不動産相談

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

== 更に詳しい相談を希望される方は、当センター認定の全国の資格保有者へ ==

不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1504-B-0195
相続物件の売却に伴う遺産分割協議書の存在と遺言書の関係

 相続物件を売却するには遺産分割協議書が必要だと思うが、どうか。もし遺産分割協議書を作成せずに相続物件を売却し、その後に遺言書が発見された場合、その相続物件の所有権の帰属はどうなるか。

事実関係

 先日、相続に関する講習会で、遺産分割協議書が作成されていなくても、相続物件である不動産の売却をすることができるという話があった。
 しかし、遺産分割協議書が作成されていないと、相続の登記やそれに基づく買主への所有権移転登記ができないと聞いている。しかも、あとから相続人以外の者が遺言書によってその不動産を取得していることが判ったときに、その不動産がすでに相続人によって第三者に売却されており、所有権の移転登記もなされていた場合に、その不動産の所有権の帰属がどうなるのかという問題があるので、その講師の話がよく理解できなかった。

質 問

1.  そもそも相続物件を売却するには、事前に遺産分割協議書を作成しないと相続の登記ができないので、第三者への所有権移転登記もできないという考え方は正しいか。
2.  講師の言っていたことが正しいとすると、相続人は、その遺産分割協議書が作成される前に相続物件を購入した者に対し、どのような方法で所有権移転登記をするのか。
3.  遺言書による遺贈の効力は、受贈者が相続人であると否とにかかわらず、一般に法定相続人による所有権移転の効力より優先すると聞いているが、この考え方は正しいか。
4.  遺言書の遺贈の効力が、一般に相続による所有権移転の効力より優先するとした場合、相続人が相続物件(不動産)を第三者に売却したあとにその不動産を特定の者に遺贈するという遺言書が発見されたときは、その不動産の所有権の帰属はどうなるか。
5.  そもそも遺言書による遺贈の登記というのは、どのようにして行うのか。

回答

1.  結 論
 質問1.について ― 正しくない。
 質問2.について ― いったん相続人全員が、「相続」を登記原因とする「共同相続」の登記をしたうえで、買主に対し所有権移転の登記をする。
 質問3.について ― 正しい(民法第902条)。
 質問4.について ― 第三者への所有権移転登記が先行しているときは、受遺者は、その遺贈による所有権の取得を第三者に対抗することができない(最判昭和39年3月6日民集18巻3号437頁)。
 したがって、そのような場合には受遺者は、相続人に対しその損害を賠償請求することになる。
 質問5.について ― 受遺者が相続人であると否とにかかわらず、その遺言書(ただし、公正証書遺言の場合以外は家庭裁判所の検認を受けたものに限る。)を添付したうえで、登記権利者を受遣者、登記義務者を遣贈者(遺言執行者がいるときは当該遺言執行者が代理人として、遺言執行者がいないときは相続人全員を登記義務者)として、「遺贈」を登記原因とする共同申請により所有権移転登記を行う(不動産登記法第60条、東京高決昭和44年9月8日判時572号38頁、昭和33年4月28日民甲779民事局長通達ほか)。
2.  理 由
〜&#9335について
 相続は、被相続人の死亡と同時に開始する(民法第882条)。したがって、相続人はその被相続人の死亡と同時に、被相続人の一身に専属したものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(民法第896条)。
 そのため、相続人は相続開始後、相続財産の相続人による共有関係を公示するため、いつでも単独で「相続」を登記原因とする「共同相続」の登記を申請することができる(不動産登記法第63条第2項)。そしてその登記は、法定相続分による共同相続の登記ということになるので、「遺産分割」が行われるまでの間は、その財産はそれぞれの相続分に応じた全相続人の共有ということになり(民法第898条)、相続人の全員が同意すれば、遺産分割協議を行う前に、その共有財産の全部または一部を(たとえば、相続税を納付するために)処分することもできる。
 なお、【事実関係】の後段(「しかし」以下)に述べられている遺産分割協議書の存在と遺言書との関係の問題については、両者の間には直接の関係はなく、たとえ遺産分割協議書が事前に作成されていようといまいと、遺言書の発見前に相続財産の処分がなされている場合には、その所有権の帰属に関する対抗関係は、結論(4)で述べたように登記の先後により決せられる。
について
(略)

参照条文

 民法第882条(相続開始の原因)
 相続は、死亡によって開始する。
 民法第896条(相続の一般的効力)
 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
 民法第898条(共同相続の効力)
 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
 民法第902条(遺言による相続分の指定)
 被相続人は、前2条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
(略)
 不動産登記法第60条(共同申請)
 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
 同法第63条(判決による登記等)
(略)
 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。

監修者のコメント

 民法第177条は、不動産の物権変動の対抗要件について、登記がなければ第三者に対抗できない旨を規定している。遺言による財産の譲与すなわち遺贈も同条の適用を受けるというのが、最高裁判例の考え方である。したがって、遺言書によれば、ある財産を取得できた者と、同一不動産を売買で取得した者とは対抗関係に立ち、先に登記をしたほうが勝つことになる。あとは、回答のとおり賠償請求の問題としてケリをつけることになる。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開!「法定相続分」

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

更に詳しい相談を希望される方は、
当センター認定の全国の資格保有者へ

不動産のプロフェッショナル

過去の事例(年別)

  • 賃貸
  • 売買

ページトップへ

single