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賃貸事例 1506-R-0147掲載日:2015年6月
倒産の噂のあるサブリース業者の転貸物件を媒介する際の留意点
当社は、倒産の噂のあるサブリース業者の転貸物件を媒介するが、その噂は、告知事項か。
オーナーとの賃貸借契約には、契約終了のときは、転貸人の地位がオーナーに移転すると定められているが、もしサブリース業者が倒産したときは、転借人の差し入れた敷金はどうなるか。その際に、倒産によって生じた滞納賃料を、オーナーがサブリース業者の差し入れた敷金で全額回収できなかったときは、どうなるか。
このような問題が生じないようにするためには、サブリース契約書等にどのような条項を定めておけばよいか。
事実関係
当社は賃貸媒介業者であるが、このたびサブリース物件の転貸借の媒介を依頼された。ところが、仄聞したところによると、サブリース業者には倒産の噂があり、果して媒介してよいのかどうか迷っている。
なお、サブリース業者から渡された転貸借契約書を見ると、オーナーとサブリース業者との賃貸借契約(以下「原契約」という。)が解除等により終了したときは、そのサブリース業者の転貸人としての地位がオーナーに移転する旨の定めがあり、そのことは原契約書にも定められている。
質 問
1. | このような物件を媒介する場合、その倒産の噂は、転借人に告知すべきか。告知するとした場合、どのような内容を告知(説明)すべきか。 | |
2. | サブリース業者の倒産によって原契約が解除された場合、転借人がサブリース業者に差し入れている敷金は、オーナーに引き継がれるのか。その転借人が差し入れている敷金は、オーナーがサブリース業者の滞納賃料をサブリース業者が差し入れている敷金で全額回収できなかった場合にも、全額引き継がれるのか。 | |
3. | 前記2.のように、サブリース業者が差し入れていた敷金で、サブリース業者の滞納賃料を全部回収できないというようなことのないようにするためには、オーナーは、敷金を高額にする以外に、どのような条項を原契約書および転貸借契約書に定めておけばよいか。 |
回答
⑴ | 質問1.について ― 噂が真実であれば、告知すべきである。しかし、その噂の真偽の判断は、媒介業者が直接サブリース業者に会って、不渡りの事実を確認するなどして、自ら判断すべきである。 なお、告知する内容は、たとえば次のようなものとなろう。 「転貸人には倒産の噂があり、転貸人に万一原契約が解除されるなど、転貸借を継続できないような事態が生じたときは、転貸借契約は、同一内容をもって賃貸人との間の賃貸借契約となり、敷金は賃貸人に全額引き継がれます。」 |
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⑵ | 質問2.について ― いずれの場合も、敷金は全額オーナー(新貸主)に引き継がれる。なぜならば、本件の転貸人としての地位の移転合意は、契約上の地位の移転合意であるから、その合意の内容は、個々の権利・義務だけではなく、転貸借契約から生ずる一切の権利・義務を包括的にオーナーに移転させる合意だからである。 なお、この契約上の地位の移転合意は、本件転貸借契約の両当事者と譲受人であるオーナーとの三面契約で成立する(大判昭和2年12月16日民集6巻706頁)。 |
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⑶ | 質問3.について ― 原契約書および転貸借契約書の中に、たとえばそれぞれ、「原契約に基づく賃料の滞納が連続3か月(分)に至ったときは、自動的に原契約は終了し、転貸人の地位がオーナーに移転する」旨の停止条件付解除契約兼地位の移転合意条項を定めておくとともに、そのための転借人への新たな賃料振込み口座などの通知はすべてオーナー(新貸主)から行うなどを定めておくということであろう。そのためにも、その前提として原契約書の中に、「サブリース業者が使用する転貸借契約書は、オーナーが承認したものに限る」旨の条項も定めておく必要があろう。 |
参照条文
○ | 民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限) | ||
① | 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 | ||
② | 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。 | ||
○ | 民法第613条(転貸の効果) | ||
① | 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。 | ||
② | 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。 |
監修者のコメント
賃貸借契約は、継続的契約であって相手方当事者が誰であるかは、契約の重要な要素であるから、転貸借契約が終了したときは、転貸人の地位が元の契約の賃貸人に移転する旨の説明のみではなく、サブリース業者に倒産の噂があることを知った以上、そのことも告げた上で賃借するかどうかの判断を求めるべきであろう。
なお、賃借人破産、賃貸人破産のいずれの場合でも、「破産」の事実のみで、契約の解除をすることはできないことに注意されたい。
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