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売買事例 0806-B-0071
内装込みの売買契約における媒介業者の報酬請求権

内装込みの売買契約を成立させたが、契約後、買主が工事の打合せは自分でやりたいと言い出した。売主は同意したが、媒介業者の報酬請求権はどうなるか。

事実関係
 当社は、ある中古のマンションを内装込みで売買すべく、準備をすすめてきた。そして、買主が付いたので、工事の内容について業者を交えて打合せたところ、工事費が約2,000万円かかることがわかった。そこで、売主・買主協議のうえ、売買代金を1億2,000万円とする売買契約を成立させた。
 ところが、売買契約締結後、内装工事については買主の方で進めたいということになり、売主も同意したので、やむなく内装工事の方の業務は断念せざるを得なくなった。
 しかし、今までの媒介活動の中では、内装込みの売買契約が締結されており、内装に関する請負契約も売主が行い、工事完了後、建物本体とともに、買主に引き渡すことになっている。
質問
(1)  このような場合、当社は、当初の売買代金1億2,000万円に対する3%プラス6万円の媒介手数料を請求できると思うが、どうか。
(2)  契約の当事者である売主と買主が、売主が内装工事の発注者になるという契約を白紙にした場合、売買契約そのものが白紙になるというようなことはないか。
(3)  現在のところは、買主も媒介手数料を支払わないとは言っていないが、いずれそのような話が出た場合に備えて、何か別の名目で手数料がもらえる方法はないか。
回答
 
1. 結論
(1)  質問1.について — 法理論的には、内装込みの売買契約が成立した以上、その内装費込みの売買代金に対する3%プラス6万円を上限とする約定した媒介報酬が請求できるのであるが、本件の場合には、まだ内装工事の内容が最終的には固まっていないと考えられるので、取引を円滑に進めるためにも、当事者の意思を尊重し、変更契約を締結したうえで、別の名目で関与していくことが適当と考えられる。
(2)  質問2.について — 売買契約について、内装工事に関する請負契約の成立が停止条件になっているなど、特別な事情がない限り、売買契約そのものが白紙になるようなことはないと考えられる。
(3)  質問3.について — 媒介業者としては、内装工事に関する業者紹介を行うほか、設計や仕様についてのアドバイスやインテリアについてのコンサルを行うのであれば、「コンサルフィー」として受領することは可能と考えられる。
2. 理由
(1)について
 本件の売買契約は、売主が、内装工事の発注をし、工事を完成させたうえで買主に引き渡すという売買契約(一種の製作物供給契約の要素を含む売買契約)であるから、その工事の内容について、ある程度固まったものでないと、買主にとっては、どのような物件が引き渡されるのかがわからない(つまり、給付の内容がわからない)ということになる。
 したがって、1億2,000万円をベースに媒介手数料を請求するためには、本件の売買契約の締結時には、少なくとも買主が給付の内容がわかる程度に工事の内容(設計・仕様)が固まっているか、すでにその内容で工事の請負契約が締結されていることが必要であると考えられる。
(2)について
媒介業者の報酬請求権は、その媒介業者の媒介により売買契約が(有効に)成立した時に発生する。
 したがって、本件の売買契約においては、前記(1)で述べたように、建物本体の売買契約のほかに、内装工事の内容についての合意ないし請負契約が成立した時点で報酬請求権が生じるものと考えられるので、そのあとは、仮に内装工事についての合意や請負契約を当事者が解除したとしても、媒介業者の報酬請求権には影響しないので、1億2,000万円全額についての報酬請求ができると考えられる。
(3)について
(略)
 
監修者のコメント
 売買代金の決定に当たり、その内容にどのようなものを包含させるかは、本来当事者の合意で自由に決定できる。売主の行う内装工事費を売買代金に含ませることも、契約自由の原則の範囲内のことで、その金額が売買金額である以上、これを基準として媒介報酬を計算することも問題はない。ただ、媒介報酬の制限を潜脱するために、売買代金とは別の請負契約上の金額を合算して、売買の媒介報酬として計算し決定し、実質的に業法の上限を超える場合は、違法となると解される。

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