不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

売買事例 1506-B-0197
取締役による自社物件の簿価での購入と利益相反取引の成立いかん

 当社の取締役が自社の建売用地を簿価で購入する取引は、会社法第356条の利益相反取引に該当するか。
 その取引を、当社の子会社が特段の営業行為をすることなしに代理・媒介し、当社が子会社に宅建業法で定める上限の代理・媒介報酬を支払った場合、その親子会社間の代理・媒介契約は、「不当対価」による利益相反取引に該当するか。

事実関係

 当社は株式会社組織の宅建業者であるが、このたび当社の役員(取締役)が、会社の建売用地を自宅を建てるために簿価で購入するという話を聞いた。
 しかし、総務部に聞いたところ、そのための取締役会や株主総会を開いた、あるいはそのための書面決議をしたという様子はない。過去にも同じようなことが会社と役員との間で行われたということは聞いていたが、そもそもこういう行為は取締役と会社との自己取引で、利益相反取引になるのではないかと思っている。なぜならば、この建売用地は、これから会社の利益を乗せて、建築条件付で分譲するか、建売住宅として分譲することが決まっていたからである。

質 問

1.  この取締役と会社との間の簿価による取引は、会社法第356条の利益相反取引の制限規定に抵触するのではないかと思うが、どうか。
2.  当社では、当社の所有物件の取引については、すべて当社の100%子会社がその代理・媒介業務を行うことになっているが、本件のようにすでに当事者も取引価格も決まっている取引について、当社(親会社)が子会社に対し宅建業法で定める上限の代理・媒介報酬を支払った場合には、その親子会社間の代理・媒介契約は「不当対価」による契約として、やはり会社法第356条の利益相反取引の制限規定に抵触することになると思うが、どうか。

回答

1.  結 論
 質問1.について ― その建売用地の簿価が、社会通念上、いわゆる時価よりも安価であるということであれば、抵触することになると解される。
 質問2.について ― 抵触することにはならない。
2.  理 由
について
 本件の取締役と会社との間で行われる社有物件の簿価での取引が、会社法第356条の利益相反取引に該当するかどうかということであるが、この会社法第356条の規定の趣旨は、その取締役が自ら会社を代表するときはもとより、他の取締役が会社を代表するときも容易に取締役間において会社利益の犠牲のもとに自己または第三者の利益をはかることができるので、これを株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)の監督下に置き、会社の利益を保護するためである。したがって、この株主総会あるいは取締役会の承認を得なければならない取引というのは、単に同条例示の取引だけではなく、取締役・会社間に利益相反をもたらし、会社に不利益を及ぼすおそれのある一切の取引が含まれる。
について
 親子会社間の代理・媒介契約が、会社法第356条の利益相反取引になるかどうかは、前述の質問1.に対する回答理由(1)を見るまでもなく、もともと本件のような「完全子会社」と「完全親会社」との間においては、両社は実質的に同一の会社(完全子会社には、完全親会社以外に株主が存在しない)であるから、そこでの取引においては、利害が衝突することがなく、利益相反取引が成立する余地がない。したがって、たとえ両社の代表取締役を同一人が兼務して取引を行ったとしても、同条による株主総会や取締役会の承認を必要としない。

参照条文

 会社法第356条(競業及び利益相反取引の制限)
 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。担保権の登記(仮登記を除く。)のされている登記簿の謄本
 民法第108条の規定は、前項の承認を受けた同項第2号の取引については、適用しない。
 民法第108条(自己契約及び双方代理)
 同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

監修者のコメント

 会社法における利益相反取引とは、取締役が会社の利益を犠牲にして、自己又は第三者の利益を図る結果となる取引のことをいい、会社法第356条第1項の第2号に規定するものを「直接取引」、第3号に規定するものを「間接取引」と呼んでいる。そのいずれも、会社が損害を受けるおそれがあるので、同法は株主総会又は取締役会の承認が必要とし、承認を得ないで行った取引は原則として無効とされている。ただ、それはあくまでも会社に損害が生ずることを防止し、会社の利益を保護するためであるから、会社の利益を害するおそれのない取引は利益相反取引に当たらない。たとえば、本ケースとは逆に取締役が自己所有の土地を会社に対し、時価より廉価で譲渡したり、無償で譲与する場合は、承認は不要である。本ケースでは回答のとおり、簿価は通常、時価よりかなり低いので、原則として利益相反取引に該当すると解される。例外として、簿価が時価相場より高ければ会社に損害を与えないがそのような事例は極めて稀であろう。もし、その売買が利益相反取引に当たらないと取締役が主張するのであれば、現実の売買価格が時価と同額又はそれより高いことを立証(証明)する必要がある。

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