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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

売買事例 1308-B-0169
現状有姿売買に伴う「隠れた瑕疵」に対する責任追及の可否

 当社(宅建業者)は、消費者との間で築20年の中古マンションを購入する売買契約を締結したが、物件の引渡し前に、台所下の水回り部分に木部の腐蝕を発見した。
 この契約には、「本契約は、現状有姿売買につき、売主は瑕疵担保責任を負わない。」という特約が定められているが、①瑕疵の発見が物件の引渡し前なので、当社は売主に対し、瑕疵担保責任を追及できると思うが、どうか。②本件の免責特約は、「現状有姿売買」に伴う免責特約なので、「隠れた瑕疵」には特約の適用がなく、当社は売主に対し、瑕疵担保責任の追及ができると思うが、どうか。

事実関係

 当社(宅建業者)は、一般の消費者との間で、築20年の中古のマンションを購入する売買契約を締結した。その際、売主は、「建物が古いので、あとで責任を負いたくない。」ということで、「現状有姿売買」を主張した。そのため、当社もそれに同意し、次のような特約を定めた。
(特約事項)
 「本契約は、現状有姿売買につき、売主は瑕疵担保責任を負わないものとする。」
ところが、その後の物件の引渡し前の設備点検で、台所下の配管のジョイント部分からの水漏れによる木部の腐蝕が発見された。

質問

  •  このような場合、当社(買主)は、物件の引渡し前の瑕疵の発見なので、売主に対し、瑕疵担保責任の追及ができると思うが、どうか。
  •  聞くところによると、「現状有姿売買」による瑕疵担保責任の免責条項は、「隠れた瑕疵」については適用がないということであるが、もしそうであれば、本件の「隠れた瑕疵」(水漏れによる木部の腐蝕)については、本件の免責特約が適用されない、すなわち当社(買主)は、売主に対し瑕疵担保責任の追及ができるということになるが、どうか。

回答

1.   結 論
 質問1.について ― 本件の売買においては、貴社(買主)は、原則として瑕疵担保責任の追及はできない。
 質問2.について ― 本件の売買においては、買主が宅建業者であるだけに、その瑕疵が果して「隠れた」瑕疵に当たるのかどうかという問題はあるが、仮に「隠れた」瑕疵だとしても、売主は、本件の「隠れた」瑕疵については担保責任を負わない、すなわち貴社(買主)は、売主に対し瑕疵担保責任の追及はできない。
2.   理 由
について
 瑕疵担保責任に関する免責特約は、その瑕疵の発見が物件の引渡し前であっても、その効力を有する。なぜならば、本件の売買契約の効力は契約締結と同時に生じ、そのための買主からの損害賠償等の請求は、物件の引渡し後においても行うことができ(民法第566条第3項)、物件の引渡し後に瑕疵が発見された場合と差異はないからである。
 ただ、本件のような築年数がかなり経っている物件については、売主が瑕疵の存在を知っているにもかかわらず、そのことを買主(貴社)に告知しないということも考えられ、そのような場合には、買主(貴社)は売主に対し、瑕疵担保責任の追及ができる(民法第572条)。
について
 本件の瑕疵担保免責特約は、「現状有姿売買ということによって、売主は当然に瑕疵担保責任を負わない」という趣旨の特約ではなく、単に、「売主は瑕疵担保責任を負わない」という趣旨の特約である。なぜならば、「現状有姿売買」というのは、「現状で、何ら手を入れずに外から見える姿のままで売る」ということであるから、売主は、「表に現われている」瑕疵については責任を負わないが、「隠れている」瑕疵については責任を負うという売買だからである。
 なお、売買における瑕疵担保責任の問題は、あくまでも「隠れた瑕疵」が対象なのであって(民法第570条)、目に見える瑕疵はその対象ではないので、本件の水回りの問題が、買主である宅建業者が事前に当然調査すべき範囲内のものであるとしたら、本件の瑕疵の問題は、そもそも民法第570条の瑕疵担保責任の問題とはならない。つまり、買主である貴社に「過失」があるので、売主に対する責任追及ができないということもあり得るということである(後記【参照判例】参照)。

参照条文

民法第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
、② (略)
 第2項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。
民法第570条(売主の瑕疵担保責任)
 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
民法第572条(担保責任を負わない旨の特約)
 売主は、第560条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

参照判例

大判大正13年6月23日民集3巻339頁(要旨:抜すい)
 隠れた瑕疵とは、契約当時買主が過失なしにその存在を知らなかった瑕疵をいう。
大判昭和5年4月16日民集9巻376頁(要旨:抜すい)
 隠れた瑕疵とは、表見しない瑕疵のことで、一般普通人の観察を標準として定めるべきものであるが、表見しない瑕疵であっても、買主がこれを知り、もしくはある程度の注意を用いたならば知り得たであろう場合には、売主は担保責任を負わない。

監修者のコメント

 瑕疵担保の免責特約は、原則として有効であり、回答にあるとおり売主が知りながら告げなかったものについてだけ免責されない(民法第572条)。
 本件の特約は、「現状有姿売買につき、売主は瑕疵担保責任を負わない」となっているが、この文言で意味のあるのは、後半部分の「売主は瑕疵担保責任を負わない」という部分であって、前半の「現状有姿売買」というのは、瑕疵担保責任を負わない」という意味ではない点に注意されたい。「現状有姿」というのは、売主は目的物件に手を加えず、そのまま引き渡す、という意味であって、瑕疵担保責任を負わないという意味まで含まない(その意味で、本件の特約の「…につき」という表現は、必ずしも正確とはいえない)。
 なお、瑕疵の発見時期いかんにかかわらず、契約条項の効力は別段の特約がない限り、「契約締結」と同時に生ずるので、物件の引渡し前の瑕疵の発見でも、特約の効力が及ぶのは当然である。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「瑕疵担保責任(瑕疵担保責任の期間と内容)」

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