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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 0706-R-0009
賃料の増額条項(スライド条項)の有効性

建物賃貸借契約において、賃料を更新時ごとに何パーセントかずつ増額する特約(スライド条項)を設けることは、法的に可能か。

事実関係
   昨今の経済情勢に鑑み、地価の下げ止まりから上昇に転ずる可能性が高いので、今後の新規賃貸物件については、その賃貸借契約書の中に、一定期間経過後(たとえば、更新時ごと)に賃料を何パーセントかずつ増額する旨の条項(いわゆる「スライド条項」)を設けることも検討していきたい。
質問
  1. 上記のような「スライド条項」を設けることについて、借地借家法上問題になることはないか。
  2. 借地借家法第32条第1項ただし書との関係で、問題になるようなことはないか。
  3. 定期借家の場合の借地借家法第38条第7項との関係はどうなるのか。
  4. 「公租公課の上昇があったときは、貸主は、その上昇率に応じた賃料の増額ができることとし、借主は異議なくこれを承諾するものとする。」という条項を設けた場合、その条項は有効か。
回答
  1.結論
 
(1) 質問1.について
賃料の増加額が社会的にみて相当・妥当であれば、問題はないと考えられている。
  (2) 質問2.について
「スライド条項」自体が、同項ただし書との関係で問題になるわけではない。
  (3) 質問3.について
定期借家の場合には、同条の規定により、あらかじめ「増額条項」や「スライド条項」を定めることもできるが、この場合も普通借家同様、その増加額が相当・妥当であることが前提となる。
  (4) 質問4.について
条項自体の有効・無効はケースごとに判断せざるを得ず、実際の改定の際に、その公租公課の上昇率がバブル期のような上昇率を示したような場合、あるいはその結果としての増加額いかんにより、あらためてその有効・無効が問われることになる。
 
2.理由

(1)について
 賃料の決定は、契約自由の原則から、当事者に委ねられており、その当事者の決めた合意に法的拘束力が与えられる。
 しかし、その当事者が決める賃料が社会的にみて相当性を欠くなど、不適正なものであれば、その合意に法的拘束力を与えるのは妥当ではない。そこで、借地借家法第32条は、その合意が相当でない場合、あるいは相当でなくなった場合には、お互いにその改定を求めることができる旨を定めている。したがって、賃料の「増額条項」(スライド条項)についても、その実際の増加額が社会的にみて相当・妥当であることが前提となっており、そうでない限り、借主にはその「増額条項」(スライド条項)についての承諾義務はないものと解すべきである。

(2)について
 借地借家法第32条第1項ただし書の規定は、あくまでも当事者間で「増額しない」と特約したときは、その特約が優先すると定めているのであって、本件のように「増額する」と定めた場合には、(「増額しない」と定めたわけではないから)あとは、その「増額する」と定めた増加額だけが問題になるということである。

(3)について
 この定期借家の場合の賃料改定の条項は、上記の普通借家の場合と異なり、あくまでも契約期間が一定期間だけの定期の賃貸借であるということから、仮にその定期借家の契約に際し、特約で毎年賃料を増額すると定めたとしても、その増加額が社会的にみて相当・妥当である限り、その特約を「有効」とするという規定なのである。したがって、この借地借家法第38条第7項の規定は、定期借家の場合には「スライド条項」を定めることを積極的に肯定する条項ということもできる。

(4)について
(略)

監修者のコメント
 賃料のスライド条項の有効性については、その増額率がどれくらいかによって決まるのではなく、その条項によって決定される新賃料が周辺相場などに比べて、不相当かどうかで決まるということができる。すなわち、「3年後には、当然に50%増額する」旨の定めでも、それに基づく新たな賃料が相場並みであれば有効と解され、反対に「2年ごとの更新時に2%ずつ増額する」旨の定めでも、結果としてそれに基づく新たな賃料が相場より高いものであれば、そのスライド条項自体が無効と解される。
 要するに、スライド条項自体は、それのみで有効・無効を決定することはできない。

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