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売買事例 1404-B-0179掲載日:2014年4月
市街化調整区域内の条例による開発可能区域指定等開発許可に関する基礎知識
当社の営業エリアでは市街化調整区域内の土地を売買するケースがあるが、具体的にどのような規制があるのかがよくわからない。ついては、次の点を知りたい。
① 市街化調整区域内で建物を建てるには、すべての土地に開発許可が必要になるのか。農家分家や既存宅地の場合はどうか。その場合、面積規制などはあるのか。
② 市街化調整区域内においても、都道府県等の条例で、あらかじめ開発・建築が可能な区域を指定することができ、現に指定されたところもあると聞くが、本当か。
事実関係
当社は大都市周辺の中核都市で営業をしている宅建業者であるが、当社の営業エリアの中には市街化調整区域内の物件がかなりある。とはいっても、そのほとんどは農地であるから、農地転用の関係で取引はかなり難しいと聞くが、山林や雑種地の場合にはそれほど難しくないという。しかし、それが本当かどうかはよくわからない。
ついては、その市街化調整区域内の物件を取引する場合の基礎知識として、以下の点について知っておきたい。
質問
- 市街化調整区域内の土地を売買する場合、その土地が農地の場合は農地転用の許可と開発許可、山林や雑種地の場合には開発許可を取得しなければ、買主は建物を建てることができないというのは、本当か。
- もし本当だとした場合、農家の分家や既存宅地の確認を受けた土地を売買し建物を建てる場合においても、開発許可が必要になるということか。もしそうだとした場合、最低敷地規模など、開発許可を受けるための面積規制などはあるのか。
- 市街化調整区域内においても、都道府県等の条例で、あらかじめ開発・建築が可能な区域を指定することができ、すでに区域指定がなされたところもあると聞くが、本当か。
回答
⑴ | 質問1.について ― 原則として、本当である(農地法第5条、都市計画法第29条、第34条)。ただし、市街化調整区域内における農林漁業関係者の生産施設や住居を建てる場合および駅舎、図書館、公民館等の公益施設を建てる場合など一定の場合には、開発許可は必要ない(同法第29条第1項ただし書き第2号、第3号等)。ただ、同じ公益的施設でも、学校(幼稚園を含む。)や社会福祉施設、医療施設などについては、私立(民間)のものについては開発許可が必要になるので、注意が必要である(平成18年改正)。 なお、上記都市計画法第29条第1項ただし書き第2号との関係で、誤解しやすいのが、同法第34条第1号の「主として当該開発地域の周辺の地域において居住している者の利用に供する政令で定める公益上必要な建築物又はこれらの者の日常生活のため必要な物品の販売、加工若しくは修理その他の業務を営む店舗、事業場その他これらに類する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為」であるが、この開発行為は、あくまでも許可を要する開発行為であり、許可を要しない開発ではないので、注意が必要である。 |
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⑵ | 質問2.について ― 農家分家や既存宅地であっても、開発許可は必要である(都市計画法第34条第14号)。この都市計画法第34条第14号の開発許可は、開発審査会の議を経て許可されるものであるが、農家分家や既存宅地以外にも公共用地の代替地の開発など種々のものに適用されるため、他の許可に比べ圧倒的に利用度が高い。 なお、この開発審査会の審査に付するため、各市町村は「開発審査会提案基準」(神奈川県川崎市の場合)等の基準を定め、その中にケースごとの面積基準や建ぺい率、容積率、高さなどの制限を設けているので、取引の前に各市町村の担当窓口でそれらの規制の内容を確認しておくことが必要がある。 |
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⑶ | 質問3.について ― 本当である(たとえば、熊本市・埼玉県:都市計画法第34条第11号・第12号)。この区域指定は、その第11号の場合は、その地域が市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であって、おおむね50以上の建築物(市街化区域に存するものを含む。)が連続している地域のうちから、政令で定める基準に従い、都道府県等の条例で指定されるが、この区域指定がなされたからといって、開発許可の手続が免除されるとか、市街化区域と同じように一定の面積以上のものだけが開発許可の対象になるというようなものではないので、注意が必要である。 なお、この熊本市・埼玉県以外にも、すでに条例化(区域指定)がなされている都道府県がある可能性もあるので、念のため各都道府県の担当窓口に確認されたい。 |
参照条文
○ | 農地法第5条(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限) | ||
① | 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(中略)にするため、これらの土地について第3条第1項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の許可(中略)を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。 | ||
一 | 〜四(略) | ||
② | 、③ (略) | ||
○ | 都市計画法第29条(開発行為の許可) | ||
① | 都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(中略)(以下「指定都市等」という。)の区域内にあっては、当該指定都市等の長。以下この節において同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。 | ||
一 | (中略)、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの | ||
二 | 市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの | ||
三 | 駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所その他これらに類する公益上必要な建築物のうち開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図る上で支障がないものとして政令で定める建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為 | ||
四 | ~十一 (略) | ||
② | 、③ (略) | ||
○ | 同法第34条(開発許可の基準) | ||
前条の規定にかかわらず、市街化調整区域に係る開発行為(主として第2種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為を除く。)については、当該申請に係る開発行為及びその申請の手続が同条に定める要件に該当するほか、当該申請に係る開発行為が次の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は、開発許可をしてはならない。 | |||
一 | 主として当該開発区域の周辺の地域において居住している者の利用に供する政令で定める公益上必要な建築物又はこれらの者の日常生活のため必要な物品の販売、加工若しくは修理その他の業務を営む店舗、事業場その他これらに類する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為 | ||
二 | ~九 (略) | ||
十 | 地区計画又は集落地区計画の区域(地区整備計画又は集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、当該地区計画又は集落地区計画に定められた内容に適合する建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為 | ||
十 | 一 市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、政令で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの | ||
十 | 二 開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、政令で定める基準に従い、都道府県の条例で区域、目的又は予定建築物等の用途を限り定められたもの | ||
十 | 三 (略) | ||
十 | 四 前各号に掲げるもののほか、都道府県知事が開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認める開発行為 |
監修者のコメント
市街化調整区域における開発許可あるいは建築の許可の基準については、都道府県により異なるだけでなく、同一の都道府県内でも市町村によって異なることもあるので、一般的・抽象的な調査でなく、とにかく市町村の担当部署に出向いて調査することが肝要である。ほとんどの市町村では、それを分かりやすく説明したリーフレットなども作成している。