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売買事例 1310-B-0174掲載日:2013年12月
宅建業廃業後の旧宅建業者の2年間の瑕疵担保責任の有無
当社は、昨年宅建業を廃業したが、その前に販売した物件の瑕疵の問題で、現在責任追及されている。ついては、当社は宅建業者ではないのに、当時特約した2年間の瑕疵担保責任を今でも負うことになるのか。このような場合、瑕疵担保責任の問題は、会社の清算事務として、その瑕疵担保責任の期間が満了するまで続くことになるのか。
事実関係
当社は宅建業の免許を受けてから30年を機に廃業したが、昨年販売した中古のリフォーム物件の瑕疵の問題で、現在責任追及を受けている。販売当時は当社も宅建業者だったので、物件の隠れた瑕疵については、引渡しから2年間瑕疵担保責任を負うと特約したが、瑕疵が発見された時点においては、すでに業務を廃止し、会社を引き払っている。
質問
- このような場合、当社は宅建業者でないのに、2年間の瑕疵担保責任を負うことになるのか。
- このような場合の会社の清算業務の責任は、瑕疵担保責任の期間が満了するまで続くと考えるべきか。
回答
1. | 結 論 | |||
⑴ | 質問1.について ― 2年間の瑕疵担保責任を負うことになる。 | |||
⑵ | 質問2.について ― 瑕疵担保責任の問題についてはそのとおりであるが、それ以外の問題については、その清算が結了するまでは続くと考えるべきである(会社法第475条、第476条、第481条、後記【参照判例】参照)。 |
2. | 理 由 | |
⑴について 宅建業法第40条第1項の規定に反する特約で買主に不利な特約は、無効となる(同条第2項)。つまり、この宅建業法第40条の規定は、宅建業者が売主で宅建業者以外の者が買主となる売買契約において、そのような無効な特約をした場合は、その特約自体がなかったものとして、民法第570条および第566条の規定が適用されるという規定である。 すなわち、当事者が有効な特約をした場合には、民法の例外としてその特約を優先させるが、無効な特約をした場合には、民法の規定そのものが適用されるという規定なのである。したがって、本件の業者のように、もともと有効な特約をしていた場合には、売主である業者が廃業しようがしまいが、その有効な(2年の)特約に基づいて2年間の瑕疵担保責任を負うことになるのである。しかし、そのように言えるのも、廃業した業者が、まだ会社の清算を結了していないということが前提となる(会社法第476条)。 |
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⑵について 宅建業者の免許は、宅建業者が免許権者に廃業届を提出することにより失効し、以後宅建業者ではなくなるが(宅地建物取引業法第11条第2項)、その業者が会社である場合には、その会社が存続している以上、売却した物件についての瑕疵担保責任は、その責任期間が満了するまで免れることはできない。そして、その会社が解散した場合には、通常その取締役が清算人となって清算事務を処理し、清算が結了した段階で株主総会を招集し、そこで決算報告をし、その承認を得て清算結了の登記をし、一件落着となる(会社法第475条、第478条、第481条、第507条、商業登記法第75条)。 なお、宅建業者については、上記の一般的な規定とは別に、廃業前に取り扱った取引が廃業までに結了していない場合には、その取引が結了するまで、その目的の範囲内において、なお宅建業者とみなされるので(宅地建物取引業法第76条)、注意が必要である。 |
参照条文
○ | 宅地建物取引業法第40条(瑕疵担保責任についての特約の制限) | |
① | 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法第570条において準用する同法第566条第3項に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。 | |
② | 前項の規定に反する特約は、無効とする。 | |
○ | 宅地建物取引業法第76条(免許の取消し等に伴う取引の結了) | |
第3条第2項の有効期間が満了したとき、第11条第2項の規定により免許が効力を失ったとき、又は宅地建物取引業者が第11条第1項第1号若しくは第2号に該当したとき、若しくは第25条第7項、第66条若しくは第67条第1項の規定により免許を取り消されたときは、当該宅地建物取引業者であった者又はその一般承継人は、当該宅地建物取引業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお宅地建物取引業者とみなす。 | ||
○ | 会社法第475条(清算の開始原因) | |
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。 一 解散した場合(以下、略) 二、三 (略) |
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○ | 会社法第476条(清算株式会社の能力) | |
前条の規定により清算をする株式会社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。 | ||
○ | 会社法第478条(清算人の就任) | |
① |
次に掲げる者は、清算株式会社の清算人となる。 | |
一 取締役(以下、略) | ||
二、三 (略) | ||
②~⑥ (略) | ||
○ | 会社法第481条(清算人の職務) | |
清算算人は、次に掲げる職務を行う。 | 一 | 現務の結了 | 二 | 債権の取立て及び債務の弁済 | 三 | 残金財産の分配 |
○ | 会社法第570条(清算事務の終了等) | |
① | 清算株式会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、決算報告を作成しなければならない。 | |
② | (略) | |
③ | 清算人は、決算報告(中略)を株主総会に提出し、又は提供し、その承認を受けなければならない。 | |
④ | (略) | |
○ | 商業登記法第75条(清算結了の登記) | |
清算結了の登記申請書には、会社法第507条第3項の規定による決算報告の承認があったことを証する書面を添付しなければならない。 |
参照判例
○ | 大判大正5年3月17日民録22巻364頁 | |
清算が結了した旨の登記がある場合でも、実際清算が結了していないときは、登記は実体上その効力を生ずることなく、会社は消滅しない。 |
監修者のコメント
契約によって生じた権利義務は、その権利義務の主体が存続する限り、権利を有し、義務を負う。それがなくなるのは、法人の場合、破産や解散によって権利義務の主体が消滅した場合である。本ケースの瑕疵担保責任は、売主が宅建業者だから負ったのではなく、宅建業者ゆえに宅建業法による特約の制限を受けつつ、売主として負ったのである。したがって、売主である法人が宅建業者でなくなったとしても、法人格が存続する限り負うことは当然である。