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賃貸事例 1410-R-0140
ペット飼育禁止特約がない場合のペット飼育トラブルの対応

 賃貸物件の入居者が、ペットの飼育禁止特約がないことを理由に、無断で猫を飼った。そのため、更新契約が締結されず、今日に至っている。このような場合、契約は更新されないのか、それとも法定更新されるのか。
 借主は、ペットの飼育禁止特約がない以上、ペットを飼う権利があると主張し、貸主は、入居条件の変更だから貸主の承諾が必要だと主張している。どちらの主張が正しいか。
 借地借家法第26条第1項の規定によれば、貸主が更新を拒絶するには、期間の満了1年前から6か月前までの間に借主に対し更新しない旨の通知をするように定められているが、本件の場合にも適用されるのか。

事実関係

 当社は賃貸管理業者兼媒介業者であるが、このたび当社が管理をしている賃貸アパートで、借主が、ペットの飼育禁止特約がないことを理由に、貸主に無断で猫を飼った。ところが、そのことを知った貸主が、猫の飼育をやめなければ賃貸借契約を更新しないと言ったため、更新契約が締結されず、今日に至っている。

質問

1.  このような場合、契約は更新されないことになるのか、それとも法定更新されるのか。
2.  借主は、「ペットの飼育を禁止する特約がないのだから、借主には当然猫を飼う権利があるはずだ」と主張し、貸主は、「ペット飼育の禁止特約がなくても、入居条件の変更になるので、当然貸主の承諾が必要である」と主張している。この両者の主張は、いずれが正しいか。もし本件のペットが猫ではなく、犬であったらどうか。
3.  本件の場合、借地借家法第26条第1項の規定によれば、貸主が契約の更新を拒絶するには、「期間の満了1年前から6か月前までの間に、借主に対して猫の飼育をやめなければ契約を更新しない」と通知する必要があったのではないかと考えられるが、その考え方は正しいか。

回答

1.  結 論
 質問1.について ― 法定更新される。
 質問2.について ― どちらの主張が正しいかは、上記【事実関係】からだけでは判断できない。これはペットが犬であっても、同じである。したがって、賃貸管理業者としてはどちらが正しいかというよりも、当事者の話をよく聞いて、ペットの飼い方や建物を明け渡す際の原状回復の仕方、その費用分担の方法等についての取り決めをしておくことの方が重要であろう。
 質問3.について ― 猫の飼い方いかんにもよるが、原則として正しくない。

2.  理 由
⑶について
 本件の賃貸借契約は期間の定めがある契約であるから、確かに質問3.にあるように、貸主が契約の更新を拒絶するには、その期間の満了1年前から6か月前までの間に、借主に対し更新をしない旨の通知または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をする必要があると借地借家法は規定している(同法第26条第1項)。
 しかし、貸主から契約の更新を拒絶するには、更新を拒絶することができるだけの「正当事由」が必要であり(同法第28条)、その「正当事由」に関する第28条の規定を見ると、本件のペットを飼ったという事実自体が「正当事由」の根拠になり得ないことは明らかであるが、しかし、ペットの飼い方について何度注意しても守らないというような事実があれば別なので、本件のようなケースの場合には、原則としてこの第26条第1項の規定は適用されないということになり、あとは、そのペットの問題が賃貸借契約上の借主の債務不履行の問題として、貸主が賃貸借契約を解除することができるかどうかという問題として判断されることになると解される。
 ただ、そうは言っても、その契約解除ができるか否かの判断は容易ではなく、ケースバイケースで判断されることになると解されるので、当事者が期間の満了までに話し合いによって解決できなければ、当事者の合意による契約の更新ができないわけであるから、契約は、同法第26条第1項本文およびそのただし書きの規定に基づき期間の定めのない賃貸借契約として法定更新されることになるからである。
について
 ペットの問題は、ペットの種類とその飼い方によって結論が異なると解される。したがって、猫の場合にはそれほど大きな問題にはならないと考えがちであるが、それでも血統書付きの猫を増やしたり、何匹もの猫を飼って室内を汚したり、キズ付けたり、フン尿の始末をキチンとしないというような飼い方をすれば、いかに猫といえども権利の濫用として信頼関係が破壊されたとみることができるであろうし、賃貸借契約上の債務不履行として契約解除や損害賠償請求といった問題に発展することになるので、そのようなことにならないように、ペットの飼い方などについての事前のルールづくりをしておくことの方が重要であると考えられるからである。

参照条文

 借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等)
 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
  、③(略)
 同法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

監修者のコメント

 本件の最も主要な争点は、そのアパートにおいてペットを飼うことができるのかどうかである。ペット飼育の禁止特約が明文で定められていない場合でも、暗黙の了解(黙示の特約)ということもあり得るからである。ただ、そのことが争われた場合、現在賃貸マンションでも賃貸アパートでもペット飼育を禁ずる場合は、その旨を明文化するのが一般的であるので、それが定められていなかったので、飼えると思って借りたという借主の主張は、一定の説得力をもつと解される。別の言い方をすれば、貸主の「入居条件の変更だ」という主張は、必ずしも当然とはいえない。
 この賃貸借契約が、媒介業者により成立したものであれば、紛争可能性のある契約条項のまま成約させたという意味で、その責任の問題にもつながる可能性がある。

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