本件の仮契約において、当事者が上記のような契約の要素となる部分について合意をしているのであれば、名称は仮契約となっていても、少なくとも停止条件付ないし始期付の契約もしくはその予約として有効に成立し、その場合の手付金(手付契約)についての法的効果も、同様に生じるということになる(民法第559条、第557条)。

(2) について

(略)

 
参照条文
○  民法第601条(賃貸借)

 賃貸借は、当時者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生じる。

○  民法第559条(有償契約への準用)
 この節(売買)の規定は、売買以外の有償契約(賃貸借契約など)について準用する。(以下、略)
 
参照判例
○  大判大正10年2月19日民340頁(要旨)

 契約が履行されれば、手付は、解約手付たる意義を失い、交付した者は、不当利得として返還を請求しうるに至る。

 
監修者のコメント
 本ケースでは、「仮契約」の意味が問題であり、一つは予約すなわち将来本契約を締結しようという合意があり、もう一つは【回答】にある始期付きないし停止条件付き契約のことがあり、あくまでも当事者の意思がどうかで決まることである。しかし、後者の場合は、始期付きないし停止条件付きの「本」契約でよいわけだから、あえて「仮」契約とした趣旨は、前者の意思だと解される可能性が高い。いずれの場合でも手付は成立し、手付が授受されたからといって本契約になるわけではない。契約自由の原則の範囲内のことで、予約の手付として問題なく成立し、特約がなければ、本契約になった時点で本契約の手付に移行したとみればよいと解される。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「敷金」

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

更に詳しい相談を希望される方は、
当センター認定の全国の資格保有者へ

不動産のプロフェッショナル

過去の事例(年別)

  • 賃貸
  • 売買

ページトップへ

single