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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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賃貸事例 1312-R-0126
賃貸マンションの管理会社が立替えた共益費の消滅時効

 賃貸マンションの共益費としての電気代と水道代を管理会社が立替え、2年以上が経過した。そのため、管理会社がその立替えた電気代と水道代をまとめて入居者に請求したところ、入居者から、管理会社の立替金は1年の短期消滅時効にかかっているのではないかという主張がなされた。この立替金は本当に1年の短期消滅時効にかかっているのか。2年の短期消滅時効にかかっているということはないか。そもそも共益費の消滅時効というのは、一体何年か。

事実関係

 当社(宅建業者)が所有する賃貸マンションは、共用部分の電気代と水道代については、メーターが別になっているので、管理会社が一旦まとめて料金を支払い、それを入居者に均等割りで請求し回収するという方式になっている。
 ところが、管理会社がそれを自社で立替えたまま、2年以上も放置していたため、その未回収分をまとめて入居者に請求したところ、入居者から、すでに1年の短期消滅時効にかかっているのではないかという主張がなされ、管理会社からどうしたらよいかという相談があった。
 なお、このマンションは戸数が多いので、管理会社は、週に3回、共用部分の清掃と電気、水道等のメーターの検針およびそれらの設備の点検などに半常駐方式で管理員を派遣している。

質問

  •  本件の管理会社の立替金債権は、民法第174条第4号に定められている「立替金に係る債権」として、1年の短期消滅時効にかかるのか。
  •  1年の短期消滅時効にはかからないとしても、民法第173条第2号の「自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権」として、2年の短期消滅時効にかかるというようなことはないか。
  •  上記1.2.のいずれの消滅時効にもかからないとした場合、このような「共益費」の立替金債権は、何年の消滅時効にかかるのか。

回答

 質問1.について ― 本件の管理会社の入居者に対する債権が、仮に立替金債権だとしても、その立替金債権は、民法第174条第4号に定められている立替金債権ではないので、同条(1年の短期消滅時効)の適用はない。なぜならば、同条に定められている立替金債権は、その第4号に列記されている料金や代価についての立替金であって、本件のようなマンションの共益費の立替金債権ではないからである。
 質問2.について ― 民法第173条第2号の債権は、たとえば自宅の一部を作業場にして仕事を請負うというような昔ながらの家内工業的な小規模な仕事に対する報酬としての債権のことをいうので、本件のようなマンション管理という業務の中で生じる債権には、同条(2年の短期消滅時効)の適用はない。
 質問3.について ― 本件の賃貸マンションにおける「共益費」に関する債権は、商事債権として、5年の消滅時効にかかる(商法第522条)。なぜならば、本件の管理会社の立替金債権というのは、管理会社が、たとえばその料金の直接の支払義務者として、直接電気会社や水道局との間で供給契約を締結し、その管理会社が支払った料金を入居者が分担して管理会社に支払うという契約を入居者との間で締結していない限り、管理会社の入居者に対する債権ではなく、管理会社のマンションオーナーに対する立替金債権であり、そのオーナーに対する立替金債権を回収するために、管理会社が、オーナー(貸主)と入居者(借主)との間の賃貸借契約に基づいて入居者(借主)が負担することになっている電気代と水道代を、オーナーに代って、その委託(管理委託契約)に基づいて入居者(借主)に請求しているものだからである。
 したがって、そのオーナー(貸主)の入居者(借主)に対する「共益費」の支払請求権は、毎月の賃料と同じ定期給付債権(民法第169条=時効期間5年)と解することもできるが、いずれにしても本件の債権は、オーナー(貸主)と入居者(借主)との賃貸借契約に基づく商事債権でもあるから、その消滅時効の適用に関しては、民法の特別法である商法第522条の5年が適用されることになる。

参照条文

民法第167条(債権等の消滅時効)
 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
 (略)
民法第169条(定期給付債権の短期消滅時効)
 年又はこれにより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。
民法第173条(2年の短期消滅時効)
 次に掲げる債権は、2年間行使しないときは、消滅する。
一 (略)
 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
 (略)
民法第174条(1年の短期消滅時効)
 次に掲げる債権は、1年間行使しないときは、消滅する。
  一~三 (略)
   旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
   (略)
商法第522条(商事債権の消滅時効)
 商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。

監修者のコメント

 消滅時効の期間の問題については、回答のとおりで付け加えるべきことはない。
 しかし、このようなケースで法律的には全額の請求権があったとしても、仮に支払わない者を相手に裁判で請求した場合、プロの業者が長期間放置していたことを考慮して、減額した額での和解を裁判所に勧められてしまうことが多いことを敢えて付言して置きたい。

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