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売買事例 1308-B-0168掲載日:2013年8月
宅建業者が不動産売買の「代理」をする場合の代理委任状と代理契約書の記載例
当社は宅建業者であるが、不動産売買の「代理」をする場合の標準代理契約書のひな型が国土交通省から発表されていないので、これを「代理委任状」で行いたいが、宅建業法上問題ないか。もし問題ないとした場合、どのような委任状を作成すればよいか。その場合、その委任状をベースに「代理契約書」を作成することはできるか。もしできるとした場合、どのようにすればできるか。
事実関係
当社は、不動産取引の媒介業者であるが、年に何回か、「代理」で業務を行って欲しいという依頼を受けることがある。
そのような場合に、「賃貸借契約」の場合には、当社がその都度貸主から「代理委任状(注)」を発行してもらい、それをもとに貸主の代理人として賃貸借契約を締結するのであるが、「売買契約」の場合には、そもそもの宅建業法上の義務である売主との代理契約書(同法第34条の2、3=書面交付義務)のひな型が国土交通省によって定められていないので、売主から「代理委任状」を発行してもらい、それをもとに売主の代理人として売買契約を締結しても問題ないのか、それとも媒介契約書のような代理契約書を作成し、代理契約を締結したうえで代理業務を行わなければならないのかが、よくわからない。
(注) | 「代理委任状」とは、通常、委任事項のほかに、委任者が受任者に法律行為の代理をさせるための代理権、すなわち賃貸借契約のケースであれば、代理人が、借主との間で賃貸借契約を締結し、賃料・敷金等を受領し、物件を引渡す(鍵を交付する)という代理権を、委任者から受任者に授与するという文言が記載されている委任状のことをいう。 |
質問
- 宅建業者が、不動産の売買を「代理人」として行う場合、その代理の依頼を受けるときの書面として、「委任状」を発行してもらえれば、宅建業法上問題ないか。
- もし問題ないとした場合、どのような「委任状」を作成すればよいか。その委任状をベースに「代理契約書」を作成することはできるか。もしできるとした場合、どのようにすればできるか。
回答
参照条文
○ | 宅地建物取引業法第34条の2(媒介契約) | ||
① | 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。 一~七(略) |
||
② | ~⑨ (略) | ||
○ | 同法第34条の3(代理契約) | ||
前条の規定は、宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約について準用する。 |
監修者のコメント
媒介契約も代理契約も口頭による意思の合致で成立する「諾成契約」であって、理論上は契約書面の作成を要しない。しかし、宅建業者が成約させた売買、賃貸借契約に基づいて媒介・代理の報酬(手数料)を請求した場合に、依頼者が媒介や代理の契約の成立自体を否定するケースがある。このような紛争において書面の作成・交付がなされていない場合は、宅建業者が極めて不利な立場に立たされる。媒介契約の成否が争われた裁判例の中に「媒介契約が成立したときは、宅建業法の規定により、業者は法定の書面を遅滞なく依頼者に交付しなければならないが、本件ではその書面の交付もなされていないから、いまだ媒介契約の成立を認めることはできない」などとしたものがあり(理論的には正しくないが)、やはり書面の交付は自己防衛のためにも必要なことである。このことは、「代理」の場合はなおさらである。
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