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1502-B-0193掲載日:2015年2月
借地人が汚染させた土地の借地人への売却と売主の瑕疵担保責任
宅建業者である当社は、その所有地をメッキ工場を経営している会社に賃貸しているが、当社がその土地を現状のままメッキ工場会社に売却した場合には、買主(借地人)がその土地が土壌汚染の可能性のある土地であることを知っていても、当社は引渡しから2年間瑕疵担保責任を負うことになるか。買主が売主の免責を約束した場合は、どうか。もし、いずれの場合も売主が責任を負うとした場合、売主は瑕疵担保責任を免れる方法は一切ないということか。
事実関係
当社は、宅建業者であるが、当社が創業の頃から所有している土地を地元のメッキ工場を経営している会社に賃貸している。
このたび、この土地(底地)をそのメッキ工場会社に売却するが、当社が宅建業者であるために、当社がその土壌汚染についての責任として、買主に対し、引渡しから2年間の瑕疵担保責任を負うのではないかという心配があり、どのように売却してよいか迷っている。
質 問
1. | 当社がこの土地を現状のまま買主に売却した場合、買主(借地人)がその土地が土壌汚染の可能性のある土地であることを知っていても、当社は買主に対し、土壌汚染に関する瑕疵担保責任を負うことになるか。買主が売主の免責を約束した場合は、どうか。 | |
2. | 前記1.の問題について、いずれも売主は責任を免れないとした場合、本件の売買において、売主が瑕疵担保責任を免れる方法は一切ないということか。 |
回答
1. | 結 論 | |
⑴ | 質問1.について ― 買主(借地人)が土壌汚染の可能性があることを知っているだけでは、売主は瑕疵担保責任を免れることはできない。したがって、その場合の瑕疵担保免責特約は、無効となる(宅地建物取引業法第40条第2項)。 | |
⑵ | 質問2.について ― 一切ないということではなく、たとえば買主(借地人)にその土地の汚染状況を調査させ、その結果汚染されている事実が確認できれば、その限りにおいて、その汚染事実は「隠れた瑕疵」ではなくなるので、その場合は売主が瑕疵担保責任を負うことはない(民法第570条)。 | |
2. | 理 由 | |
⑴⑵について 売主は、売買物件に「隠れた瑕疵」があったときは、それによって買主が被った損害を賠償しなければならない(民法第570条、第566条)。 しかし、その瑕疵が表に現われているものであれば、それは「隠れ」ていないので、買主がその瑕疵を確認している以上同条の適用はない。しかも、本件の瑕疵(土壌汚染)は買主自身が生じさせたものであり、むしろ借地を返還する際に原状回復させるべきものであるから、売主は本件の土地の売却にあたり、その瑕疵についての売買代金の減額や調査費用の負担等については一切考慮せずに、通常価格での売買契約を締結することができるといえよう。 |
参照条文
○ | 民法第570条(売主の瑕疵担保責任) | ||
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。(以下、略) | |||
○ | 民法第570条(売主の瑕疵担保責任) | ||
① | 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法 (明治29年法律第89号)第570条において準用する同法第566条第3項に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。 | ||
② | 前項の規定に反する特約は、無効とする。 |
監修者のコメント
本件は、回答のとおり、土壌汚染の「可能性」を買主が知っているだけでは、売主は免責されるわけではない。しかし、売主の瑕疵担保責任が生ずるのは、買主が善意(知らなかった)かつ無過失(注意義務違反なし)であることが必要である。そこで、メッキ工場を経営している会社が借地している土地を購入するに当たり、土地の使用履歴からみて、土壌汚染の有無について無関心でいたという事実は、とうてい無過失ということはできないと思われる。売主が仮に土壌が汚染されていないということを保証したのであればともかく、借地人が自己の使用による汚染を売主に瑕疵として責任追及することは、信義則上も許されない可能性が高く、少なくとも過失相殺の大きな対象になると考えられる。