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売買事例 0707-B-0025
駐車利用を目的とする「地役権」

マンション用地の買収にあたり、やむなく敷地の一部を隣地所有者の駐車スペースに利用させるが、その際に設定する権利を「地役権」とすることができるか。

事実関係
 当社は、左図のA・B・C3つの土地をマンション用地として買収したいが、B地の所有者が法外な条件を提示するため、B地を買収しないで、A・C両地だけで事業を行うこととした。
 そして、B地の所有者に、B地の斜線部分(敷地延長部分)とA地の上方点線部分(幅員2m分)とを等価で交換したいと申し出たところ、その下方点線部分(幅員2m分)に「地役権」を設定し、B地の駐車スペースとして使用できるように、通路の舗装と門扉を設置することが条件だと言ってきた。
質問
 できれば「地役権」(物権)の設定は避けたいが、そもそも駐車のための「地役権」というのはあるのか。もし、「地役権」の設定ができない場合は、どのような権利設定が適当か。
回答
1.結論
 駐車のための「地役権」というのはない(民法第280条)。したがって、本件の場合は、「賃借権」の設定が適当と考えられる。
2.理由
(1)  「地役権」は、自己の土地の便益のために、他人の土地を利用できる権利であって(民法第280条)、特定の人のために他人の土地を利用する権利ではない。したがって、「駐車のため」という個人的便益のために「地役権」を設定することはできない。
(2)  また、A地の斜線部分に「通行地役権」を設定することはできるが、通行には「駐車」は含まれないので(注)、専ら「駐車」のための権利ということになれば、「賃借権」を設定するのが適当である。
 なぜなら、「賃借権」は、登記をすることもできるし(不動産登記法第3条第8号)、「地役権」と異なり(注)、賃借人だけの独占的利用を認める権利だからである。
(注1) 「駐車」をするということは、仮に通路に残余幅があったとしても、当該駐車用の通路を独占的に使用することにほかならないからである(【参考判例】参照)。
(注2) 「地役権」の場合は、地役権の設定者である「役地」の所有者も、その「役地」を利用することができる権利だからである。
(3)  なお、本件の場合、賃借権を設定し登記をするとなると、将来その敷地の所有者である区分所有者(管理組合)との間で、賃貸借の期間や賃料の支払等についての権利義務の承継を行うことになるので、その点についてあらかじめデベロッパーとの間で適切な取り決めをし、区分所有者(管理組合)に承継させることを売買契約書なり、管理規約等に定めておくことが適当である。
参照条文
○ 民法第280条(地役権の内容)
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。(以下(略))
 
参照判例
○ 最判平成17年3月29日判時1895年56頁(要旨)
車両を通路土地に恒常的に駐車させる行為は、通路の残余の幅が3m余りあったとしても、土地の一部を独占的にしようとしている以上、通行の目的で通路土地全体を自由に使用できるという内容を有する地役権の侵害となり、地役権者は、地役権に基づく妨害排除請求権あるいは妨害予防請求権に基づいて駐車による通行の妨害の禁止を請求できる。
 
監修者のコメント
 現在、登記されている地役権で最も多い地役権の便益目的は、電線路敷設のための地役権であるが、これも電気事業者が自己の有する発電所、変電所の用地のために他人の土地を電線路として承役地とするものである。自動車の通行のための地役権はあり得るが、単なる「駐車」のためであれば、土地の便益とはいえない。
地役権は「物権」であるから、当事者間の合意で自由にその内容を決めることはできない(物権法定主義)。

より詳しく学ぶための関連リンク

・“スコア”テキスト丸ごと公開!「管理規約」

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