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売買事例 0807-B-0076掲載日:2008年7月
売買契約書の原本を1通だけ作成することの是非
売買契約の締結に際し、売買契約書の原本を1通しか作成しなくても、法的に問題ないか。業法上の書面交付との関係ではどうか。
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当社はある金融機関のサービサーであるが、当社のために設定されている抵当権の抹消との関係で、現在任意売却を進めている媒介業者のところに行ったところ、その媒介業者は、売買契約書については、売主は原本を保有せず、買主が保有する原本の写しを所持することにすると言ってきた。 |
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1.このような方法をとっても、法律上問題になるようなことはないのか。 |
2.宅建業法上の書面交付義務との関係はどうか。 |
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回答 |
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1. |
結論 |
(1) |
質問1.について — 後日、当事者間に紛争・トラブルが生じない限り、特に問題となることはないと考えられるが、媒介業者としては、あまり好ましいやり方ではない。 |
(2) |
質問2.について — その写し(書面)に取引主任者が記名押印していれば、問題ないと考えてよい。 |
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2. |
理由 |
(1)について 売買契約のような取引は、賃貸借契約のような継続的な取引と異なり、一過性のものであるから、取引が円満に、かつ、事務的にも正確に行われれば、後日になって紛争やトラブルが生じる余地はないと考えるのが普通である。
しかし、不動産取引というのは、そんなに簡単なものではなく、当時は完璧だと思っていても、実は当事者が思い違いをしていたり、そのために媒介業者が間違った対応をしていたということも往々にしてありうるし、また、あとになって「隠れた瑕疵」が発見された場合に、たとえ売主が瑕疵担保責任を負わない特約をしていたとしても、実は、「売主はその瑕疵のあることを知っていたのではないか」といった疑心暗鬼にとらわれることも少なくない。したがって、そのような場合、最悪のケースとしては訴訟ということも考えられるので、そのような事態に対処するためにも、媒介業者としては最低限売買契約書だけは、売主・買主双方が保有するようにすべきである。 |
(2)について
宅建業法第37条は、宅地建物の取引が成立した場合に、その契約内容が不明確であると、後日になって当事者間に紛争・トラブルが生じるおそれがあるため、その内容を書面に記載することにより契約内容の明確化を図るとともに、買主等に注意喚起をさせることにより、後日の紛争・トラブルの防止を図るために設けられたものである。そして、その書面に記載すべき内容は、通常売買契約書等の契約書に記載される内容と同一であることが一般的であるため、実務においては、その契約書をもって、本条の書面に替えることができることとされている。したがって、本件の契約書に、業法に定める内容が漏れなく盛り込まれているのであれば、その契約書の写しに取引主任者が記名押印すれば、業法上の要請には応えることができると考えられる(業法第37条第3項)。 |
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法律の理論上は、【回答】のとおり、何ら問題がない。ただ、強いて言えば、不幸にして契約上の合意の有無などに関して、紛争が生じ、裁判になった場合、もし契約書の原本とその写しに食い違いがあった場合、他の諸要因がなければ、原本のほうが証拠力がある。その意味で、写し(コピー)の証拠力は劣る。
なお、原本を1通しか作成しない多くの理由は、印紙を貼ることを節約することであるが、単なるコピーであれば、印紙を貼らなくてもよいが、そのコピーに原本と相違ないことの証明文言が記載されている場合は印紙税法上、印紙を貼る必要があるので注意されたい。要するに、コピーであればすべて印紙税の対象から外れると考えるのは、誤りである。 |
より詳しく学ぶための関連リンク
・“スコア”テキスト丸ごと公開! 「瑕疵担保責任(瑕疵担保責任の期間と内容)」