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賃貸事例 1406-R-0135
賃料滞納者からの入金とその弁済充当および遅延利息の金利問題

 賃貸マンションの借主が、滞納賃料3か月分のうちの2か月分を入金してきたので、管理会社である当社が、その入金してきた2か月分を賃料に充当し、残りの1か月分とそれまでの遅延利息の合計額を借主に請求したところ、「入金したお金は、まず遅延利息に充当すべきだ。」と言ってきた。このような借主の主張は、正しいか。
 なお、この借主は平成15年から入居しており、遅延利息については最初から年利18%と定めているが、この利率は消費者契約法上問題になるか。

事実関係

 当社は賃貸借の媒介業者兼管理業者であるが、このたび当社が管理をしている賃貸マンションの借主が、滞納している賃料3月分のうちの2か月分を入金してきた。そのため、当社はこれを滞納している賃料に充当し、残りの1か月分とそれまでの遅延利息の合計額を借主に請求したところ、借主は、「その請求はおかしい。支払ったお金は、まず遅延利息に充当し、残りのうちの1か月分は滞納している賃料に充当されるが、遅延利息に充当された後の1か月分未満の端数については、滞納賃料の内入金として、賃料元本から控除するのが正しいやり方だ。」と言ってきた。

質問

1.  この借主の主張は正しいか。
2.  この借主との賃貸借契約は平成15年から続いており、その遅延利息は年利18%と定めているが、この利率は消費者契約法上問題になるか。

回答

1.  結 論
 質問1.について ― 正しくない。借主の勘違いではないかと解される。
 質問2.について ― 問題になる。
   
2.  理 由
  ⑴について
     本件のような、債務者(借主)が同一の債権者(貸主)に対して同種の給付(賃料の支払)を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務(滞納賃料等)を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者(借主)は、給付のときに、その弁済を充当すべき債務を指定することができる(民法第488条第1項)。つまり、借主は今回支払う2か月分の賃料について、それをまず賃料の滞納分に充当するのか、それとも遅延利息に充当するのかを指定することができるということである。
 しかし、本件の場合は、借主がその2か月分の賃料を支払う時に、その充当すべき債務を指定しなかったので、貸主がこれをその受領の時に、滞納賃料に充当すべく債務の指定をしたと解することができる(同法同条第2項本文)。ところが、それに対し借主がその充当の指定に直ちに異議を述べたというのが本件の問題である(同法同条第2項ただし書き)。
 このような場合、民法の規定によれば、弁済者(借主)が直ちに異議を述べれば、弁済受領者(貸主)の充当はその効力を失うということであるが(同法同条第2項ただし書き)、その結果、弁済者(借主)が改めて充当指定をすることができるのか、それとも法定充当(民法第489条)によるべきかについては、争いがある。しかし、本件の場合は、「債務者(借主)のために弁済の利益が多いもの(すなわち、遅延利息を生む滞納賃料)を先に充当する」という法定充当によるのが、当事者の意思に合致すると解されるからである。
  ⑵について
     消費者契約法は、その附則に、同法の施行日と同法が適用される消費者契約について定めており、その附則に、「この法律は、平成13年4月1日から施行し、この法律の施行後に締結された消費者契約について適用する。」と定めている。したがって、本事例の賃貸借契約は平成15年に締結された契約であるから、消費者契約法の適用があるということにより、そのため同法第9条第2号に定められている遅延利息の上限金利である年14.6%の規定の適用があるということになる。

参照条文

 民法第488条(弁済の充当の指定)
 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
 弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
 前2項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする。
 民法第489条(法定充当)
   弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による弁済の充当の指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
   すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
   債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
   前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。
 民法第491条(元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当)
 債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
   (略)
 消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
    次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
   (略)
   当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(中略)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
 同法附則
  この法律は、平成13年4月1日から施行し、この法律の施行後に締結された消費者契約について適用する。

監修者のコメント

 本件の借主の主張は、回答のとおり、間違った前提での主張である。弁済の充当を規定している民法第491条は、債権者にとって利益となる充当の順位である。すなわち、費用、利息、元本の順に充当すると、元本は一番あとに充当されるが、元本は利息を生み出すものである。したがって、債務者にとっては、利息を生み出す元本が少しでも少なくなったほうが有り難い。先に利息に充当すれば、元本に充当する金額が少なくなり、却って債務者(本件では借主)にとって不利である。本件の借主は、自ら損になることを主張している。

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