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売買事例 1004-B-0116掲載日:2010年4月
市街化調整区域内農地と隣接農転物件(宅地)との一括売却の方法
市街化調整区域内の宅地と農地を同一人に売却するが、この宅地はその農地に隣接し、開発許可を得て農転したものである。このような物件の場合、どのように媒介したらよいか。売買契約は、宅地と農地を一緒にして行った方がよいか、それとも別々に行った方がよいか。
事実関係 | |
当社は媒介業者であるが、このたび市街化調整区域内の土地(約1,600m2)の売買を媒介することになった。 物件は、地続きの2筆で、1筆は地目が「宅地」で、もう1筆は「畑」である。その「宅地」の方の1筆はすでに開発許可に基づいて整地も完了しているので、地目も「畑」から「宅地」になっているのであるが、もう1筆の方は現況も「畑」のままである。ところが、今回の買主はこの2筆を一緒に買いたいという。なお、この2筆の土地の所有者(売主)は同一人である。 |
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質問 | |
このような場合、どのように媒介したらよいか。売買契約は2筆一緒に行うことになるのか、それとも別々に行うことになるのか。 | |
回答 | ||
1.結論 | ||
媒介業者が契約当事者と一緒に農業委員会事務局に出向き、農転の追加申請が受理される要件(たとえば、隣接農転物件の完全宅地化や追加申請分の開発許可の申請など)を確認したうえで媒介する必要があると考えられるが、いずれにしても、農地の売買は農転を停止条件(法定条件)とする売買になるので、売買契約の締結を2筆一緒に行うか、別々に行うかは、その停止条件の効力を2つの筆に連動させるだけで、あとは買主の資金繰りと当事者の意向次第で決まってくるであろう。 | ||
2.理由 | ||
このような同一所有者による農転の追加許可申請を行う場合、すでに開発許可を受けている土地の状況が、その開発条件を完全にクリアーしていないときは、追加申請についての許可が下りないことが多い。したがって、本件の場合は、まず最初に現在の宅地の方の整地状況が完全宅地化のための整地になっているのかどうか(たとえば、計画どおりの排水施設の工事がなされているのかどうかなど)を確認する必要がある。 そして、そのうえで買主がその宅地と農地との一体開発を考えているのかどうかを確認し、もし一体開発を考えているのであれば、当然それなりの規模の施設の整備が必要となってくるので、その点についての所管行政庁(都市計画課など)との事前協議も必要となり(都市計画法第32条)、そのうえでの開発許可の申請と並行(注)した農転の追加申請ということになろう。 (注)農地が市街化調整区域内にある場合には、開発許可と転用許可の同時申請・同時許可の原則が採用されている(昭和44年農林省農政局長と旧建設省計画局長との「開発許可等と農地転用許可との調整に関する覚書」)。したがって、一方が不許可の場合には、他方も不許可となる。 なお、本件取引の売買契約の仕方については、売買を2筆一緒に行うにしても、別々に行うにしても、農地の方は当然農地転用の許可が出ることを停止条件(法定条件)として売買することになるので、その停止条件が成就しなかったら、宅地の方の売買の効力も失効するというように、停止条件の効力を2つの筆に連動させるだけで、それ以外のことは、買主の資金繰りと当事者の意向いかんで条件を決めていけばよいことになろう。 |
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参照条文 | ||
○ 都市計画法第32条(公共施設の管理者の同意等) | ||
(1) | 開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない。 | |
(2) | 開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為又は開発行為に関する工事により設置される公共施設を管理することとなる者その他政令で定める者と協議しなければならない。 | |
(3) | 第2項に規定する公共施設の管理者又は公共施設を管理することとなる者は、公共施設の適切な管理を確保する観点から、前2項の協議を行うものとする。 | |
監修者のコメント | |
本ケースの買主が、畑のほうの農転の許可が下りなくても、宅地部分だけ買って事業を進める意向がある場合は別々の契約で行ったほうが、法律関係が簡明であるが、両方の土地でなければ買う意味のない場合には、一つの契約でも別々の契約でも、回答にあるとおり、宅地部分の効力発生も農転の許可という法定(停止)条件に係らしめることを明確に約定しておくことが必要である。 また、このようなケースでは、条件が成就しなかった場合、契約自体はすでに成立しているため、媒介報酬をめぐって紛争になることも多い。農転の許可が下りなかったときは、仲介手数料がどうなるのか、宅地部分も含めて、明確に取り決めておくことが大切である。 |