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賃貸事例 1402-R-0131掲載日:2014年2月
2年更新の賃貸借契約における1年間だけの更新の申し出と更新料の取扱い
2年更新の建物賃貸借契約において、更新特約として、「期間満了3か月前までに当事者から何らの申し出がないときは、本契約は更に2年間同一条件をもって自動的に更新される。」という条項が定められている場合、借主が期間満了「2か月前に」1年間だけの更新を申し出たとしても、契約は自動的に2年間更新されたことになるか。その更新特約における当事者からの申し出期間が、「期間満了1か月前までに」となっていた場合には、賃貸借契約は、1年間だけ更新されることになるか。このような場合の更新料の取扱いは、賃貸管理業者としてどのように考えたらよいか。
事実関係
当社は賃貸借の媒介業者兼管理業者であるが、先日、契約の更新時期が「2か月後」に迫っている借主から、2年更新の現在の契約を1年間だけ更新して欲しいという申し出がなされた。その具体的な内容は、借主が仕事の関係で、1年後に海外に赴任するため、1年間だけの更新にし、更新料も約定の更新料(賃料の1か月分相当額)の半分にして欲しいというものである。
なお、本件の賃貸借契約書には、更新特約として、「期間満了3か月前までに当事者から何らの申し出がないときは、本契約は更に2年間同一条件をもって自動的に更新される。」という条項が定められており、更に解約申入れ条項として、借主からの解約申入れは、「その解約する日の1か月前までに、貸主に対し、書面で申し入れなければならない。」と定められている。
質問
- 貸主は、この借主からの「2か月前」の1年間だけの更新の申し出に対し、「申し出が3か月前までになされなかったので、契約は、すでに2年間自動的に更新されている」という主張ができるか。
- 本件の自動更新特約における当事者からの申し出期間が、「期間満了1か月前までに」となっていた場合には、借主からの申し出が約定の期間内になされたことになるので、更新後の契約期間は、借主の申し出により自動的に1年間になるのか。それとも、貸主の同意がなければ、1年間にはならないのか。
- このような場合の更新料の取扱いは、賃貸管理業者としてどのように考えたらよいか。
回答
1. 結 論 | ||||
⑴ | 質問1.について ―主張としてはできるが、1年間だけの更新を考えている借主に対しては、意味のない主張である。 | |||
⑵ | 質問2.について ― 貸主の同意がなければ、1年間にはならない。 | |||
⑶ | 質問3.について ― 今回の更新時に、借主から貸主に対し、「1年後に賃貸借契約を解約する」旨の申し入れを書面ですることを条件に、貸主に対し、更新料を半額にしてもらうよう意見具申するという考え方が適当であろう。 |
2. 理 由 | ||||
⑴について 借主からの申し出が遅れたことにより、2年更新の契約が自動更新されたとしても、本件の借主は、更新後1年で契約を終了させたいわけであるから、借主が、期間満了後11か月を経過するまでに、貸主に対し、書面で「1か月前の解約予告」をすれば、いつでも更新後の賃貸借契約を終了させることができるからである。 |
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⑵について 契約の更新は、「法定更新(注)」される場合以外は、当事者の合意で更新するのが原則であるから(合意更新)、本件のようなケースにおいては、貸主が同意しない限り、契約期間を1年にすることはできない。 (注) 契約が「法定更新」された場合には、契約期間は「定めがない」ものとなる(借地借家法第26条第1項ただし書き)。 |
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⑶について 上記理由⑴のとおり、本件の契約が仮に2年間更新されたとしても、借主は、書面による「1か月前の解約予告」をもって、いつでも契約を終了させることができるので、そのことが事前にわかっている以上、賃貸管理業者としては、今回の更新時に、借主から貸主に対し、書面で「1年後に解約する」旨の申し入れすることを条件に、更新料を半額にしてもらうよう貸主に意見具申することもひとつの方法であろう。 |
参照条文
○ | 借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等) | |
① | 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新しない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。 | |
② | 、③ (略) |
監修者のコメント
質問3について、賃貸管理業者としての実務的取扱いは、回答の方法が最も適切であるが、借主が更新料を半額にせよ、という主張を当然にできるかは問題である。更新料の性格が仮に「賃料の前払い」のみであれば、法的にもその主張ができると解されるが、更新料支払特約と消費者契約法10条との関係について判断した最高裁判決(平成23年7月15日)が言うように「更新料は、一般に賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有する」のであれば、契約が更新される以上、全額の支払義務がある、と解することができる。