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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 1408-R-0137
借地人の借地の返還に伴う諸問題

 当社は、借地人から借地の返還に関する相談を受けたが、その場合の対応として、借地人が貸主に対し、①借地権の買い上げを請求することができるか、②借地上の建物の買い上げはどうか、③借地上の建物の買い上げを請求する場合、話がまとまるまでの間の借地契約はどうなるか、④借地上の建物の買い上げを請求したが、貸主が代金を支払わなかったら、その買い上げのための契約はどうなるか。

事実関係

 当社は不動産の媒介業者兼管理業者であるが、このたびある借地人から、借地の返還に関する相談を受けた。
 話を聞くと、貸主は借地契約を更新してもよいと考えているのだが、借地人の方が、その土地でいくら商売をしても儲からないので、この際土地を返還したいと考えているというのである。
 そこで当社は、当初、第三者への借地権付建物の譲渡を考えたが、その土地ではいくら広告をしても、買い手が見つからないだろうと思われたので、この際貸主(地主)に借地権を買い取ってもらうか、借地上の建物を買い取ってもらうことを考えた。しかし、そのようなことができるのか、その場合の権利関係がどうなるのかなどよくわからないことが多いので、まずはその点をはっきりさせたうえで、次の対応をとりたいと考えている。

質問

1.  借地人には、貸主(地主)に対し借地権を買い上げてもらう権利があるか。
2.  借地借家法によれば、借地人には貸主に対する「建物買取請求権」があるとされているが(同法第13条)、それはどのような権利か。
3.  借地人が「建物買取請求権」を行使するまでの間、借地契約はどうなるか。
4.  借地人が「建物買取請求権」を行使したが、貸主が代金を支払わなかったときは、その建物の買取り契約はどうなるか。

回答

1.  結 論
 質問1.について ― 借地人には、貸主(地主)に対し借地権を買い上げてもらう権利はない。しかし、当事者の話し合いの中で、貸主には、借主に対し土地の明渡しを求める「正当の事由」がないということで、貸主が借主に対し「立退料」を支払うということであれば、その支払いをもって、事実上の借地権の買い上げがなされたといえるケースも出てくるであろう。
 質問2.について ― 借地人の「建物買取請求権」は、借地契約が満了したにもかかわらず、当事者間に契約の更新がない場合に生ずる権利とされているので(借地借家法第13条第1項)、まさしく本件のように借主が更新を希望しない場合に生じるものと考えられる。そして、その「建物買取請求権」は「形成権(注)」とされているので、借地人が貸主に対し建物の買取りを請求した時に売買契約が成立したと同一の法律効果が生ずるとされている(後記【参照判例①】参照)。
 (注) 「形成権」「とは、権利者の一方的な権利行使によって、現存する権利関係に一定の変更を生じさせることを作用とする権利のことである。「形成権」とされている権利の中には、本件の建物買取請求権のほかに、解除権や取消権、相殺権などがある。
 なお、この場合の貸主の買取り価格は、建物の「時価」とされており、その時価には借地権の価格は含まれないとされている(後記【参照判例②】参照)。
 質問3.について ― 「建物買取請求権」は、当事者間に契約の更新がない場合に生じる権利であるから、本件のようなケースの場合には、借地契約は存続していないと考えられるが、借地権者が更新を請求したにもかかわらず、貸主が更新を拒絶し、後日「正当事由」が認められた場合などでは、その「正当事由」が認められるまでの間は、契約は継続していると解される。
 問4.について ― 借地権者の「建物買取請求権」の行使により、建物の売買契約はすでに成立していることになるので、代金を支払わない以上、買主(貸主)の債務不履行になる。しかし、買主の売買代金の支払いと売主の建物の引渡しとは同時履行の関係に立つとされているので(後記【参照判例①】)、売買代金の額やその支払条件等については、事前に当事者でよく話し合っておくべきである。
   

参照条文

 借地借家法第13条(建物買取請求権)
 借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
、③ (略)

参照判例①

 大判昭和7年1月26日民集11巻169頁(要旨)
 借地法10条の買取請求権が行使されたときは、当事者間に地上物件につき時価による売買契約が成立したと同一の効果を生じ、当事者は互いに同時履行の抗弁権を有する。

参照判例②

 最判昭和35年12月20日民集14巻14号3130頁(要旨)
 借地法10条にいう建物の時価とは、建物を取り壊した場合の動産としての価格ではなく、建物が現存するままの状態における価格であって、借地権の価格は加算すべきではないが、建物の存在する場所的環境を考慮して算定すべきものである。

監修者のコメント

 建物買取請求権を行使できるのは、借地契約の期間が満了した時であるので、建物自体の価値は微々たるもので、現実にはあまり経済的利益はない。それに比べ、借地権の価格は、土地の更地価格の何割というものであるから、相応の経済的価値があるが、借地人の側から買い取りを要求はできない。したがって、どうしても借地権の価値も確保したければ、借地権の譲受人を探すしかない。それでも駄目であれば、諦めるか、更新して時期を待つしかない。

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