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売買事例 0706-B-0018
抵当権(私債権)と国税等(公債権)との優劣

不動産の競売や任意売却の際に、抵当権(私債権)と国税等(公債権)とは、どちらが優先するのか。

事実関係
   当社は、ある競売物件を取得したいと考えているが、その物件の登記簿を見ると、抵当権の実行による競売開始決定の登記の前に税金の差押えの登記がなされている。
質問
  1. このような物件の場合、競売における配当面で、どちらの債権が優先するのか。
  2. もし、このような物件を任意売却で取得する場合も、同じように考えてよいか。
回答
  1.結論
 
(1) 質問1.について
 抵当権の被担保債権の方が租税債権に優先する(国税徴収法第16条、地方税法第14条の10)。
  (2) 質問2.について
 (最終的には競売で取得するという腹づもりならば)基本的には同じであるが、あくまでも話し合いにより、任意売却で取得するとなると、租税債権の差押えの方が先でもあり、特に配当余力がないような物件の場合には、必ずしも同じようにはいかないと考えた方がよい。
 
2.理由
 
(1) について
 一般に、租税(国税、地方税)には一般的優先徴収権があり、納税者の総財産について、原則としてすべての公課(注)その他の債権に先立って徴収することになっている(国税徴収法第8条、地方税法第14条)。
(注) 「公課」とは、国税および地方税以外の国民健康保険料などの公法上の債権で、滞納処分の例により徴収することができるものである(国税徴収法第2条第5号、地方税法第14条かっこ書前段)。この「公課」の徴収も私債権に優先し、租税と同様に扱われる。

 しかし、租税公課と抵当権や質権など(以下「抵当権等」という。)の被担保債権との優劣については、抵当権等が租税公課の法定納期限等以前(注1)に設定(注2)されたものであるときは、租税公課優先の原則の例外として、抵当権等の被担保債権が租税公課に優先することになっている(抵当権については国税徴収法第16条、地方税法第14条の10、質権については国税徴収法第15条、地方税法第14条の9、仮登記担保権については国税徴収法第23条、地方税法第14条の17)。
(注1) 「以前」に設定されたものであるということは、その日を含むことになるので、その法定納期限等と抵当権等の設定登記日が同一の場合も、抵当権等の被担保債権が優先することになる。
(注2) 「設定」とは、設定登記のことであると解されている(国税徴収法基本通達第15条関係30)。

 なお、抵当権等の被担保債権と公租公課との優劣を決める時期を、原則として法定納期限としたのは、「法定納期限(注)」としておけば、納税者と取引する第三者がその公租公課の発生について事前に予測することが可能だからである。
(注) 「法定納期限」とは、租税公課を納付すべき本来の期限のことである。
  (2) について
 租税債権の差押えについては、国税徴収法に「差し押えることができる財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額をこえる見込がないときは、その財産は、差し押えることができない」(同法第48条第2項)と定められている。この規定を「無益な差押えの禁止条項」という。
 しかし、差押えの実務においては、抵当権の被担保債権額の正確な現在高(いわゆる「残債」)を調査したり、物件の評価額を厳密に算出するとなると相当の日数を要し、差押えの時期を失する等の事情から、ほぼ全面的に税務当局の差押えの有効性が認められている。したがって、一見「無益な差押え」のように見えても、(何がしかの負担を覚悟しない限り)必ずしも当局は差押えを解除してはくれないということも知っておく必要がある。
 なお、国税徴収法第79条第1項第2号は「差押財産の価額がその差押に係る滞納処分費及び差押に係る国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の合計額をこえる見込がなくなったときは、差押えを解除しなければならない」と定めている。
 つまり、無益な差押え状態に至ったときは、差押えを解除しなければならないと定めており、その判断については、税務署長等の裁量に委ねられている。したがって、当局に差押えを解除してもらうためには、税務署長等に対し、その差押えが無益であることを立証するための資料を添付して申し出ることになる。
監修者のコメント
 抵当権等の担保物権の被担保債権は、【回答】のとおり、税金の法定納期限以前に設定されているものであれば、租税債権に優先する。
 したがって、その優劣を知りたい場合は、法定納期限を調べる必要がある。

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