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売買事例 1402-B-0176掲載日:2014年2月
建築工事請負契約における工事中の契約解除と土地の原状回復義務
建築条件付土地売買の媒介で、土地の決済・引渡しを先行させ、そのうえで建物の建築工事請負契約を成立させた。ところが、基礎工事が完成したところで買主(発注者)に転勤辞令が出たために、買主は請負契約を解除したいと言ってきた。
このような場合、買主(発注者)は、工事中であっても請負契約を解除することができるのか。解除することができるとした場合、買主(発注者)は建築業者に違約金を支払うが、すでに完成している基礎工事部分の撤去は、誰が、誰の費用負担で行うことになるのか。
事実関係
当社は宅建業者であるが、先日ある建築業者が所有している土地について、建築条件付土地売買の媒介をし、先に土地部分の決済・引渡しを完了させた。そしてその後、建物部分の設計や費用打合せ等が行われ、ようやく建築工事の請負契約が締結された。
ところが、基礎工事が完成した時点で買主(発注者)に転勤辞令が出たため、買主はやむを得ず建築工事請負契約を解除したいと言ってきた。ただ、土地については、すでに所有権が買主に移っているため、当事者間で話し合った結果、契約の解除はしないことになった。
なお、本件の土地上に建築する建物は、請負金額1,500万円の2階建ての一般住宅である。
質問
- このような場合、すでに建築工事が始まっているのに、買主(発注者)は契約を解除することができるのか。できるとした場合、それはどのような権利に基づくものか。
- 買主(発注者)は、今回の契約解除にあたり、当事者間の話し合いで工事代金の20%相当額の違約金を支払うということまでは合意したが、この場合の契約解除に伴う基礎工事部分の撤去は、誰が、誰の費用負担で行う義務があるのか。
回答
⑴ | 質問1について ― 買主(発注者)は、建築業者がその工事を完成しない間はいつでもその損害を賠償して契約を解除することができる(民法第641条)。すなわち、買主(発注者)は、いわゆる「法定解除権」に基づいて契約の解除ができるということである。 | |||
⑵ | 質問2.について ― 買主(発注者)が売主(建築業者)に違約金を支払い建築工事請負契約を解除した場合には、その竣工部分(本件基礎工事部分)の所有権は発注者に帰属すると解されるので、それを撤去するもしないも発注者(買主=土地の所有者)の自由である。なぜならば、請負人においても、発注者が竣工部分に相当する請負代金を支払った場合には契約解除と同時に竣工部分を発注者に引渡す義務があると解されており(東京高判昭和30年3月8日東高民時報6巻3号41頁)、本件の違約金の支払いが、その竣工部分(本件基礎工事部分)の請負代金の支払いに相当すると解されるからである。ただ、本件の基礎工事部分の撤去に関する後日の紛争を避けるためには、念のため解除に当たり、その所有権の帰属に関する確認合意等の処置をしておくことが必要であろう。 |
参照条文
○ | 民法第641条(注文者による契約の解除) | |
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。 |
監修者のコメント
建築条件付土地売買契約は、建物の建築請負契約の成立を停止条件とし、又はその契約の不成立ないし消滅を解除条件とする土地の売買契約であるから、特約がない限り、建物請負契約が解除により消滅したときは土地の売買契約も消滅すると解すべきである。しかし、本ケースでは、合意により土地はそのまま買主が取得するというのであり、それはもちろん契約自由の原則により認められる。質問に対する答えは回答のとおりであるが、それらの問題は、本来解除に当たり、解除契約の内容として取り決めておくべき事柄と思われる。
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