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1502-B-0191掲載日:2015年2月
売買における固定資産税等の分担合意のための起算日変更等の可否
不動産物件の売買に伴う未経過固定資産税等の分担に関する当事者間の合意の円滑化を図るために、納付分担の起算日を1月1日または4月1日のいずれかとせずに、別の方法で分担合意をすることは法的に問題ないか。
問題ないとした場合、1月1日、4月1日それぞれを起算日とする買主負担額の両者の差額を売主・買主が折半負担することにより、それを最終的な買主分担額とする定め方は妥当か。
事実関係
当社は媒介業者であるが、不動産物件の売買に伴う物件引渡し後の固定資産税・都市計画税の未経過分を買主負担とするための当事者への説明をするにあたり、その納付分担の起算日を1月1日とするか、4月1日とするかによって分担金額に大きな差が出るため、当事者の合意が得られず、どうしてよいかわからなくなるときがある。
質 問
1. | そもそもこの1月1日起算であるとか、4月1日起算であるとかという分担方法に、当事者が従わなければならない法的根拠はあるか。 | |
2. | 当社は、契約の当事者が話し合いで、その起算日を変更したり、全く別の方法によって分担額を定めてもよいと考えているが、この考え方は正しいか。 | |
3. | 当社は、その起算日を1月1日とした場合の買主負担額と4月1日を起算日とした場合の買主負担額をそれぞれ算出し、その差額を当事者が折半負担し、それを最終的な買主分担額とすることを考えているが、この考え方は妥当か。 |
回答
1. | 結 論 | |
⑴ | 質問1.について ― 法的根拠はない。 | |
⑵ | 質問2.について ― 正しい、正しくないという問題ではなく、当事者同士話し合いで合意をすることはもとより、貴社(媒介業者)が当事者間の合意を導くために、起算日を変更したり、全く別の方法をとることを提案することは、結果が妥当である限り、間違っているとはいえない。 | |
⑶ | 質問2.について ― 1つの方法として、それで当事者が納得するのであれば、妥当といえる。 | |
2. | 理 由 | |
⑴〜⑶について 不動産の所有者に課せられる固定資産税および都市計画税については、毎年1月1日の賦課期日における所有者がその年の4月1日から始まる年度分の納税義務者となる(地方税法第343条、第359条)。そのため、当該不動産の売買によって所有者が変わる場合には、その引渡しの日を境に、売主と買主との間でその年度の納税義務者が負担する固定資産税等を分担するのが通例となっている。 しかし、その買主が分担することとなる引渡し後の未経過分の固定資産税等の額については、物件の引渡し日とその納付分担のための起算日のいかんによって大きな差が出る。すなわち、買主の分担額の計算方法として、たとえば3月末日に引渡しをする物件で1月1日起算のケースでは、その計算の基礎となる税額は4月1日以降に送付されてくる納税通知書(納付書)に基づくため、その税額の第1期分を売主負担、第2期~第4期分を買主負担とするのが妥当と考えられるのに対し、4月1日起算のケースの場合には、その3月末日までの納付分は前年度に属するものなので、売主はすでに送付されている納付書に基づいてその第4期分を支払い、買主は4月1日以降に送付されてくる当年度の納付書に基づいてその全期分を負担するのが妥当ということになる。 しかし、その納付分担の起算日を1月1日にするか、4月1日にするかは何も法的に決められているわけではなく、当事者間あるいは業界において慣行的に行われているものであるから、その起算日をいつにするかはあくまでも当事者の自由であり、場合によっては全く別の分担方法で取り決めてもよく、要は、当事者が納得すればそれでよいと考えられるからである。その意味において、3月末日までの引渡し物件についても、また4月1日以降に引渡しをする物件についても、同じように別の方法で分担することもできる。 |
参照条文
○ | 地方税法第343条(固定資産税の納税義務者等) | ||
① 固定資産税は、固定資産の所有者(中略)に課する。 | |||
②~⑨(略) | |||
○ | 地方税法第359条(固定資産税の賦課期日) | ||
固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする。 |
監修者のコメント
固定資産税等の起算日をいつにしなければならないという法律の規定はない。ただ簡明なのは、国の会計年度に合わせ4月1日とするか、年の始まりである1月1日であるので、実務上は、そのいずれかであり、関東では1月1日、関西では4月1日とすることが多いようである。
質問のケースは、起算日について当事者の合意が得られないとのことであるが、媒介業者としては、その地域では、1月1日起算か4月1日起算か慣行的に決まっていることを十分に説明し、納得させることが基本であると思われる。
計算上の差額を、双方が半分ずつ負担するというのは、回答のとおり可能であるが極めて異例のことである。