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賃貸事例 1412-R-0142
賃貸借における遅延損害金の利率の根拠いかん

 賃貸借における遅延損害金の利率はすべて一律か、それとも賃貸借の目的物や貸し方によって異なるのか。その根拠はどこにあるのか。

事実関係

 当社は賃貸借の管理も行っている宅建業者であるが、先日ある地主からの相談で、「不動産の賃貸で、賃料の不払いがあったときの金利は何%を請求することができるのか」という質問があった。
 ところが、その地主は同じ賃貸でも、アパートから駐車場、資材置場、畑なども他人に貸しているので、すべてが同じなのかどうかわからなかったし、そもそも金利が請求できるという根拠もわからなかったので、「あとで調べる」と言って帰ってきた。

質 問

1.  そもそも賃貸借で、借主が賃料を支払わなかったときは金利が請求できるという根拠はあるのか。あるとすれば、それはどこになるのか。
2.  仮に金利が請求できるとして、その金利はすべてが一律なのか、それとも賃貸借の目的物や貸し方によって異なるのか。異なるとすれば、それはどのように異なるのか。
3.  上記の金利というのは、当事者が自由に決められるのか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 金利が請求できるという根拠は、民法第419条の規定(金銭債務の特則)が基本になっている。
 質問2.について ― その際の金利は、賃貸借の目的物というより、貸し方によって異なる。たとえば、貸主がその賃貸借を業として行うのか、それともそれ以外の目的で行うのかによって異なると解される。
 質問3.について ― 強行規定に抵触しない限り、自由に決められる(民法第419条第1項ただし書き)。
2.  理 由
⑴~⑶について
 賃貸借における賃料の支払債務は金銭債務であるから、その債務不履行の場合には、損害賠償として、借主は貸主に対しその不払額に年5%の法定利率による利息を付して支払わなければならない(民法第415条、第419条、第404条)。この利息のことを、一般に遅延損害金または遅延利息と呼んでいる。
 なお、この民法の法定利率の規定は任意規定であるから、その利率については強行法規に反しない限り、当事者が自由に定めることができるが、その場合、特に貸主が「事業者」(一般に、アパートの貸主は「事業者」になる。)で借主が「消費者」である場合の遅延損害金が年14.6%の利率を超えるものである場合には、その超える部分が無効とされるという点に注意が必要であるとともに(消費者契約法第9条第2号)、貸主が賃貸借を「商行為」として行う場合の法定利率については年6%(商事法定利率)になる点に注意が必要となろう(商法第3条、第502条第1号、第514条)。

参照条文

 民法第404条(法定利率)
 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする。
 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。(略)
 民法第419条(金銭債務の特則)
 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
、③ (略)
 商法第3条(一方的商行為)
 当事者の一方のために商行為となる行為については、本法を双方に適用する。
(略)
 商法第502条(営業的商行為)
 次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。(略)
 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為
~十二(略)
 商法第514条(商事法定利率)
 商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年6分とする。
 消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
 (略)
 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(中略)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

監修者のコメント

 不動産賃貸借の契約書に遅延損害金の約定をすることは、意外に多くはない。信頼関係を基礎とする継続的契約である賃貸借において、そのような定めを明記することには、協調・信頼を重視するわが国民性からは違和感を覚えるからかも知れない。
 しかし、何も定めなければ、回答のとおり、年5%又は6%程度であって滞納に対するプレッシャーにならない。事情にもよるが、滞納に対する心理的抑止効果を考慮するのであれば、もう少し高い約定利率を定めるのも一つの方法である。

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