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売買事例 0703-B-0004掲載日:2007年3月
契約の解除を伴わない違約金の請求
契約違反をした買主に対し、契約を解除しないまま違約金を請求することができるか。
事実関係 | |
当社は分譲マンションの売主で、ようやく残りの1戸の売買契約が成立したが、買主は残代金の支払期日が過ぎても何かと理由をつけて残代金を支払わない。 そこで当社は、買主がローンも利用せず、一方的に支払遅延をしているので、約定の違約金(売買代金の20%)を請求すると言ったところ、買主は違約金の請求をするのなら、まず契約を解除してから請求してくれと言ってきた。 当社は、内容証明郵便などでの督促はしていないが、担当者が再三にわたり残代金の支払を催告している。買主は、これ以上資金の手当てができなければ手付解除を考えているようであるが、当社としては、ようやく売れた最後の1戸なので、何とか契約を履行して欲しいし、それが駄目なら違約金を請求したいと考えている。 |
質問 | ||
1. | 当社は、売買契約を解除しないで、約定の違約金を請求することができるか。 | |
2. | マンションはすでに完成しているし、当社の担当者が再三督促しているので、そのことをもって「履行の着手」をしたことになると思うが(買主からの手付解除はできないと思うが)、どうか。 |
回答 | |
1.結論 | |
(1)質問1.について 契約書の違約金条項が、契約解除を前提としていなければ、貴社は、売買契約を解除しないで違約金を請求することができる(民法第420条第2項)。 |
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(2)質問2.について 残代金の支払を督促するということは、当然物件の引渡しと所有権移転登記等の申請手続の準備を整えたうえで行うことになるので、「履行の着手」があったと解することができる。しかし、念のためあらためて内容証明郵便等で物件の引渡しと所有権の移転登記を受けるよう督促し、履行の着手をした旨の証拠を残しておいた方がよい。 |
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2.理由 | |
(1)について 「違約金は、賠償額の予定と推定する」(民法第420条第3項)。つまり、本件売買契約における違約金の定めは、損害賠償額の予定と推定されるので、契約違反をされた相手方(本件の場合は、売主)は、特段の事情がない限り、実際の損害額のいかんにかかわらず、約定の違約金を請求することができる(同条第1項。大判大正11年7月26日民集1巻431頁)。この賠償額の予定は、履行の請求または解除権の行使を妨げないとされ(同条第2項)、この第2項の規定は、当事者が賠償額の予定をしても、それによって本来の給付の履行の請求ができなくなるわけでもなく、解除権を失うものでもないという、いわば自明のことを定めたものとされている(大判大正10年9月24日民録27輯1548頁。最判昭和54年9月6日判時944号49頁、判夕399号122頁)。そして、この違約金の請求は、違約という事実の発生によってできることになるので、契約解除をしないまま請求することができる。ただ、契約条項が、たとえば「売主・買主は、本契約を解除したときは、違約をした者に対して、当該違約金を請求することができる。」というように違約金の請求が解除を前提にしている場合は、契約条項どおり、解除しなければ約定の違約金は請求できない。 |
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(2)について (略) |
参照判例 | |
○ 大判大正10年9月24日(要旨) 売買契約に関する債務不履行の制裁として約定された違約金請求権は、債務不履行の事実によって生じ、この権利はその後の契約解除によって消滅しない。 |
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○ 最判昭和54年9月6日(要旨) 違約手付金の約定が契約関係を清算する趣旨でされた場合において、手付金の交付者に違約があったときは、手付金受領者はあらかじめ契約解除の手続を経ることなく手付流しとしてこれを確定的に自らに帰属させることができるとともに、手付金受領者が交付者に対しこのことを告知したときは、特段の事情がない限り、契約関係も当然に終了するものと解するのが相当である。 |
監修者のコメント | |
違約金または損害賠償の予定額を請求するためには、契約を解除しなければならないかどうかは、契約においての決め方による。違約金、損害賠償予定額は、特別の約定がない限り、一方当事者の債務不履行の事実によって、現実化し請求可能となる。 しかし、契約条項に「解除したときは、・・・・・・請求することができる」旨のものも多いので、その場合は、当然解除が前提条件である。 |