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売買事例 0712-B-0047
近接建物に対する「目隠し」設置請求の条件

隣地に建築中の家は、境界線から約60cmしか離れていない。そのため、その家の窓から自分の家の居間や居室がのぞかれる。どのような対応ができるか。

事実関係
 このたび、以前に当社の媒介により土地を購入した人から、次のような申し入れがなされた。
1.  自分はすでに家を建てて住んでいるが、隣りの人も最近、家を建て始めた。
2.  ところが、隣りの人は、自分の家の居間や2階の居室がのぞけるところに窓をつくっている。
3.  その窓は、曇りガラスをはめ込んだサッシであるが、開閉のできる構造のものである。
4.  しかも、その窓と自分の家の敷地境界までの距離は、約60cmしか離れていない。
5.  以上の現況を図で表わすと、次のとおりであるが、このような行為は法的に問題があるのではないか。
 当社としては、本件の問題が当社の責任によって起きたものではないので、最終的には弁護士に相談するよう回答するつもりであるが、お客様からの申し入れでもあるので、何らかのアドバイスをしてあげたい。
質問
1.  上記の図中に、法的に問題となるような窓はあるのか。あるとした場合、どのような請求ができるのか。
2.  建築工事を止めさせることはできないのか。
回答
 
2. 結論
(1) 質問1.について

 問題となるような窓は、窓&#9398&#3642と窓&#9400&#3642である。請求の内容としては、「目隠し」(注)の設置請求が考えられる(民法第235条)。ただし、窓&#9398&#3642については、自分の家のベランダのはめ板等によって、また、窓&#9400&#3642については、境界線上のフェンスによって、それぞれ事実上の目隠しになっているのであれば、話は別である。
 なお、窓&#9399&#3642については、その位置が床から2m以上の高さのところにあるので、問題となることはないと考えられる。

(1) 質問2.について

 本件のようなケースの場合は、工事の差止め請求までは難しいと考えられる。

(注) 「目隠し」の構造については明確な判例はないが、材質については、不透明な塩化ビニール板やアクリル樹脂製波板などが相当であるとしたものがある(東京高判昭和59年3月28日判時1116号61頁、大阪高判昭和42年9月18日判時512号54頁、東京地判平成5年3月5日判タ844号178頁)。
2. 理由
(1) について

 民法の規定によれば、「境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。」とされている(第235条第1項)。そして、その境界線からの距離は、「窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。」と定められている(同条第2項)。
 つまり、本件の建物の窓の&#9398&#3642と&#9400&#3642は、いずれも「他人の宅地を見通す」ことが可能なもので、かつ、「境界線から1m未満」の距離にあるが、窓&#9399&#3642だけは、その位置が床面から約2mの高さのところに設置されているので、一般人の身長からすれば、「他人の宅地を見通す」ことができないと考えられる。(高さ約2mの距離にある浴室の換気扇が本条の窓にあたらないとされたケースとして、東京地判昭和56年12月25日判時1044号388頁)
 なお、「他人の宅地」というのは、現に他人がそこで「私生活」を営んでいる土地のことをいうとされており、単なる作業場所や事務所の場合には、これに該当しないと解されている(東京高判平成5年5月31日判時1464号62頁)。 また、「見通すことのできる窓又は縁側」とは、他人の宅地を見通すために設置されたというのではなく、見通そうと思えば物理的にいつでも見通すことのできる位置、構造のものをいうとされており、したがって、曇りガラスの窓がはめ殺しになっているのであれば、当然見通すことはできないが、(本件の窓のように)開閉が可能なものであれば、たとえ、曇りガラスであっても、見通すことができるということになる(東京地判昭和56年12月25日判時1044号388頁)。

(2) について

 本件のような一戸建のケースとは別に、アパートやマンションの建設工事などにおいて、いわゆる「のぞき見」といったプライバシーの侵害の可能性が高いようなケースの場合に、仮処分命令によって目隠しの設置が義務付けられたもの(東京地裁八王子支決昭和51年11月24日判タ352号250頁)や、そののぞき見の危険性のほかに、家族の被る心理的圧迫感が大きく、精神的苦痛が受忍限度を超えるようなケースの場合に、建築工事の一部差止めが認められたもの(仙台地決昭和55年1月25日判時973号115頁。神戸地裁伊丹支判昭和45年2月5日判時592号41頁。東京地決昭和47年11月11日判時684号22頁)があるが、一般の一戸建住宅の場合には、隣人同士という関係上、「のぞき見」の危険性が少ないと考えられるし、また、本件の場合はすでに窓の取付け工事も終っているので、工事の差止めまでが認められる可能性は少ないと考えられる。

監修者のコメント
 「他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側」とは、その窓等から他人の宅地を見ることが物理的に可能である位置、構造を有する窓であるから、【回答】のように、高さ2mの窓はこれに含まれないと考えてよいが、問題となるのは、本ケースのような居室の窓のみではなく、階段や洗面所に通風や採光のために設けられた窓も含まれる(京都地判昭和42年12月5日判時506号26頁)。
 なお、「境界線から1m未満」かどうかは、次の図の&#9398&#3642の距離であって、&#9399&#3642の距離ではないので注意されたい(同条第2項)。また、その地域に異なる慣習があれば、その慣習が優先する(民法第236条)。

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