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売買事例 0906-B-0102
瑕疵担保責任についての各種売主に対する規制と適用法令の優劣関係

 
宅地建物取引業者や一般の企業が売主になっている不動産を一般の個人に売却する場合、その規制の内容が、宅地建物取引業法のほか、住宅の品質確保の促進等に関する法律や消費者契約法などによって錯綜している。せめて、売主の瑕疵担保責任についての規制内容だけでも整理できないか。

事実関係
 
当社は媒介業者であるが、宅地建物取引業者や一般の企業が売主になっている不動産を一般の個人に売却する場合、宅地建物取引業法や住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)、消費者契約法などが関係してくるので、具体的な取引における規制の内容をどのように理解してよいかわからなくなることがある。
質問
  1.  これらの法律を、売主の瑕疵担保責任の例でわかりやすく整理すると、どのようになるか。
2.  宅地建物取引業者が売主で、宅地建物取引業者以外の者が買主になる不動産の売買契約における売主の瑕疵担保責任については、宅地建物取引業法第40条(瑕疵担保責任についての特約の制限)の規定の適用を受けるが、その規定を受けて、売主が負う瑕疵担保責任の期間を2年間と定める場合、品確法第95条(新築住宅の売主の瑕疵担保責任の特例=期間10年)の規定との関係では、どちらの規定が優先するのか。
3.  一般の企業が売主で、一般の個人が買主になる不動産の売買契約において、売主の瑕疵担保責任について、「土地については負うが、建物については負わない」という特約を設けたら、消費者契約法第8条第1項第5号(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)の規定との関係で、無効とされることはないか。
4.  一般の企業が売主で、一般の個人が買主になる不動産の売買契約において、契約違反による売買契約の解除に伴う違約金を定める場合、宅地建物取引業法第38条(損害賠償額の予定等の制限)の規定に準じて違約金の額を売買代金の20%相当額と定めたら、消費者契約法第9条第1号(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)の規定との関係で、無効とされることはないか。そもそも宅地建物取引業法と消費者契約法は、どちらの規定が優先適用されるのか。
回答
  (1)  質問1.について — これらの法律は、いずれも取引の当事者の力関係や取引の性質上弱い立場に立つ買主や借主を保護するための法律であり、売主の瑕疵担保責任の例で言えば、
1.  宅地建物取引業法は、宅地建物取引業者が売主になり、宅地建物取引業者以外の者(一般の企業・法人を含む。)が買主になる場合の売主(業者)に対する規制であり、
2.  品確法は、新築住宅(竣工後1年未満で、かつ、未入居のもの=法第2条第2項。以下、本事例において同じ。)の売主(宅地建物取引業者のほか、一般の企業・法人・個人を含む。)すべてを対象に規制する法律であり、
3.  消費者契約法は、買主が一般の消費者(個人)である場合の取引について、売主(一般の個人を除く事業者)を規制する法律
である。
 したがって、これを表にすると、次のようになる。
 
 

規制の対象者

瑕疵担保責任についての規制の内容

宅地建物
取引業法

売主が宅地建物取引業者で、買主が宅地建物取引業者以外の者である場合の売主(業者) 土地・建物すべての隠れた瑕疵について、引渡し後、最低2年間は担保の責任を負う(法第40条)。

品確法

新築住宅のすべての売主 新築住宅の構造耐力上主要な部分等(注)について、引渡し後、最低10年間は担保の責任を負う(法第95条、第97条)。
(注)住宅の構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分で政令で定めるもの(法第94条、同法政令第5条)

消費者
契約法

買主が一般の個人(消費者)である場合の一般の個人以外の売主(事業者) (1)土地・建物のすべての隠れた瑕疵について、その責任の全部を免除する条項を定めることの禁止(無効)(法第8条第1項第5号)
(2)消費者の利益を一方的に害する条項を定めることの禁止(無効)(法第10条)
 
(2)  質問2.について — どちらかの規定が優先するということではなく、少なくとも引渡し後、最初の2年間は2つの法律が重複して適用されるものと解される。
なぜならば、本件の2つの法律は、全く同一のことを定めているのではなく、取引する物件が新築物件の場合に、品確法の上ではその売買について10年間の瑕疵担保責任が課せられ、しかも、その責任の内容が建物の構造耐力上主要な部分等に限定されるが、宅地建物取引業法上の瑕疵担保責任は、その土地・建物のすべてについて、最低2年間の責任を負うことになっているからである。つまり、この2つの法律は、少なくとも物件の引渡し後最初の2年間は重複して適用されるが、その後の8年間は品確法が引き続き適用されるという関係になると解される。
(3)  質問3.について — 建物の部分については、無効とされると考えられる。
なぜならば、土地と建物は別個の不動産であるから、本件の契約は、土地の売買と建物の売買の2つの売買契約を締結したことになる。したがって、今回の売主(一般の企業=事業者)が建物の瑕疵については責任を負わないということは、建物の売買契約において、売主がその責任の全部を負わないということになるからである。
(4)  質問4.について — 無効とされることはないと考えられる。
なぜならば、本件のような消費者契約法が適用される契約の条項の効力については、宅地建物取引業法が消費者契約法に優先して適用されるからである(消費者契約法第11条第2項)。
 なお、これを具体例で説明すると、損害賠償額の予定(違約金)について消費者契約法第9条第1号では、「同種の契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」は、その超える部分を無効としているが、宅建業法第38条では、宅建業者が売主となる場合の損害賠償の予定(違約金)について、その合算額が「代金の20%」を超えてはならないとし、超えたときは20%を超える部分が無効となるとしている。これを言い換えれば、宅建業者が売主となる売買においては、20%までは有効ということになり、その限りにおいて、前記の消費者契約法第9条第1号の適用はないことになる(公益財団法人不動産流通推進センター発行・平成21年版「宅地建物取引主任者講習テキスト」387頁から)。
 
参照条文
 
宅地建物取引業法第40条(瑕疵担保責任についての特約の制限)
(1)  宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法第570条において準用する同法第566条第3項に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
(2) 前項の規定に反する特約は、無効とする。
 

同法第38条(損害賠償額の予定等の制限)
(1)  宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2をこえることとなる定めをしてはならない。
(2)  前項の規定に反する特約は、代金の額の10分の2をこえる部分について、無効とする。
 

住宅の品質確保の促進等に関する法律第2条(定義)
(1) (略)
(2) この法律において「新築住宅」とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了日から起算して2年を経過したものを除く。)をいう。
(3) (略)
 
○ 同法第95条(新築住宅の売主の瑕疵担保責任の特例)
(1) 新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、民法第570条において準用する同法第566条第1項並びに同法第634条1項及び第2項前段に規定する担保の責任を負う。(以下、略)
(2) 前項の規定に反する特約で買主に不利なものは、無効とする。
(3) (略)
 
○ 同法第97条(瑕疵担保責任の期間の伸長の特例)
 住宅新築請負契約又は新築住宅の売買契約においては、請負人が第94条第1項に規定する瑕疵その他の住宅の瑕疵について同項に規定する担保の責任を負うべき期間又は売主が第95条第1項に規定する瑕疵その他の住宅の隠れた瑕疵について同項に規定する担保の責任を負うべき期間は、注文者又は買主に引き渡した時から20年以内とすることができる。  
 
○ 同法施行令第5条(住宅の構造耐力上主要な部分等)
(1) 法第94条第1項の住宅のうち構造耐力上主要な部分として政令で定めるものは、住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、当該住宅の自重若しくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものとする。
(2) 法第94条第1項の住宅のうち雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
  1. 住宅の屋根若しくは外壁又はこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具
2. 雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根若しくは外壁の内部又は屋内にある部分
 
○ 消費者契約法第8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
(1)次に掲げる消費者契約法の条項は、無効とする。
  一〜四 (略)
五  消費者契約法が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項
(2) (略)
○ 同法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
(略)
 
○ 同法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
 民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
 
○ 同法第11条(他の法律の適用)
(1)  消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力については、この法律の規定によるほか、民法及び商法の規定による。
(2)  消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
 
監修者のコメント
 
3つの法律の適用関係は、回答のとおりであるが、宅建業法及び消費者契約法は、対象となる当事者の契約である限り、建物について中古物件も対象となることに注意をされたい。
 また、具体的な取引型態が複数の法律の適用対象となるものである場合は、ダブって(重複して)適用されることになるが、例えば責任期間が、「引渡しから2年」と「引渡しから10年」と2つの法律が定めているのであれば、事実上は責任の重い「10年」のほうが優先適用される結果となる。
 なお、消費者契約法は、「事業者」と「消費者」との間の契約に適用されるが、「事業者」の概念には、会社のような法人のほか「事業として、または事業のために契約の当事者となる個人」も含むので、たとえ買主が個人であっても、業務用の物件を個人が購入する場合は、消費者契約法の適用はないことも注意されたい。

より詳しく学ぶための関連リンク

ザ・ライブラリー 松田先生

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