当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。
専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)
相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)
<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。
ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。
ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。
売買事例 1306-B-0166掲載日:2013年6月
位置指定道路の取付けを条件とする売買契約の仕方
土地の売買の媒介において、買主から位置指定道路の取付けを契約の条件にしたいとの要望が出されたが、その条件は停止条件にすべきか、それとも解除条件にすべきか。条件付の契約にしないで、買主の要望に応える方法はあるか。本件の契約に際し、注意すべき点は何か。
事実関係
当社は、ある宅建業者が所有する300㎡の土地を他の宅建業者に売却する媒介をするが、買主から、その土地に位置指定道路を取り付けることを契約の条件にしたいと言われた。
質問
- このような場合の条件は、停止条件にした方がよいか、それとも解除条件にした方がよいか。
- このような買主の要望がある場合、条件付の契約にしないで、買主の要望に応えられる方法はあるか。
- 本件のような取引を行う場合、どのような点に注意したらよいか。
回答
1. | 結 論 | |
⑴ | 質問1.について ― 解除条件付の契約にした方がよい。 | |
⑵ | 質問2.について ― 買主の要望が、単に位置指定道路の取り付けにあるのであれば、何も条件付の契約にしなくても、売主に道路の取り付けを義務付けるだけで、同じ効果を生じさせることができるし、その方が買主にとっても有利に事を運ぶことができる。 | |
⑶ | 質問3.について ― いずれの契約方法をとるにしても、どのような仕様の道路を、どのような経路で、いつまでに取り付けるのかを、行政当局を交えて事前に協議しておくことが必要である。そして、そのうえでその用地の買収費用や工事費用等に見合う額の手付金なり違約金等の額を定めるということであろうが、もしその用地の買収費用や工事費用が高額になり、中間金を支払うというような場合には、最悪の事態に備え、その300㎡の土地に所有権移転請求権保全の仮登記を付けるというような対応も必要となろう。 | |
2. | 理 由 | |
⑴ | について | |
本件の契約は、【事実関係】を見た限りにおいては、買主にとっては売主が位置指定道路を取り付けさえすればよいのであるから、本来であれば、何もそれを「条件」にする必要はないのであるが、強いて条件付の契約にするということであれば、停止条件付の契約にするよりは、解除条件付の契約にした方が、契約の効力が契約の締結と同時に生じるだけに、契約内容がシンプルになる。 | ||
⑵ | ⑶について | |
上記結論⑵のとおり、本件の契約は、位置指定道路の取付けを売主の義務として定めればよいので、強いて解除条件付の契約にする必要もないといえる。なぜならば、解除条件付の契約の場合には、通常の取り決め条項としては、いわゆる解除条件が成就した場合には「白紙解除」されるということになるので、売主へのプレッシャーは小さいが、道路の取付けを売主の義務として行うという形をとった場合には、売主がその義務の履行を怠れば、売主の債務不履行として売主に違約金などの支払義務が生じるよう定めるので(民法第415条、第420条)、売主により大きなプレッシャーをかけることができるからである。 |
参照条文
○ | 民法第415条(債務不履行による損害賠償) | |
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。 | ||
○ | 民法第420条(賠償額の予定) | |
① | 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増額することができない。 | |
② | 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。 | |
③ | 違約金は、賠償額の予定と推定する。 |
監修者のコメント
本件のケースでは、代金の支払い時期について注意が必要と思われる。条件つき契約でも、条件としないで売主の義務としたときでも、代金の支払が先行したのち、位置指定道路の取付けが実現しなかった場合、解除条件の成就あるいは債務不履行に基づく解除権の行使により、売買契約はなかったことになるが、支払済みの代金の返還ができなくなることがある。位置指定道路の実現を待たず、売主が代金を早く貰いたいという場合は、すでに債務の弁済などに使われ、もはや売主の手元にはないことが多いからである。
当事者間のいろいろな事情もあるかも知れないが、買主にとって最善の方法は、手付金の支払いだけにして、代金は目的達成と同時履行にすることである。