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売買事例 1002-B-0115
中間省略登記の代替手法を用いた瑕疵担保免責契約の成否

 中間省略登記に代わる方法として、「第三者のためにする契約」と「買主の地位の譲渡契約」を利用する方法が考えられているが、その第2の契約を、それぞれ「無名契約」としたり、「買主の地位の譲渡契約」とすることにより、売主の瑕疵担保責任を免れることができると本に書いてあるが、本当か。その場合の「法的根拠」(契約の内容)や「対価」について知りたい。

事実関係
 当社は不動産の買取り再販会社であるが、このたび再販する中古マンションは、築年数も経っており、管理体制もあまりよくない物件なので、できることなら瑕疵担保責任を負いたくない。
 ついては、下図のような中間省略登記に代わる方法としての「第三者のためにする契約」などの手法を用いて、一般消費者であるエンドユーザーに対し、瑕疵担保責任を負わない特約付で売却したい。
第三者のためにする契約
買主の地位の譲渡契約
質問
  1. 「第三者のためにする契約」方式を用い、第1の契約について、当社と当社の子会社(宅建業者)との間で瑕疵担保責任を負わない特約付の売買契約を締結し、第2の契約を、その子会社とエンドユーザーとの間「無名契約」にすれば、当社は瑕疵担保責任を負うことはないと考えてよいか。
2. 「買主の地位の譲渡契約」方式を用い、第1の契約を、前記1.と同じように、売主が瑕疵担保責任を負わない特約付の売買契約とし、第2の契約を、「買主の地位の譲渡契約」とした場合も、当社は瑕疵担保責任を負わないと考えてよいか。
3. 「第三者のためにする契約」方式を用い、
(1) 第2の契約を「無名契約」とした場合、その無名契約の当事者間では、金銭の授受はあるのか。
(2) あるとした場合、それはどういう内容の金銭なのか。
(3) そもそも、「無名契約」というのは、どういう契約なのか。
4. 「買主の地位の譲渡契約」方式を用いた場合、
(1) 譲渡契約の当事者間で、金銭の授受はあるのか。
(2) あるとした場合、それはどういう内容の金銭なのか。
(3) そもそも、「買主の地位の譲渡契約」というのは、どのような契約なのか。
回答
  (1)  質問1.について — 瑕疵担保責任を負わないと考えてよい。そもそも「無名契約」というのは民法上の典型契約である「売買契約」ではないので、宅建業法の適用は受けない(後記「国土交通省総合政策局不動産業課長通知」記書き2.参照)。したがって、宅建業法に基づいて瑕疵担保責任を負うということはないが、当事者間においても、その無名契約で瑕疵担保責任を負わないという特約をすれば、貴社も子会社もエンドユーザーに対し瑕疵担保責任を負うことはない(民法第559条)。しかし、貴社も子会社も、瑕疵の存在を知りながら、それをあえて告知しないで売却したというようなことになるとすると、それは脱法行為として、宅建業法違反(同法47条の告知義務違反)にも問われることになるし、瑕疵担保責任も負うことになる(民法第572条)。
  (2)  質問2.について — 瑕疵担保責任を負わないと考えてよい。ただし、この場合も、質問1.の場合と同様に、貴社ならびに子会社の行為が、瑕疵担保責任を免れるための脱法行為ではないということが前提である。
 なお、この「買主の地位の譲渡」という行為(契約)も、不動産の取引ではないので、当然宅建業法の適用はないのであるが(後記「国土交通省総合政策局不動産業課長通知」記書き2.参照)、ひと昔前の、いわゆる「買取り仲介」ということで、最初から地位の譲渡をする業者が、譲渡先であるエンドユーザーの物件取得を媒介するという形態のものであるとすれば、実質的には、地位の譲渡業者(今回のケースでは貴社の子会社)が、貴社とエンドユーザーの間の売買契約を媒介したことになるということで、業法上の問題が全くないとはいえない。その意味で、貴社とエンドユーザーとの間の売買代金(残代金)の授受にあたっては、少なくともエンドユーザーに対し、貴社に対して瑕疵担保責任を追及することができないというリスクがあるということと、重要事項の説明だけはしておく必要があろう。
  (3)  質問3−(1)(2)(3)について — 通常の取引においては、金銭の授受はあると考えるべきである。なぜならば、この場合の「無名契約」は、貴社の子会社(第1の売買の買主)が、貴社(第1の売買の売主)に対し、エンドユーザーを当該売買契約に基づく所有権の移転先に「指名」し、そのエンドユーザーが貴社に対し「受益の意思表示」をすることにより、貴社からエンドユーザーに直接所有権を移転させる合意だからである(民法第537条)。
 つまり、この場合の「無名契約」というのは、貴社の子会社がエンドユーザーに対し、「所有権を取得し得る地位」を与える契約であるから、当然そこには何らかの「対価」が生じるのが普通だからである。となるとすると、その「対価」は、通常第1の売買の売買代金プラスアルファの額ということになろう。
  (4)  質問4−(1)(2)(3)について — 「買主の地位の譲渡契約」方式を用いた場合においても、その第2の契約は、エンドユーザーとの間において買主の契約上の地位を譲渡する合意をするわけであるから、「第三者のためにする契約」における「無名契約」の場合と同様に、譲渡人としても何らかの「対価」がなければ、「買主の所有権を取得し得る契約上の地位」を譲受人に譲り渡すことはないと考えるのが普通である。
 そのように考えた場合、エンドユーザーは、買主の地位の譲り受けを合意することによって、第1の売買契約における買主たる地位を取得することになるので、その売買代金のうち、すでに売主に支払われている手付金の額を除いた残代金の支払を引き継ぐことになるのであるが、譲渡人としては、譲受人がそれだけを引き継ぐのであれば、何のメリットもないので、当然そこには何らかのプラスアルファ(つまり、「利益相当分」)がなければならないということになる。ということは、譲渡人にとっては、すでに第1の契約で手付金を支払っているので、少なくともその「手付金プラスアルファ」の額を「対価」としなければ、何のメリットもないということになるので、本件の場合も、その「手付金プラスアルファ」の額が地位の譲渡代金ということになろう。
 
参照条文
  ○ 民法第537条(第三者のためにする契約)
(1)  契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
(2)  前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
 
参照資料
  ○ 国土交通省による不動産業界あて通知
国総動第19号
平成19年7月10日
各業界団体の長 殿
国土交通省総合政策局不動産業課長
 
いわゆる「中間省略登記」に係る不動産取引の運用改善について
 
 標記に関し、平成19年5月30日に規制改革会議において決定された『規制改革推進のための第1次答申』を踏まえ、今般、別添1の通り『規制改革推進のための3か年計画』が平成19年6月22日に閣議決定されたところである。
 これを踏まえ、宅地建物取引業法の適用関係に関し、下記事項について、貴団体加盟の業者に対する周知及び指導を行われたい。
 
 甲(売主等)、乙(転売者等)、丙(買主等)の三者が宅地又は建物の売買等に関与する場合において、実体上、所有権が甲から丙に直接移転し、中間者乙を経由しないことになる類型の契約である「第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転」又は「買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転」については、乙が宅地建物取引業者で丙が一般消費者であるとき、契約形態の違いに応じ、宅地建物取引業法の適用関係について次の点に留意すること。
 
1.  甲乙間の契約を第三者のためにする契約とし、かつ、乙丙間の契約を他人物の売買契約とする場合において、乙が他人物の所有権の移転を実質的に支配していることが客観的に明らかである場合には宅地建物取引業法第33条の2の規定の適用が除外されることとなるよう、別添2の通り、宅地建物取引業法施行規則(昭和32年建設省令第12号)第15条の6の規定を改正したこと(平成19年7月10日公布・施行)。
2.  乙丙間において買主の地位の譲渡を行う場合、又は甲乙間の契約を第三者のためにする契約とし乙丙間の契約を無名契約とする場合は、乙丙間の契約は民法上の典型契約たる宅地建物の売買契約とは異なるため、乙が宅地建物取引業者であっても売買契約に関する宅地建物取引業法の規律を受けない。
 一方、この場合には、乙丙間の契約について乙に重要事項説明や瑕疵担保責任の特例等の宅地建物取引業法上の規制が及ばず、また、不適切な行為があった場合に宅地建物取引業法違反の監督処分を行えないため、丙は消費者保護上不安定な地位にあることから、そのような契約形式による場合には、宅地建物取引業者乙に宅地建物取引業法上の重要事項説明や瑕疵担保責任の特例等の規制が及ばないことや、瑕疵担保責任については個別の合意に基づく特約によることなど、丙が自らの法的地位を十分に理解した上で行うことが前提となる。
 このため、丙との間に契約当事者である乙は、そのような無名契約の前提について、丙に対して十分な説明を行った上で、両当事者の意思の合致のもとで契約を締結する必要があることに留意すること。
(別添1、2略)
 
監修者のコメント
 
本件の質問にあるような型態は、もちろん契約自由の原則の範囲内のもので、宅建業法その他の法規範に直接抵触するものではない。したがって、法理論上は問題がないとしても、「第三者のためにする契約」とか「買主の地位の譲渡」といった、中間省略登記の代替手段として認められた異例の複雑なスタイルを取る理由が、エンドユーザーである買主に誰も瑕疵担保責任を負わないようにするためということであれば、あまり推奨できる手法ではない。
 このような手法が取られるのはまれであるが、一般消費者である買主の無知に乗じて、すなわち買主が十分その法的結論を知らないまま契約をしてしまうというケースもある。回答欄の国交省不動産業課長通知が強調するとおり、「買主が自らの法的地位を十分に理解した上で」契約締結をすることが必要である。かつてと異なり、企業のコンプライアンスが叫ばれる時代である。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「瑕疵担保責任(瑕疵担保責任の期間と内容)」

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