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売買事例 0802-B-0055
共同不法行為者(不真正連帯債務者)間の賠償金の求償

 汚染土地に関する重説不十分の責任をとった買主側媒介業者が、自らの判断で損害を賠償したあとに、本来の責任は売主側業者にあるとして、売主側媒介業者に求償することはできるか。

事実関係
(1)  当社は、準工業地域内にある土地の所有者から、その土地の売却の依頼を受けた媒介業者であるが、物件が準工業地域内にあるということから、この地域に強い地元業者に客付けを依頼した。
 そして、間もなく買客(従前の土地所有者(工場経営者)と同業者)も決まり、契約、決済・引渡しと順調に進んだが、その後、その土地は、以前に土壌汚染の調査をしたことがある土地であることがわかり、しかも、その調査結果が、汚染土地として土壌汚染対策法上の指定区域の「指定」まではされなかったが、かなり汚染度の高い土地であることがわかった。
(2)  にもかかわらず、その土地が汚染度の高い土地であることがわからなかったのは、約10年前に土地の所有者が建物(工場)を解体したのち、暫らく駐車場として利用しており、しかも、一旦その所有権が第三者に移っていたからである。しかし、反面、今回の買主側の業者が地元の業者ということからすれば、買主側の業者については、その土地の使用履歴からも、汚染についてはある程度推測がつく状況にあったといえなくもないという面もある。
(3)  そしてその後、買主は、当初は我々両業者に対し、契約の解除をするとか、損害賠償の請求をするとかといった構えを見せたが、買主側の業者が自らの判断で、媒介手数料の全額を買主に返還することにより、事なきを得た。
  
 その理由は、この土地はもともと準工業地域にある土地なので、「「指定」はないが、土壌汚染の可能性はある」ということだけは重説し、そのために、価格も買主が希望する価格まで下げていたからである。
  
 ところが、その後、買主側の業者は、当社に対し、今回の重説不十分による責任は、もともと売主側業者が行うべき調査を十分行っていなかったことから発生したものであるから、自分達(買主側業者)が買主に返還した媒介手数料の半分を支払えという請求をしてきた。
質問
1. この買主側業者の主張は、正しいか。
2. そもそも物件に関する調査義務は、売主側業者だけにあるのか。
3. この場合の両業者の責任分担は、どのようにするのが適当か。
4. 本件のように、一方の媒介業者が損害の賠償をした場合には、その賠償をした業者は、他の媒介業者に当然に求償することができるのか。
回答
 
1. 結論
(1)  質問1.について — 今回の重説不十分による責任が売主側業者にあるという主張は、必ずしも正しいとはいえないが、返還した媒介手数料の半額の請求については、妥当であると考えられる。ただし、「妥当である」という判断は、その賠償した額(媒介手数料相当額)が賠償額として妥当であった場合の話である。
(2)  質問2.について — 物件に関する調査義務は、買主との関係においては、両方の媒介業者にある。したがって、今回の重説不十分による責任が、売主側業者だけにあるかのような買主側業者の主張は、正しくない。
(3)  質問3.について — 質問1.の【回答】で述べたように、折半するのが適当であると考える。
(4)  質問4.について — 当然には求償できない。しかし、話し合いにより、あるいは訴訟で、応分の求償をすることは理論的には可能である。
 
2. 理由
(1)〜(3)ついて
 物件に関する調査義務は、買主との間においては、両業者にある。したがって、今回の買主側業者が、あたかも物件に関する調査義務は売主側業者にだけ(あるいは、そのほとんどの責任が売主側業者に)あるかのように主張しているが、この主張は正しくない。
 しかし、だからといって、売主側業者の調査義務が半分になるとか、減少するとかいうことではなく、いずれの業者も、共同して(重畳的に)それぞれ100%ずつの調査義務を負っていると解するのが正しい理解の仕方である。
 したがって、結果として、1. 結論(1)、(3)で述べたような両業者の責任が半分ずつになるというのは、本件の売主側業者としての責任の重さと、買主側業者の(地域に詳しい)地元の業者としての責任の重さが対象であるとも考えられることから、今回の買主が被った損害についての責任分担の仕方が50%ずつになるということであって、調査義務そのものが50%ずつであるということではない。
(4)について
 売主側媒介業者と買主側媒介業者は、共同して、買主に対し、問題のない物件が引渡されるよう「善良な管理者の注意」をもって業務を処理しなければならない(民法第644条、第656条)。

 しかし、媒介業者の一方または双方がその義務に違反し、問題のある物件が引渡された場合には、両媒介業者は、媒介契約上の「債務不履行」あるいは「不法行為」として、共同してその責任を負わなければならない(民法第415条、第709条、第719条)。このような場合の両媒介業者の責任関係を、「不真正連帯債務」の関係という。

 この「不真正連帯債務」の関係においては、もともと両債務者(媒介業者)間に緊密な関係がないために、通常の連帯債務者間にあるような内部負担関係もなく、求償関係も生じない(通説、判例)。しかし、この不真正連帯債務について、実質的に求償権を否定する学説もなく、判例も求償を認めているので、本件の場合において、連帯債務者(媒介業者)間で、話し合いのうえ、求償していくか、信義則等を根拠に訴えを提起して、応分の求償をしていくことは理論的には可能と考えられる。
 よって、本件のケースにおいては、1. 結論(1)(3)で述べたような話し合いによる求償が適当と考える。
 
参照条文
 
○  民法第644条(受任者の注意義務)
 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
○  民法第656条(準委任)
 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
○  民法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。(以下(略))
○  民法第709条(不法行為による損害賠償)
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
○  民法第719条(共同不法行為者の責任)
(1) 数人の共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自連帯してその損害を賠償する責任を負う。(以下(略))
(2) (略)
 
監修者のコメント
 本事案の判断は、微妙である。買主側の業者が、重説不十分の責任をとったというが、買主側業者が汚染されている土地であることを知りながら、その旨の説明をしなかったというのであればともかく、土壌汚染対策法の「指定区域」ではないが、土壌汚染の可能性があると説明し、しかも、そのために価格も買主が希望する価格まで下げていた、というのであるから、そもそも、本事案に「隠れた」瑕疵があるといえるかも問題である。
 共同媒介の場合の責任分担は、両業者の立場、調査の程度、買主の購入目的の知・不知その他の諸要素を総合勘案してケースごとに判断せざるを得ない。

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