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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

売買事例 0810-B-0083
宅建業法上の不利益処分と時効

 業法違反による行政処分権限(不利益処分権限)の行使も時効にかかるか。また、業法違反により損害が発生したが、当事者がそのことに気が付かないでいる場合、行政処分の有無により、民事上の時効が中断したり停止したりすることがあるか。

事実関係
 私は、先日ある会社の講習会に参加したが、その席上で宅建業法上の行政処分権限(不利益処分権限)も、公訴時効と同じように時効にかかるのではないかということが話題になった。つまり、何年も前の業務ミス(違反行為)についても、行政処分がなされることがあるのかどうかということである。

 その場では明確な答えは出なかったが、不動産業界においては、平成19年10月から国土交通省や都道府県が公開している、いわゆる「ネガティブ情報」との関係もあるので、知識として知っておきたい。
質問
(1)  宅建業法上の違反に対する処分権限にも時効制度というのはあるのか。
(2)  売主業者が宅建業法に違反し、買主に民事上の損害が発生しているにもかかわらず、行政庁も契約の当事者もそのことを知らないでいる場合、行政処分の有無により、民事上の時効が中断したり停止したりすることがあるのか。
回答
 
1. 結論
(1) 質問1.について — 処分権限についての時効制度というものはない。
(2) 質問2.について — 行政処分の有無は、民事上の時効の進行に何らの影響も与えない。
 
2. 理由
(1)について

 行政庁が行う免許の取り消しを含めた不利益処分は、処分権限を有する者(国土交通大臣・知事)の裁量により行われるものであるから(業法第65条、第66条)、何年経ったら時効により処分できなくなるという性質のものではない(後記【参照判例】参照)。
 
(2)について

 民事上の時効制度は、民法第162条及至第174条の2、第724条及び商法第522条などの規定に基づいて、その時効期間が独自に定められている。したがって、この民事上の時効期間は、行政法上の行政処分(不利益処分)の有無とは関係なく進行するので、仮に、買主がその損害の発生を、売主に対する行政処分がなされたことにより初めて知ったとしても、本件の買主が一般の個人であれば、原則として、物件の引渡しを受けた時から10年間(民法第167条第1項)、不法行為による損害賠償請求権を行使する場合でも、その損害及び加害者を知った時から3年間、不法行為の時から20年を(注)経過すれば、その損害についての請求はできなくなる(民法第724条)。
 
(注) この20年は、時効期間ではなく、「除斥期間」と解されている(最判平成元年12月21日民集43巻12号2209頁)。
 
参照判例
  最判平成元年11月24日民集43巻10号1169頁
 宅地建物取引業法に基づく宅建業者に対する不利益処分は、その営業継続を不能にする事態を招き、既存の取引関係の利害にも影響するところが大きいところ、業務の停止に関する権限がその裁量により行使されるべきことは同法第65条2項の規定上明らかであり、同法66条に基づくもののうち、停止事由に該当し特に状況が重いときになされる免許の取消しについてその要件の認定に裁量の余地があり、これらの処分の選択、その権限行使の時期等は、知事等の専門技術的判断に基づく合理的裁量にゆだねられている。
 
参照条文
  ○宅地建物取引業法第65条(指示および業務の停止)
(1)  国土交通大臣又は都道府県知事は、(中略)宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。
 
一〜四 (略)
(2)  国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該宅地建物取引業者に対し、1年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
  
一〜八 (略)
(3)(4)(略)
 
○同法第66条(免許の取消し)
(1)  国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該免許を取り消さなければならない。
 一〜九 (略)
(2)  国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が第3条の2第1項の規定により付された条件に違反したときは、当該宅地建物取引業者の免許を取り消すことができる。
 
○民法第167条(債権等の消滅時効)
(1) 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
(2) 債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。
 
○同法第724条(不法行為による損害賠償の請求権の期間の制限)
 
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
 
監修者のコメント
 【回答】のとおり、行政処分をする権限は、その性質上、時効にかかるということはない。それは、消滅時効という制度が、民事上の権利を有する者が、いつでも権利を行使できるにもかかわらず、長年にわたって権利行使をしなかったことを捉えて、権利を消滅させるものであるのに対し、行政処分を行うという公法上の権限に時効の制度趣旨は当てはまらないからである。
 ただ、たとえば宅建業者が過失により重要事項説明義務違反をしてしまったという場合、民事上の債務不履行に伴う損害賠償責任は、義務違反の時から10年の経過により消滅時効にかかり(民法第167条第1項)、また不法行為に基づく損害賠償責任も、被害者が損害と加害者を知った時から3年間、またはその事実があった時から20年経過すれば、その責任は消滅する。
 そのような場合、すなわち宅建業者の民事上の責任が、消滅時効にかかり、もはや業者の相手方(顧客)が何も言えなくなったにもかかわらず、行政庁の処分権限は時効がないとして、何らかの処分をするということ自体、通常は考えられないところである。

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