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売買事例 0902-B-0094
中古の事務所付賃貸マンションの付帯設備の瑕疵担保責任

 ある宅建業者が、中古の1階事務所付賃貸マンションを1棟丸ごと購入したが、物件の引渡し後、その事務所部分に戸別の水道メーターが付いていないことと、エレベーターの昇降用ロープの取り替え時期が来ていることが判った。この責任を売主と媒介業者に追及したいが、できるか。

事実関係
 
当社は宅建業者であるが、このたび、ある個人オーナーが所有する中古の賃貸マンション(全25戸)を1棟丸ごと購入した。
 ところが、物件の引渡しを受けてすぐに判ったことは、1階の事務所部分(全5戸)だけに水道の戸別メーターが付いていないことと、エレベーターの昇降用ロープの取り替えを保守業者が再三売主に伝えていたということである。
質問
1.  本件の取引には、「売主は瑕疵担保責任を負わない」という特約が付いているが、本件のようなケースにおいては、民法第572条の規定により、いずれも売主の瑕疵担保責任を追及することは可能だと思うが、どうか。
2.  本件に関する媒介業者の責任追及については、どうか。
回答
  1.結論
(1) 質問1.について——前者(戸別水道メーターの欠如)のケースについては、売主の瑕疵担保責任を追及するのは難しいと考えられるが、後者(エレベーターの昇降用ロープの取り替え)のケースについては、エレベーター保守業者の話が事実であれば、責任追及は可能であると考えられる。
(2) 質問2.について——前者のケースにおいては、その戸別メーターの取り付けが利用上あるいは管理上必須のものであるかどうかで、媒介業者の責任の有無が判断されると考えられるが、後者のケースにおいては、媒介業者が、そのエレベーターの保守点検記録の内容をどこまで買主(宅建業者)に伝えていたか、あるいは事前にその保守点検記録の写し等を交付していたか等によって、その責任の有無が判断されると考えられる。
しかし、いずれにしても、媒介業者の責任については、仮にその責任が認められるとしても買主が宅建業者であるだけに、その損害賠償の額等については過失相殺の対象になろう(民法第418条)。
 
2.理由
(1)について
 1階の事務所部分だけに戸別メーターが付いていないのは、おそらく事務所の場合には、使用する水道の量がトイレと湯沸かし程度のものなので、その料金が基本料金の範囲内に収まるということからだと思われる。

 したがって、本件の事務所部分の水道料金は、5戸一括メーターか、あるいはマンション全体のメーターから算出される住戸部分の水道料金を差し引いた料金を、5分の1ずつ集金しているものと思われるが、いずれにしても、このようなコストを考えた物件について、多少の管理上の不便はあるにしても、そのメーターの取付けが必ずしも必須のものであるとはいえないだけに、「隠れた瑕疵」があるとはいえないと考えられる。
 それに引き換え、後者のケースは、コストとか費用の問題では片づけられない人命にかかわる問題なので、もしエレベーター保守業者の言っていることがロープの状況や設備の標準的な耐用年数等から考えても、正しいといえるのであれば、当然「隠れた瑕疵」があるものとして、損害賠償請求の対象になろう。
(2)について
 前記(1)で述べたとおり、前者のケースにおいては、戸別メーターの取付けが、利用上・管理上必須のものと考えられるのであれば、その戸別メーターが付いていないことを発見できなかった媒介業者の注意義務違反(不法行為責任等)を問うことも可能であるが、必ずしも必須のものとはいえない本件の場合においては、媒介業者の責任を問うことは難しいと考えられる。
 ところが、後者の場合には、事が人命にかかわる問題だけに、【回答】の結論にも述べたとおり、媒介業者が不動産取引の専門家として、どのような対応をしたかによって、その責任の有無が判断されるものと考えられ、いずれにしても、買主が宅建業者であるだけに、過失相殺の問題が大きな議論の対象になろう。
 
参照条文
  ○ 民法第572条(担保責任を負わない旨の特約)
 売主は、第560条から前条までの規定による担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
 
○ 同法第418条(過失相殺)
 債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
 
○ 同法第709条(不法行為による損害賠償)
 故意又は過失によって、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 
監修者のコメント
 瑕疵担保責任における「瑕疵」とは、その目的物が通常有すべき品質、性能、性状を有しないことである。本ケースの1階の戸別水道メーターの欠如が瑕疵といえるかは、回答のとおり甚だ疑問であるが、仮に瑕疵に該当する場合でも、「隠れた」瑕疵とはいえないと思われる。「隠れた」というのは、買主が通常の注意をもっても知り得なかったことをいうが、水道メーターのことは、買主が容易に知り得たことと思われるからである。
 エレベーターの昇降用ロープの件も、保守業者が売主に伝えていたというその理由が問題であり、取り替えが安全上不可避ということであれば、売主が買主に告げなかった以上、建物の隠れた瑕疵であろう。仮に、まだどうしても取り替えるほどの必要性がなく、瑕疵とはいえない場合でも、保守業者から再三言われていることを買主にあえて言わなかったのであれば、売主の説明義務違反が問題になる。
 媒介業者の責任の問題については、回答のとおりと考えるが、そもそも媒介業者の調査・説明・告知義務がどこまであるかは、相手方(本件では買主)の知識・知見との関係で相対的に決まることである(例えば、税金の説明を誤った場合でも、相手方が素人の場合と税理士の場合では同列に判断することはできない)。本ケースでの問題は、戸別の水道メーターとエレベーターの保守に関わる事柄であって、1棟を丸ごと購入しようというプロの宅建業者が、その事柄について媒介の宅建業者の責任を追及すること、言い換えれば媒介業者の責任を認めることは、質問での事実のみを前提とする限り、かなり困難と思われる。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「瑕疵担保責任(瑕疵担保責任の期間と内容)」

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