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売買事例 0712-B-0048
「売渡担保」で所有権が移転した物件を売却する場合の媒介方法

第三者の抵当権が付いたまま所有権が移転している物件の売却を媒介しても、問題ないか。

事実関係
 当社は媒介業者であるが、このたびある業者から、売却物件の客付依頼を受けた。ところが、その物件の登記記録をよく見てみると、売主(所有権の登記名義人)は法人で、その売主に登記原因が「売買」で所有権移転登記がなされているにもかかわらず、乙区の方には、従前の所有者が債務者となっている抵当権が付いたままになっている。
 なお、売主は金融関係の会社のようであり、抵当権者も売主と同じような名称の会社になっているが、入居者は、前所有者のままである。
質問
1. このような物件を媒介しても、問題ないか。
2. もし媒介するとした場合、どのような点に注意して媒介したらよいか。
回答
 
1. 結論
(1) 質問1.について

売買代金で抵当権が抹消できるのであれば、原則として、問題はない。

(2) 質問2.について

 この物件は、売主が、いわゆる「売渡担保」(一種の「譲渡担保」)で所有権を取得したものと考えられる。そのために、登記原因が「譲渡担保」ではなく、「売買」となっていると考えられる。
 しかし、登記原因が「売買」になっているといっても、実質的には「清算」(注)を必要とする(狭義の)「譲渡担保」であるということも十分考えられるので(後出:【参考資料】参照)、売主への所有権移転登記の経緯について、売主や抵当権者、従前の所有者(債務者)に当時の関係書類(金銭消費貸借契約書、売買契約書など)を見せてもらい、十分ヒアリングをしたうえで、弁護士等の法律の専門家に相談し、清算を必要とするものであるかどうか等を判断してもらうことが必要である。また、その際、債務者の言動などから、立退き問題などでスムーズな取引ができないと判断されたときは、思い切って媒介を断る勇気も必要である。
 一方、媒介が可能であると判断される場合であっても、事前査定の段階で、債権割れの可能性があるときは、あらかじめ売主および抵当権者から、その場合でも、(たとえば、未回収債権を放棄してでも)取引を完結させるという一札をとったうえで媒介活動に入るだけの慎重さが必要である。

(注)「清算」とは、被担保債権額と目的物価額との差額清算のことである。

 
参考資料
 
○  譲渡担保と売渡担保について
(1)  譲渡担保は判例で認められた担保物権で、次の2つの類型がある。
 1つは、金を借りる者が自分の所有物を貸主に売り、その代金支払の形で融資がなされ、所有権を完全に貸主に移転したうえで、これを賃借し、一定の期間内に、一定の売買代金で買い戻せるという約束(買戻し特約、再売買の予約)をする場合である。
 もう1つは、金を借りるための金銭消費貸借契約を結び、その債務の担保のために、借主がその所有物を貸主に譲渡し、借主がそれを無償で使用し、一定の期間内に借金を返せば、所有権が戻るという場合である。
 前者の場合は、売渡担保(売渡抵当)、後者の場合は狭義の譲渡担保(譲渡抵当)と呼ばれている。
(2)  前者の場合は、当事者間に金銭消費貸借契約が残らず、目的物の所有権は完全に移転するが、後者の場合は、当事者間に金銭消費貸借契約が成立し、目的物の所有権は貸主に移転する形をとるが、その移転は担保目的の移転であるので、債権者がその目的物を他人に売れば、所有権はその他人に移転するが、債権者の行為は債務者に対する義務違反となる。
 なお、狭義の譲渡担保の場合には、債務者が債務を弁済しない場合の債権者の優先弁済の受け方について、清算型と流担保型の2つがあるが、現在では、判例により、いずれも清算型として取扱うことになっている(最判昭和46年3月25日民集25巻2号208頁)。
 
監修者のコメント
 本ケースのような場合、抵当権の抹消が抵当権者との調整で確実であるとしても、重要事項説明書には、説明時点における登記簿の登記記録の内容を記載して説明することが必要である(宅地建物取引業法第35条第1項第1号)。
 また、占有の関係で占有者の言を軽信しないで、成立した合意を必ず書面で交わしておくことも肝要と思われる。

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