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売買事例 0910-B-0108
開発許可の取得を代金の支払条件とする「他人物売買」の取得のための契約の有効性

 宅地建物取引業者が売主になる「他人物売買」の媒介をするが、その他人物である土地の取得のための売買契約書に、「開発許可取得後に、売買代金を支払う。」という文言が入っている。この文言が入っていると、その取得のための契約が、宅地建物取引業法で禁止されている「停止条件付き」の売買契約になり、結果的に「他人物売買」ができなくなるのではないか。

事実関係
 
当社は、このたびいわゆる「他人物売買」の媒介をするが、その売主である宅地建物取引業者は、取引の目的物である土地(地目:畑、現況:原野状態)について、すでに所有者との間で、取得のための売買契約を締結しているという。
 そこで、当社はその取得のための売買契約書を見せてもらったところ、「開発許可取得後に、売買代金を支払う。」という文言が書いてあったので、そういう条件の契約では、宅地建物取引業法で禁止されている「停止条件付き」の取得契約に当たるのではないかと話したところ、その「他人物売買」の売主は、これは「停止条件を定めた条項ではない」というので、それならば今回の「他人物売買」の媒介をしても問題ないと考えているのだが、何か心配である。
質問
  1.  この売買契約書に書かれている「開発許可取得後に、売買代金を支払う。」という文言は、本当に停止条件を定めたものではないのか。
2.  この「他人物売買」の取引自体に何か心配な面があるように思えるのだが、本当に心配ないと考えてよいか。
回答
  1.結論
(1)  質問1. について—契約自体の効力の発生を、当該開発許可の取得にかからしめていない限り、原則として、停止条件を定めたものではないと考えてよい。
(2)  質問2. について—必ずしも心配ないとはいえない。
 
  2.理由
(1)(2)について
 この土地の所有者と「他人物売買」の売主である宅地建物取引業者との間の売買契約書に定められている「開発許可取得後に、売買代金を支払う。」という文言は、他に特別な定めがない限り、この文言だけでは、単に「売買代金の支払条件と時期」を定めたものであって、売買契約そのものの効力の発生を開発許可の取得にかからしめているものではない。
 したがって、今回の「他人物売買」の売主の取得にかかる契約は、宅地建物取引業法で禁止されている「停止条件付き」の売買契約ではないといってよい。
 ただ、今回の取引の目的物である土地が、もし「農地」であるとすれば、その転用のための「許可」であるとか、「届出」といった農地法上の手続の完了が、取得のための売買契約が効力を生じるための「法定条件」(後記【参照判例】参照)となるので、その場合は、本件の土地が農業委員会の判断で「農地」と判定されるか否かによって、今回の「他人物売買」ができるか否かの分かれ道になると考えられる。
 
参照条文
  ○ 宅地建物取引業法第33条の2(自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限)
 宅地建物取引業者は、自己の所有に属しない宅地又は建物について、自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を締結してはならない。ただし、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
 宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得する契約(予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているときその他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令で定めるとき。
 当該宅地又は建物の売買が第41条第1項に規定する売買に該当する場合で当該売買に関して同項第1号又は第2号に掲げる措置が講じられているとき。
 
参照判例
  ○ 最判昭和37年5月29日民集16巻5号1226頁(要旨)
 知事または農業委員会の許可を得ないでなされた農地の売買契約は、右許可を法定条件として成立し、許可があれば、その時から将来に向かって効力を生ずる。
 
監修者のコメント
 
本ケースの「開発許可取得後に、売買代金を支払う」という文言のみをみれば、たしかに回答のとおり、売買代金の支払条件と時期を定めたものであり、停止条件付き契約ではない。しかし、その開発許可を受ける者が現所有者であれば、その者から買い受ける本件他人物売買の売主である宅建業者又はその宅建業者からの買主が開発許可に基づく地位を承継するためには、都道府県知事の承認が必要である(都市計画法第44条)。
 
 したがって、宅建業法第33条の2の規定をクリアーできても、その点に不安定要素もあることを視野に入れておく必要がある。

より詳しく学ぶための関連リンク

・“スコア”テキスト丸ごと公開! 「他人物売買」

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