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売買事例 1412-B-0190掲載日:2014年12月
タウンハウス(木造マンション)の戸別建替え法と区分所有法
敷地が共有で建物が区分所有になっているタウンハウス(テラスハウス)を、住戸別に建て替えていく方法はあるか。
このような木造のタウンハウスは、「マンション」といえるか。区分所有法との関係はどうなっているか。
事実関係
当社は、媒介業者であるが、当社の営業エリアにはかなりの築年数が経ったタウンハウス(別名:テラスハウス)が数多く存在する。そのため、その入居者から、自分の住戸だけを建替えたいとか、売りたいが建て替えができるかといった相談がくるが、今回相談にきたタウンハウスは、下図のような連棟住宅で、敷地は共有で建物が区分所有になっている物件である。 |
質 問
1. | このような物件の場合、一度に全部を建て替えるのではなく、入居者(区分所有者)の話し合いで、順次資金面に都合が付いた人から建て替えていくようにする方法はあるか。 | |
2. | 役所の人は、このタウンハウスは「マンション」のようなものだからと言っていたが、木造でも「マンション」といえるのではないか。 |
回 答
1. | 結 論 | |
⑴ | 質問1.について ― 現在の住戸をそれぞれ独立した「戸建住宅」として建て替えるというのでなければ、1つの方法としては、現在の1棟の建物の一部(当該建替え住戸)を「改築(注)」あるいは一旦解体したあとの「減築 → 増築」という方法によって、建築確認を取得したうえで事実上の建て替えを行うという方法が考えられる(建築基準法第6条第1項・第2項)。要は、建替え希望者がどのような手順でどのような工事をしたいのかによって手続や方法が異なり、その際の住戸の間仕切壁や外壁の所有権が共有であるか単独であるかは問わない。 ただ、建替え希望者がどうしても「一戸建て」のような独立した建物として建て替えたいというのであれば、たとえばこの物件が下図のような接道要件を満たせば、全戸についていつでも戸別に建て替えが可能となるが、専用庭からの敷地延長による接道部分が1か所しかとれず、かつ、玄関通路部分の幅員が2m未満の場合には、建替えの時期を住戸によって分け、たとえばC住戸を先に建て替え、あとからAB住戸を一緒に建て替えるとか、A住戸を先に建て替え、その際に玄関通路部分の幅員を2mに拡幅したうえでB住戸を建て替えるというような方法をとることになろう。ただし、そのためには、少なくともそれぞれの住戸について、当該市区町村の宅地細分化防止条例等に定められた敷地面積要件を満たす必要がある。 |
(注) | 「改築」とは、建築基準法に定義規定はないが、一般に「既存建築物の全部または一部を取り壊し、既存の建築物とその用途、構造、規模がほぼ変わらない建築物を建築すること。」と解されている。 |
⑵ | 質問2.について ― そのとおり。木造であっても、そのタウンハウスが構造上独立した住戸部分を有する区分建物として登記されている以上、「マンション」といえる(マンションの管理の適正化の推進に関する法律第2条第1号)。 | ||
2. | 理 由 | ||
⑴ついて 本件のタウンハウスは、敷地が共有で建物が区分所有になっている物件であるから、現状のような連棟住宅のままで各住戸を建て替えるというのであれば、【回答】の結論⑴の前段で述べたようないくつかの方法があり、いずれも事実上の建て替えが可能になると考えられるが、建て替え希望者がどうしても独立した「一戸建て」のようなかたちで建て替えをしたいというのであれば、結論⑴の後段で述べたような方法でしか建て替えることができないと考えられる。なぜならば、土地に建物を建てるためには「1敷地1建築物」の原則を守らなければならないからであり(建築基準法施行令第1条第1号)、したがって、本件のような区分建物を住戸ごとに戸建て住宅として建て替えるには、その区分建物の敷地になっている土地を分割しなければならず、そのうえ、その分割された土地が、建築基準法に定められた接道要件を満たしていなければならないし(建築基準法第43条第1項)、更に、その土地について当該土地の存する市区町村が定める宅地細分化防止条例等がある場合には、その面積要件も満たしていなければならないからである(建築基準法第53条の2)。 |
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⑵ついて マンションの定義については結論で述べたとおりであるが、このような小規模な区分建物の場合には、一般のマンションのように管理規約を定めたり管理者を置くことは少ないが、法的には規模の大小にかかわらず規約を定めたり管理者を置くことができるのであるから(建物の区分所有等に関する法律第3条)、これを機会に、土地建物の権利関係を変更するのか、それとも元のように「1敷地1建築物」の形態に再度変更するのか、この際に管理規約や管理者を定めるようにするのか等、専門家を交えてよく話し合うことが必要であろう。 |
参照条文
○ | 建築基準法第6条(建築物の建築等に関する申請及び確認) | |
① | 建築主は、第1号から第3号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第1号から第3号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第4号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。(以下略) | |
② | 前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が10平方メートル以内であるときについては、適用しない。 | |
③ | ~⑮ (略) |
○ | 同法第43条(敷地等と道路との関係) | |
① | 建築物の敷地は、道路(中略)に2メートル以上接しなければならない。ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。 | |
② | (略) | |
○ | 同法第53条の2(建築物の敷地面積) | |
① | 建築物の敷地面積は、用途地域に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められたときは、当該面積以上でなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の敷地については、この限りでない。 一~四 (略) |
|
② | ~④ (略) | |
○ | 同法施行令第1条(用語の定義) | |
この政令において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 | ||
一 | 敷地 一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地をいう。 | |
二 | ~六 (略) | |
○ | マンションの管理の適正化の推進に関する法律第2条(定義) | |
この政令において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 | ||
一 | マンション 次に掲げるものをいう。 | |
イ 二以上の区分所有者(中略)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分 | ||
(中略)のあるもの並びにその敷地及び付属施設 | ||
ロ (略) | ||
二 | ~九 (略) | |
○ | 建物の区分所有等に関する法律第1条(建物の区分所有) | |
一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。 | ||
○ | 同法第3条(区分所有者の団体) | |
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。(以下、略) |
監修者のコメント
マンション管理適正化法が制定されるまでは、法律上、マンションの定義はなく、建物区分所有法の対象である区分建物のうち「住居」の用途のものを、俗に「マンション」と呼んでいたにすぎない。また、事例は多くはないが、木造建物でも、区分所有法の対象となる。
本件の建替えは、一棟の建物の区分所有関係を維持する方法すなわち改築の手法を採るほうが、各戸それぞれが土地の利用に制約を受けないという意味で、独立した建物にするよりメリットが大きいと思われる。
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