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売買事例 1508-B-0200
売買の媒介における埋設管の調査義務の範囲と望ましい事後対応

 売買契約の媒介において、買主に引き渡した古家を買主が解体したところ、隣地との境界線沿いに、奥地の所有者が使用していると思われる水道管が埋設されていることが判った。
 この水道管は、現在も使われているが、なぜか市の水道局の配管図にはその記載がない。しかし、売主はそのことを知らずに本物件を相続したという。
 このような場合、①媒介業者に媒介上の調査義務違反があるか。②媒介業者が媒介時にどのような対応をとっていれば、事前に水道管の存在を発見できた可能性があるか。③媒介業者は、本件の事後対応として、どのような対応をとるのが望ましいか。

事実関係

 当社は媒介業者であるが、先日当社の媒介で買主に引き渡した戸建住宅の古家を買主が取り壊し、整地をしていたところ、隣地との境界線沿いに、奥地の所有者が使用していると思われる古い水道管が埋設されていることが判った。
 なお、この水道管は現在も使われている水道管で、もともと本件売買物件を含む周囲の土地で奥地の所有者(地主)が貸家を営んでいた頃に引き込まれたものと思われたが、なぜか市の水道局にはその配管図面が存在しておらず、売主自身も2年前にこの物件を相続したばかりなので、水道管のことは知らなかったという。

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質 問

1.  このような場合、媒介業者(当社)に媒介上の調査義務違反があるか。
2.  このようなケースの場合、媒介業者がどのような対応をとっていれば、事前に水道管の存在を発見できた可能性があるか。
3.  このような場合、媒介業者(当社)の責任の有無にかかわらず、事後処理として、どのような対応をとるのが望ましいか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 市の水道局備え付けの配管図に記載がなく、売主からの告知もない場合には、現地や隣地・近隣にその事実を推察し得るような状況がない限り、媒介業者には媒介上の調査義務違反はないと解される。
 質問2.について ― 媒介業者が媒介時に売主から、売主と隣地や奥地の所有者との間で交わされた覚書等の存在を確認するとか、売主の先代が家を建てた際に作成した建築図面や配管図面などの一式を見せてもらうなどの対応があれば、あるいは隣地や奥地の所有者との間で交わされた何らかの確認図面や確約書面が発見できた可能性も全くないとはいえないであろう。
 しかし、かと言って媒介業者に、本件の埋設管に関し、直接奥地の所有者に確認をとるといったことまで求めるのは、特段の事情がない限り、無理があろう。
 質問2.について ― 買主と同道のうえ、奥地の所有者に対し、当該地に埋設されている水道管の話をし、その水道管が奥地のどの給水装置に接続されているのか、なぜ市の水道局の配管図に記載がないのか、当該地の従前の所有者(被相続人)との間で何が水道管の埋設に関する覚書などが交わされていないかなどの確認をし、それを待って対応を考えるということであろう。
 その場合、できれば奥地の所有者から、市への配管の届出と、それに伴う将来の配管の移設または撤去の約束を買主宛てに取り付けるということであろうが、その間は、売主には買主に対する水道管の埋設という「隠れた瑕疵」に対する責任という問題も考えられるが、この点については、買主に具体的な損害があるのかという難しい問題もあるので、暫らくはこのままの状態にしておいて、将来の移設・撤去ということの中で話し合うべきであろう。

参照条文

 民法第750条(売主の瑕疵担保責任)
 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

監修者のコメント

 境界線沿いの水道管が、土地の瑕疵といえるかどうか極めて微妙と思われる。なぜなら、境界線沿いであれば、その土地の利用にさしたる支障を来たさないからである。本件で、仮に買主がその水道管の撤去を求める法的手段をとった場合は、おそらく「権利の濫用」として請求が認められない可能性が高い。
 媒介業者の調査義務に関することは、回答のとおりと考えるが、仮に義務違反があったとしても、本件水道管は、土地の減価要因になる可能性が少なく、「損害」の発生の立証は困難であろう。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「瑕疵担保責任(瑕疵担保責任の期間と内容)」

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