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賃貸事例 0705-R-0007掲載日:2007年5月
賃貸借契約における「解約」と「解除」の違い
事実関係 | |
現在業界で使われている賃貸借契約書のひな形を見ると、契約条項の中に、「解約」という用語と「解除」という用語が使い分けられているように見える。しかし、民法の規定を見ても、その区別はよくわからない。 |
質問 | |
今後、自社で独自の賃貸借契約書を作成する場合、この2つの用語の使い方について、どのように理解しておいたらよいか。 |
回答 | ||
1. | 契約の「解除」とは、契約締結後、当事者の一方の意思表示によって、その効力が最初から存在しなかったのと同じ状態にすることをいう(民法第545条)。これに対し、「解約」は、賃貸借契約のような継続的な契約関係の場合に、その効力を最初から消滅させることは不可能なので、将来に向ってのみ効力を消滅させるときに用いられる。 | |
2. | この「解約」という用語については、学者はこれを「解約告知」とか「告知」などと呼んで、「解除」と区別しているが、民法は、この両者を明確には区別せずに、「解約」とか「解約の申入れ」という文言を用いるケース(民法第617条〜第619条)と、「解除」という文言を用いるケース(民法第607条、第610条〜第612条)とに分けて規定している。 | |
3. | そして、その用語の使い方については、たとえば、賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとし、そのために賃借人が賃借した目的を達しなくなるような場合には、賃借人は契約を「解除」することができるといったように(民法第607条)、どちらかといえば当事者の一方が他方に対し契約の目的を達しなくなるようなことをしたり、不可抗力によってそのような事実が発生したりした場合(民法第610条、第611条)、あるいは当事者の一方が他方に対し賃借権の無断譲渡などの重大な契約違反をしたような場合(民法第612条)に、その相手方が一方的に契約を「解除」することができるといった用語の使い方をしている。 これに対し、「解約」あるいは「解約の申入れ」という用語の使い方をしている条文は、(法的には同じ一方の意思表示によって効果が生じるのではあるが)どちらかといえば、当事者の一方の意思というより、むしろ当事者間の話し合いで契約を終了させてほしいというようなケースの場合に用いられている(民法第617条〜第619条)。したがって、借地借家法においても、同様に、信頼関係をベースに当事者同士の話し合いで契約を終了させてほしいということが基本にあるために、すべて「解約」あるいは「解約の申入れ」という用語の使い方をしている(借地借家法第8条、第27条、第28条)。 |
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4. | このように、民法は、「解除」という用語と「解約」という用語を一応は使い分けてはいるが、一応の目安としては、契約当事者の一方に契約違反などの背信行為があった場合には契約の「解除」、それ以外の場合には「解約」といった用語の使い方をしているのではないかと考えられる。したがって、今後の理解としては、そのあたりの用語の使い方の違いと、賃貸借における「解除」の意味が、あくまでも将来に向ってのみ効力が生じるのだということの2点を理解しておけばよいのではないかと考える。 |
参照条文 | |||||||||||||||||||||||||||
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監修者のコメント | |
「解除」と「解約」は、不動産取引の実際において厳密に使い分けられているわけではなく、売買のようないわゆる「一時的契約」においても、その契約をなかったことにすることを「解約」と表現することも多い。 しかし、それが法的に誤りということではない。ただ、民法の講学上は、売買・贈与・請負などの一時的契約(物や金銭の引渡しによって、契約の履行が済んでしまうもの)を解消する場合は「解除」、賃貸借・委任などの継続的契約(義務の履行や権利行使が契約の存続中、継続するもの)を解消する場合は「解約」とそれぞれ表現するので、【回答】にあるように、その意味すなわち契約がさかのぼって消滅するのか、それとも、さかのぼらずに将来に向ってのみ消滅するのかを理解したうえで使い分けるのが適切と考える。 |