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賃貸事例 0710-R-0019
借上げ社宅の賃貸借契約の成立時期

会社の借上げ社宅の賃貸借契約は、会社契約であることと、本社が遠方にあることから、契約書を郵送でやりとりし、貸主・借主双方が別々に記名押印する方法がとられることが多い。この場合、契約はいつ成立することになるのか。

事実関係
   4月とか10月の転勤シーズンになると、企業の借上げ社宅のニーズが増大する。その場合、大抵の企業は、人事の担当者か転勤の内示を受けた入居者本人が来社し、3月中、9月中に借上げの段取りをつけて本社に帰る。
 このような場合、媒介業者としては、できるだけ3月中、9月中に契約を確定しておきたいので、その人事の担当者や入居者本人から一定の金銭を預かることが多い。
 しかし一方、会社契約になるために、本社の決裁手続などで実際の契約書への記名押印は4月、10月に入ってからということになり、したがって、貸主(大家)の記名押印もそれからということで、双方の記名押印がそろうのは4月、10月の中旬ということもめずらしくない。
 
質問
 
1.  このような契約の場合、実際の実務においては、すぐに会社の登記事項証明書や会社概要等の関係書類を送ってもらい、その内容を貸主(大家)に確認してもらったうえで契約を締結するという前提で、あらかじめ契約の始期(たとえば、4月1日とか10月1日)を記入した賃貸借契約書を本社に送り、その決裁承認の後に借主(会社)が記名押印し、媒介業者に送り返してもらうというかたちで契約が進められていくが、このような契約形態をとった場合、賃貸借契約はいつ成立したことになるのか。
2. 契約の成立日と契約の始期が違っていても問題ないか。
3.  契約の成立日と実際に契約書に記名押印した日が異なる場合、契約書の日付はどちらの日付を記入すべきか。
4. 人事の担当者や入居者本人から預った金銭は、法的にはどういう性質のものか。
 
回答
 
1.  結論
(1)  質問1.について
 貸主(大家)が、借主(会社)の登記事項証明書等を確認した後、借主(会社)の記名押印後に送られてきた賃貸借契約書に貸主(大家)が記名押印し、その契約書の借主(会社)保管分をポストに投函した時に契約が成立したと解せられる。
(2)  質問2.について
 問題ない。
(3)  質問3.について
 実際に記名押印した日を記載すべきである。
(4)  質問4.について
 後日会社としての意思表示をすることを停止条件とする申込証拠金と解される。
2.  理由
(1)  について
 隔地間契約においては、申込みはその通知が相手方に到達した時からその効力が生じる(民法第97条第1項)。
 しかし、本件の契約においては、借主は法人であるから、その人事担当者や入居者本人が申入れた内容は、本条にいう契約の申込みではなく、後日(決裁承認後)法人としての申込みがなされることを条件とする一種の使者としての条件付申込行為であると解せられる。したがって、媒介業者から送られた契約書に会社が記名押印し、その契約書が媒介業者を経由し、貸主(大家)のところに送られ(申込み)、貸主(大家)がこれに記名押印し、借主(会社)宛に郵送された時に契約が成立したと解せられる(同法第526条第1項)。
(2)  について
 契約書に契約の始期が記入されている場合は、その期日のあとに契約が成立したとしても、契約を締結した当事者は、その契約の効力の生じる日(始期)を遡及させる合意をしたことになるので、何ら問題はない。
(3)  について
 不動産の契約においては、一般に、契約が確定的に成立するのは、契約の当事者が契約書に記(署)名押印した時といわれている。したがって、本件のような隔地者間取引においても、貸主(大家)が契約書に記名押印した日と媒介業者がその契約書を借主(会社)宛に投函する日にズレが生じることが往々にしてあるので、貸主の意思が確定的に確認できる記名押印日を契約書の日付(作成日)とすべきである。
(4)  について
 (略)
 
参照条文
 
○  民法第97条(隔地者に対する意思表示)
(1)  隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
(2)  (略)
○  同法第526条(隔地者間の契約の成立時期)
(1)  隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。
(2)  (略)
 
監修者のコメント
 契約の成立時期は、賃貸借に限らず、具体的ケースにおける当事者の意思解釈によって、その意思が合致したと認められる時であるが、不動産に関する契約については、社会通念上、特約をしない限り、契約書に記名(署名)捺印した時と考えられている。しかし、それとは別の日に成立させようとの合意が認められる場合は、もちろんその日である。しかし、「成立時期」より重要なことは「効力発生日」であるから、その日を契約書上で明確にしておくことである。

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