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賃貸事例 1312-R-0128
既設エアコンの無償使用後の取りはずし費用の負担者いかん

 貸主が、室内に設置したエアコンを、そのまま借主に対する「無償貸与品」として使用させてきた場合、借主がその1年後にエアコンを新品に交換した際の既設エアコンの取りはずし費用は、誰が負担すべきか。このような既設エアコンをめぐるトラブルを防止するためには、どのような方法があるか。

事実関係

 当社は賃貸借の媒介業者兼管理業者であるが、当社が1年前に媒介した一戸建住宅の賃貸借契約を成立させるに際し、貸主から、「前賃借人が残置した居間のエアコンはまだ使えると思うので、そのままにしておいた。借主が使いたいと言うのであれば、無償で使わしても構わない。」という申し出があったので、当社は、その重要事項説明書の設備欄に「エアコン1基あり:無償貸与品」と記載し、貸主の申し出内容をそのまま借主に伝え、取引を成立させた。
 ところが入居後1年経って、借主が、「自分の費用で新しいエアコンに取り替えるので、既設のエアコンの取りはずし費用を貸主に負担してもらいたい」と言ってきた。そこで当社がその旨を貸主に伝えたところ、貸主が、「あのエアコンは無償貸与品である。借主は他人のものを1年間無償で使ってきたのだから、取りはずし費用位は借主が負担するのが当然である。」と主張したため、借主は、「あのエアコンはすでに耐用年数を過ぎており、あまり効かないし、すでに取り替えの時期が来ているにもかかわらず、取りはずし費用を倹約するために、無償貸与品にしたに過ぎない。したがって、自分(借主)が取り替え費用を負担しているのであるから、取りはずし費用位は貸主が負担するのが当然である。」と応酬した。

質問

  •  このエアコンの取りはずし費用は、誰が負担すべきか。
  •  今後このようなトラブルが生じないようにするためには、どのような方法があるか。

回答

1. 結 論
 質問1.について ― 本件のような【事実関係】のもとにおいては、貸主が負担するのが妥当であろう。
 質問2.について ― 残置エアコンが古い場合には、取りはずしさせたうえで賃貸するのが一番問題ないが、貸主がそのまま使わせたいというのであれば、借主に無償譲渡したうえで賃貸すれば、原則として問題は生じない。
 しかし、どうしてもエアコンを残置させたまま賃貸するというのであれば、エアコンが故障した場合の費用負担や、新しいエアコンに取り替える場合の既設エアコンの取りはずし費用や処分費用を含めた費用負担等の問題について、あらかじめ当事者間で協議し、その内容を賃貸借契約書に定めたうえで契約すべきである。
2. 理 由
⑴について
 本件のトラブルは、【事実関係】を見る限り、エアコンがかなり古いものであるにもかかわらず、貸主が前賃借人の残置物を、あたかも自己の所有物であるが如く借主に無償貸与したことが原因と思われる。したがって、今回の新品への交換の問題がなければ、いずれ故障等があった場合にも修理費用等の問題で同じようなトラブルが生じたものと考えられる。そのように考えてくると、貸主にとっては、修理の場合はともかく、取りはずしの場合にはいずれは生じるであろう取りはずし費用の負担時期が今回の交換時にずれ込んだと考えることができるので、その件について当事者間で特段の定めがない以上、貸主がその費用を負担する(自分の貸与品を自分で取りはずす)というのが妥当ということになろう。
 なお、貸主が主張している「借主がエアコンを無償で使用しているのだから、取りはずし費用位は借主が負担するのは当然だ」という言い分は、家賃を受領している貸主の主張としては、やや感情論的で、借主にとっては当然には納得し難い結論であろう。
⑵について
 (略)

監修者のコメント

 質問の費用の負担者は、あくまでもその物の所有者であり、前賃借人の残置したエアコンは無主物ではなく、貸主の所有に帰したと解されるので、取りはずし費用は、貸主が負担すべきものと解される。ただ、本件では本来、借主が自己の都合で「エアコンの取り替え」を行うというのであるから、特別の合意がなければ借主が負担するとの考え方もあり得る。
 ただ、「エアコンは無償貸与品で、1年間無償で使ってきたのだから…」という貸主の主張は正当ではない。なぜなら、その使用は賃借建物の使用に付随するものであって、賃料の内容に含まれているものと解すべきだからである。

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